クレーンゲーム!【悠人視点】
「そういや、私たちって修也の小さい時のこと全然知らないんですけど、どんな感じだったんですか?」
冷が悠人の横を歩きながら、悠人にたずねる。
今は学校が終わり、修也と千香は先生から居残りをくらっているので、オレと冷で下校中だ。
「修也ね〜、オレが初めて会った時からあの調子だったよ」
オレは子供の頃の修也を思い出して、もしかして成長してないんじゃないか?と呆れたような顔をした。
「修也のことだし、成長してないんでしょうね」
あ、冷、口に出して言っちゃうんだ。
「でも、やっぱり何故か気になります」
冷が腕を組んで考えながらそう言う。
そして、悠人と修也の昔の話してください!と目で訴えてきた。
「気にならなくていいです!」
オレは冷の近づいてきた顔を手で押し返し、そう言った。
修也の昔の話っていったら思い出したくない思い出のほうが多いからあまり話したくないんだよなー…。
すると、遠くに優里香らしきシルエットがオレの視界に入ってきた。
「あ、悠人と冷!」
そういってオレたちに気づいた優里香が遠くからオレたち方へ走ってきた。
「んー、なんかそこまで久しぶりじゃないのに、久しぶりな気がするんだけど」
「ユリちゃん出番少なかったからねー」
「うっさいな!次、同じようなこと言ったら悠人のゲーム壊すから!」
優里香がものすごーく殺気のこもった目でオレを見ながらそう言ってきた。
…やっぱユリちゃんこえー、じゃなくて、やめてよ!?壊すなよ!?
なんか、修也が居ないと矛先がオレに向けられる気がするんだけど!
…ま、別にいいか!
オレは何となく大きく背伸びをして、優里香の方へ振り返った。
「そういや、弘毅は?一緒の学校だったろ?」
そして、ふと思ったことを優里香に聞いてみる。
「え?お兄ちゃんから聞いてないの?弘毅は熱だして昨日から学校休みだって」
すると、優里香が逆に疑問そうにオレに言ってきた。
「聞いてないよ、っていうか修也がいちいち言うわけないだろ?」
すると、それもそうか、と優里香が首を頷かせる。
すると優里香が何か思い出したようにバッと飛び上がった。
「ど、どうした?」
「いや、録画したドラマ観るつもりだったの忘れてた!急がないとみる時間なくなる!」
「お、おう…」
すると優里香は猛ダッシュで修也の家の方へ走っていった。
オレは、オレと優里香が話している間暇そうにしていた冷に1人じゃ寂しいので少し近づく。
「なあ冷、今日暇?暇ならどこか寄り道していこうよ」
「悠人、その言い方だとナンパしてるように見えますよ」
予想してなかった冷の反応に、オレは一瞬固まる。
オレはただ、暇なら久しぶりに少し遊びたいなーって思っただけなのに…。
「あ、なんかゴメンナサイ。まあ、別に用事はないですし寄り道しても大丈夫ですよ」
「本当!?じゃあどこ行こっか!よーし、何でもやってやるぜ〜」
オレはさっきまで凹んでたのがウソのように顔を上げ、今にも走り出しそうなくらい足を上下に動かす。
「いや、なんで急にハイテンションになるんですか…それに何でもやってやるって、何か危険なアトラクションでもするつもりなんですか?」
「ん?あ、ごめんごめん。よくわからないけど、変にやる気がでてきて」
オレは上下に動かしていた足を止めて、笑いながら頭の後頭部を掻いた。
…行けたら、またアーロンさんたちのところに遊びに行きたいんだけどな…ま、多分それはできないか!
「悠人ー、悠人が寄り道したいって言ったんじゃないですか!早くこないともう行きませんよ!?」
「あーごめんごめん!」
オレはオレより数歩先にいる冷のところに向かって走っていった。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
「でさ、冷どこか行きたいところある?」
「え?ありませんよ」
冷のその発言でその場にシーンとした空気がながれる。
…まあ、確かにオレが寄り道したいって言ったんだし、こう返されても仕方ないけど…。
なんか酷くない!?
「冗談ですけどね〜♪ いちいち落ち込みすぎですよ悠人」
すると、冷が笑いながらそう言ってきた。
「…じょっ、冗談かよ!まあ、別にいいけど」
オレは冷にそう返し、なんとなく自分の金色の髪をクルクルと指で掻き回した。
「で、どこ行く?」
「えー…と、じゃあ、ゲームセンターとか?」
オレは、絶対今思いついたよね!?と、一瞬思ったが、別に気にすることではないのでそこはスルーした。
「じゃあ行こっかゲームセンター、…フッフッフ、ついにオレのクレーンさばきを見せる時がきたな!」
「大丈夫です。悠人がクレーンゲーム得意なのは前からしってますから」
冷の一言で、また上がりそうだったテンションがすぐにガクッと下がった。
「…もしかして、クレーンゲームで自分が欲しいのをオレに全部取ってもらおうとか思ってないだろうな?」
「え?当たり前じゃないですか。ってことでサッサと行きましょう!取ってもらう時間がなくなりますし!」
冷はそう言うと、スキップをしながらオレの前を進んでいった。
さすがに、オレの金じゃ…ないよね。
冷の嬉しそうな顔を見て、一瞬そう思ったが、すぐにその考えをかき消してオレは冷の後をついていった。
そして歩いて数分後、ゲームセンターに到着したオレたちは、そのままゲームセンターの中へ歩いて入っていった。
「よーし、じゃあ悠人にはここのいろんな物を取ってもらいますからねー」
何故か、冷が気合を入れて、近くのクレーンゲームをジックリと見回す。
今はクレーンゲームよりも車のゲームとかそういう系のゲームがしたかったんだけどなー…。そんな考えが一瞬頭をよぎったが、別に後ですれば問題ないか!とすぐに結論を出したオレは、冷の指さしているクレーンゲームのところまで移動した。
「悠人!これ欲しいです。これ取ってくれませんか?」
冷が指さしているのはハバネロ…のぬいぐるみ!?
よく分からない物体に戸惑いながらも、オレは冷に渡された100円玉を中に入れ、クレーンゲームを開始した。
「よーし、絶対一発で取ってやるからなー」
「いや、一発で取ってくださいよ?
取れなかったら、そのぬいぐるみの本物を口に詰め込みますからね♪」
冷からの言葉にゾクッとしながらもオレはクレーンを動かし始めた。
今思えば、オレはまだ冷からハバネロを口に入れられたことがない気がする。
まあ、入れられようと、入れられまいと、どっちでもいい気がするけど。
「ここダァ!」
その声と共にボタンから手を離し、クレーンの行き先を見守る。
そのまま、ぬいぐるみの首をガッシリと掴み上に持ち上がった。
「よしっ!」
しかし、クレーンが持ち上がって一番上に来た時、振動でぬいぐるみが落ちそうになる。
冷が「あぁっ!」と顔を近づけるがオレが「大丈夫、大丈夫」と腕を組みながら言うと、「本当ですか?」と言いながら少し後ろに下がった。
そして、そのままぬいぐるみは無事にゴールし、オレたちの足元の四角い穴からゆっくりと出てきた。
「わー、ハバネロちゃん!まさか本当に取れるとは思いませんでした!」
そう言って、冷がハバネロのぬいぐるみに抱きつく。
その笑顔から見てとても嬉しそうだ。
「じゃあ、冷の欲しいのも取れたことだし、修也たちの分も適当に取って帰ろっか」
「そうですね。
本当は悠人の口にハバネロを突っ込みたかったんですけど…まあ、今日はこのぬいぐるみを取ってもらいましたし、今度また挑戦してみますね」
「いや、入れなくていいから!被害者は修也だけで充分だから!」
こうして、オレたちは修也たちの分も適当にGETした後、修也たちに取ったお菓子などを届けにいった。
何故か修也だけはハバネロばかりで、「なんでオレだけハバネロなんだよぉ!!」と叫んでいたが。
そして、そのハバネロを冷に詰め込まされていたのは…見なかったことにしよう…。




