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第10話 ヘタレ狼の決心

一方その頃…。


「なぁ~腹が減ったんだけど飯はまだかよ~。」


地下倉庫の仮の独房に閉じ込められたフェルクは一人ぼやいていた。かれこれ5時間近くいるだろうか。しかもしばらく食事してないせいか腹がなっている。獣人であるフェルクにとっては拷問と同じ苦痛に等しいものだ。


「くそ…ここ数日は飯をまともに食ってないのに、最悪じゃねえかよ。」


すると独房の扉の向こうから足音が聞こえてきた。フェルクは耳を立て、扉を見た。扉のノブがゆっくり傾き、扉が開き始めた。あの斑模様の服を着た男が入って来た。だがもう片方の手には白い包みを持っている。


(まさか拷問器具!?)


フェルクは青ざめた。それもそのはず重要な情報を聞き出すためには相手を手っ取り早く痛めつけるほうが遥かに効率がいいはずだ。舌を抜かれるか、牙を抜かれるかフェルクは頭の中で最悪な状況を想像した。


「大丈夫か?なんか気分が悪そうに見えるんだが…。」


え?何でこれから拷問する相手の気分を心配するんだ。フェルクは頭の中が混乱してしまった。男は少し苦笑いすると言った。


「何が可笑しいんだ?これから拷問する時によく笑えるよな!?」


「大丈夫だよ、そんなことはしないさ。腹が減ってると思って食事を持って来たんだ。」


優は白い包みを開けると緑色の筒のような物を取り出した。それを近くにあった木箱の上に乗せていく。フェルクは首を傾げた。この男は何しようとしてるんだと。でもこの男からは殺気は感じなかった。


「まさかこっちの世界でこれが食べれるとはな。」


(食べ物?この筒が?)


「おっと、それじゃ食べにくいかな?待ってろ。」


優はポケットから折り畳み式ナイフを取り出し、フェルクの裏に回った。椅子に結束バンドで固定された手足のバンドを次々と切っていく。フェルクは驚いた。


「どういうつもりだよ!罪人の拘束を解くなんて…。」


「罪人?俺はそう思わないよ。」


「え?」


「お前はただ言われたことをやってただけなんだろ。それに生きるためにやるしかなかったじゃ仕方ないよな。犯罪は駄目だがな。」


優はそう言うと折り畳み式ナイフで筒の蓋を開け始めた。筒に添ってナイフできれいに蓋を開けると中から茶色くなった肉のような物がぎっしり詰まっていた。するとフェルクに優はフォークを手渡す。


「先にそれを食べてくれ。他のも開けるから。」


「え?これを?」


優はそうだと言う。だがフェルクは見たこともない肉の煮物に少し躊躇った。


(ネズミの煮物と芋虫を食えたんだ!食える。)


フェルクはフォークを肉の煮物に突っ込み、肉を持ち上げた。肉から食欲をそそる匂いがする。フェルクは我慢できず肉を口の中入れた。


次の瞬間身体に電流が走った。美味い、滅茶苦茶美味すぎる。フェルクは生まれてはじめてこんなに美味な物は食べたことがなかった。尻尾も激しく振りまくってしまった。周りから見れば餌に喜ぶ犬に見えてしまうだろう。優はそれを見ると言った。


「美味いか?」


「何だよ?これ美味すぎるじゃないか!」


「それは牛肉の大和煮だな。こっちも食うか?」


優がもう一つの缶詰めをフェルクに渡した。フェルクが缶詰めの中を覗くとスープが入っていた。しかもこっちもいい匂いがする。フェルクはスープを飲んだ。


「うめぇ~いつもの塩のスープより最高だ。」


フェルクはスープをガブガブと飲み込む。すべてを食べ終えるとフェルクは満足そうな表情になっていた。


「どうだ?美味いだろこれ。」


「ああ、美味すぎて気絶しそうだった。」


「この食事をいつでも食えるとしたら居場所を教えてくれるか?」


「…どう言う事だよ?」


「交換条件だよ。」


(しまった…罠かよ!)


フェルクは空腹に負けて優の作戦に引っ掛かった。食べ物を使い、情報を引き出そうとしていたのだ。フェルクは不味いと思った。だが一つの思いがよぎる。確かにこの男に情報を提供すればさっきの食事を三食欠かさず食べる事が出来る。そうすれば楽になれるかもしれない。でもそれは仲間を裏切る代償付きでだ。ブラックシーフ盗賊団は裏切りは絶対に許さない、元に仲間の一人が盗賊団の情報を衛兵に売る事がバレた事があった。


そいつは生きたまま皮を剥がされ、全員の目の前で火炙りにされて殺されてしまった。フェルクはその光景を自分に重ねてしまい、酷く震えてた。


「駄目だ…そんな事をしたら…俺は…俺は殺されちまうよ。」


「なんなら俺達の仲間になるかだ。」


「え?」


「仲間になれば、お前は俺達が全力で守るよ。」


フェルクは余りにも呆れた言葉に椅子を倒して立ち上がり、優の戦闘服の胸ぐらを掴んだ。


「ふざけんじゃねぇ!!本気かよ!?数百人もいる盗賊団を相手に喧嘩を仕掛けるつもりかよ!」


「だったらお前はずっと悪事に加担していくつもりか?」


「それは…。」


優の鋭い指摘にフェルクは手の力を緩めて優の胸ぐらから離し、そのまま木箱の上に座った。項垂れるフェルクの前に優が立ち、言う。


「どうだ?落ち着いたか?」


「俺を自由にしてくれるのか?」


フェルクは優の顔を見ながら言った。優はフェルクの目を見て言った。


「ああ、自由にするよ必ずな!」


フェルクは少し考えた。そして。


「わかった、教えるよ居場所を…。」









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