第12話 対地支援戦闘機”Su-25”
バロシュード郊外・旧街道
一方その頃イワンは一人別行動をとっていた。なぜ一人で行動しているかと言うと実は理由があった。それは1時間前にさかのぼる。バロシュードの商館でのことだ。
「航空支援を出来るようにだと?」
「出来ないかな?」
一つのテーブルに優、スティーブ、ウォーリー、アレックス、イワンの5人が椅子に座っていた。盗賊退治の事前作戦会議をやることになり色々な話し合いをしている。様々な提案が出される中で戦闘機による航空支援を可能に出来ないかと言う案が出された。
「同志、戦闘機は召喚出来るが滑走路はどうする気だ?」
「イワン、戦闘機は大体どれくらいの距離があれば飛ばせるだろうか。」
「最低でも2㎞は必要だぞ…機体にもよるがな。」
イワンはパイロットスーツのポケットからスキットルを取り出し、蓋を開けると中に入っているウォッカを飲んだ。
「2㎞…そんな広い土地あるか?この町に…」
スティーブが言った。
「垂直着陸機はどうかしら?あれなら滑走路は不要だし」
アレックスが提案した。確かに垂直着陸機なら場所も多くとる必要も少ない。でも今回は地上戦が主体の作戦、垂直着陸機の火力だけでやるのは少し厳しいかもしれない。何よりここは異世界だ。敵がどんな相手なのか分からないければ意味がない。
「俺の案、いってもいいか?」
イワンが少し赤い顔で言った。
「何かいい案が閃いたかい?」
優がそれに答えるとイワンがスキットルをもう一口飲み、蓋を閉めながら言った。
「俺の国の戦闘機、Su-25を使うのはどうだ?」
「フロッグフットをか?」
Su-25"グラーチェ"近接支援戦闘機、別名フロッグフットと呼ばれているこの機体はロシア軍が正式採用している攻撃機の一つだ。アメリカのA-10攻撃機と同じ構想で設計された機体で多種多様な兵装を搭載することが出来る。最近では中東のとある国で白燐弾を投下したのもこのグラーチェでありニュースでもしばしば出てきたほど。
「なるほど、こいつはA-10と同じ戦闘力を持っているな…でもイワン、滑走路がなければ意味がない。」
「あの…宜しいですかな?」
すると今まで黙っていたウォーリーが喋りだした。
「ウォーリーさん、何ですか?」
「その乗り物を飛ばす場所なら候補が一つ有りますがそちらは使えないでしょうか。」
「 場所はどちらに。」
「この町の近くに使われてない街道があるんですけどかなりの距離もあります。見に行きますか?」
…と言うことで確認のためイワンとウォーリーは町の外れにある旧街道にやって来たのだ。イワンは旧街道を見渡した。広大な草原にある平らな石畳が真っ直ぐ続いている道。
「ウォーリーって言ったな、この道はどれくらいある?」
ウォーリーは肩に下げたバックから一枚の古びた地図を取り出し、イワンの前で広げた。
「大体バロシュードからだと…およそなんですけど3ズート(4.5㎞)でしょうか。」
「4.5㎞か、距離は充分だな。後は幅だ。」
イワンは道の脇の塀を見た。Su-25の横幅は14.36mはある。もし幅が狭いと塀に主翼がぶつかり大惨事になる恐れがある。幸い荷馬車が2台通れるように建築されているため幅も問題はないようだった。
「幅も問題はなし、戦闘機の駐機場所は荷馬車の荷物積み替え場所が使えるな。」
「しかし、イワン殿。その戦闘機やらとは一体どうやって出すのですか?」
ウォーリーが言うとイワンはパイロットスーツのポケットからマルチツールを取り出した。
「これで出すことが出来る。」
イワンはマルチツールの兵器召喚のアイコンを押すと戦闘機のカテゴリーを選択した。そしてSu-25を選択するとさっきの積み替え場所にマルチツールを向けた。その時積み替え場所の地面が激しく光だした。あまりの眩しさにウォーリーは手で光を遮る。暫くするとそこにはSu-25グラーチェが現れた。
イワンはグラーチェに近くと機体の確認をし始めた。機体新品同様であり森林迷彩カラーに塗装され、横に延びた主翼の下にはロケット砲、ガンポッドと無誘導爆弾が搭載されていた。
(機体は対戦車攻撃能力が高いT型か。兵装は後から増やせばいいだろ。)
イワンは続いてコクピットの風防を開けて操縦席を見た。操縦席に乗り込むと念のために計器類の動作確認もしておく。計器は問題なく動き、エンジンも始動可能な状態だと分かった。
「問題はなしだな。後は整備と調整だけすれば飛ばせるな。」
イワンは操縦席から飛び降りるとウォーリーのもとに歩いていく。
「大丈夫ですか?イワン殿。」
「ああ大丈夫、大丈夫。同志、後もう一つお願いがある。」
「何でしょうか?」
「この町に手先の器用な奴はいるか?」
「手先の器用な方ですか?え~と…いるにはいますがどうする気ですか?」
「こいつの整備を手伝ってくれる奴が欲しいんだ。」
イワンがグラーチェを指差しながら言った。
「…分かりました。何とか探してみますよ。」
「頼む。」
そう言うとウォーリーは町の方へ歩いて行った。一人残ったイワンは。
「さてと、セッティングするか!」
パイロットスーツの両腕をまくり、グラーチェの整備を先に始めることにした。




