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第14話 美人の魔女と戦闘機乗り

バロシュード郊外 旧街道


一方イワンはグラーチェの整備をしていた。機体は新品同様だが大部分が未調整されていないことに気付き、一から整備と確認をしなければならなかった。軍のパイロット育成訓練の中で機体整備の方法を学んでいたお陰で整備は難なく進んでいく。


「油圧系は問題なし、電気回路は異常は無しだな…。」


イワンは器用にレンチを使い、一つ一つチェックしていく。気付けば両腕はオイルまみれになっていた。コックピットからエンジンまで終わると一息ついた。


「ふぅ、大体終わったな。」


イワンは工具箱に道具を置くと、前を向いた。先には滑走路代わりの街道がある。今では使用はされない旧街道は誰も通る事はないようで静かだった。でもイワンは別の問題に悩んでいた。それは街道の確認をしているときのことだ。改めて確認をして見ると何ヵ所か石畳の石が飛び出していたり、穴が空いているのを発見したのだ。いくら頑丈で壊れにくいと言われているロシアの戦闘機でもこんなに荒れた道で加速したらクラッシュして爆発してしまうだろう。


「参ったな…全体を直してこいつを飛ばせるようにしたいが…。時間も掛かっちまうから駄目だな。」


だが今回の任務には航空機の支援が必要不可欠なのだ。今から別の滑走路を見つける時間もない。


「いっそのことこの旧街道を爆弾で吹き飛ばしてさら地にしちまうかな?」


イワンはポケットから煙草を出しながらぼやいた。


「どうしましたか?」


すると裏から声がした。イワンは裏を振り向くとそこには一人のローブを着た女性が立っていた。


「ん?いや、こっちの問題だ。」


「そうですか?何かお悩みのようだったように見えたので…。」


イワンはふと女性を見た。黒いとんがり帽子を被りいかにも魔女の格好だ。


「あんた、魔法使いかい?」


「ええ、この町に用がありまして。貴方はこちらで何を?」


「実はな…この道をさら地にしたいんだよな。」


イワンはグラーチェに寄りかかりながら言った。


「この旧街道をですか?」


「そうだ、でも一人じゃ時間掛かるし、何か良い名案がないか考えてるところさ。」


「確かに一人では不可能ですね。」


女性は旧街道を見た。すると何かを考え始めた。


「あの…宜しければ私が手伝いますよ。」


「へ?」


「この旧街道のどのくらいをさら地に変えますか?」


(なんだ?この女からかっているのか?)


イワンは少し怪しく思ったがどうせ考えもないため、女性に付き合う事にした。


「3ズードまでさら地にしてくれると有り難いんだか?」


女性はそれを聞くと左手に自身の半分の長さの杖を前に向けた。目を閉じ、何かの呪文を唱え始めた。呪文は複雑な言葉の様でイワンにはさっぱり理解することが出来なかった。その時女性が突然目を開き言った。


「大地の精霊達よ、我の頼みを聞きたまえ…。そして創造せよ、フィスィ・ズィミウルギアルト!!」


女性が声を上げた途端に旧街道の石畳がみるみる地面に沈んでいくではないか。それと塀も同じ様に沈み始めた。イワンはその光景に唖然としてしまいくわえていた煙草を落としてしまった。ものの数分もしないうちに旧街道はさら地になってしまった。


「これで大丈夫です。」


女性は満足そうな笑顔で答えた。


「え?まさか3ズード全部さら地に…?」


「ええ、もちろんですよ。」


イワンは苦笑いをするしかなかった。ともかくこれで滑走路としては問題はなくなった。あとは整地をすれば完璧になる。


「いやぁ~助かった。なんとお礼を言えば良いか。」


女性は微笑みながら言った。


「困った時はお互い様です。それでは私はこれで。」


そう言うと女性お辞儀をし、裏を向くとバロシュードに再び歩いていった。


「魔法使いは本当に美人がいるもんだな。」


イワンは女性に惚れ惚れしたようだった。そこにウォーリーが数人の若者を連れて戻って来た。


「イワン殿遅くなりました。約束の…な、なんだこりゃー!?」


ウォーリーが大声を出して驚いた。それもそのはず、さっきまであった街道が何もないさら地になっているではないか。これじゃ誰でも驚く。


「イワン殿?これは一体何があったのですが?」


「これか…ついさっき親切な魔法使いが手伝ってくれたのさ。」


イワンは煙草に火を着けながら言った。



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