やっぱハンドガンだよな!
「ん?んん〜…」
どこだ?ここ?、って…んなわけねーか。
背伸びをしてオレが目覚めた場所は、以前トラックにひかれた場所のすぐ近くだったようで、目が覚めてすぐのオレもここがどこかすぐにわかった。
不思議なことにオレの周りには誰1人近くにいなくて、オレがこんな路上で目覚めるという変な光景は運良く誰にも見られてなさそーだ。
「まあ、誰かいたらどんなふうにオレがここに来たのかとか聞いてみたかったってのもあったんだけどなー」
そんなどうでもいい独り言をつぶやきながらオレはその場にノソノソとゆっくり立ち上がり、周りを見渡した。
すると、遠くから一台の車が走ってきて、その車がオレの前を通り過ぎた瞬間から、次から次へと他のいろんな車も道路を通過し始めた。
そして、その数秒後には歩行者もオレの近くを歩き、そのまま歩き去っていった。
「オレが目を覚まして時は誰もいなかったのに…今はこんなに人が沢山いるんだけど」
んー、なんか奇妙だ。
オレは頭をボリボリと掻きながら自分の家、ではなく近くの小さなお店の並んでいるところを目指して少々早歩きで歩いていった。
「って、あれぁ?」
オレは手についた自分の髪の毛を見て変な奇声をあげる。
いや、だってよ、オレの髪が元にもどってんだぜ!?
ん?もとの世界にもどったから髪ももとに戻るに決まってる…のかぁ?
まあ、オレのちっぽけな脳みそでそんなことを考えたところで解決など微塵にもしそうになかったのでオレはそのことはもう考えないことにした。
そして、数分歩いてやっとついた近所の小さな商店街についたオレは、まず最初に陽気なおじさんが経営している駄菓子屋に入ることにした。勿論お金は持ってねーけど。
「ん?おっおま…生きてたのか修也ちゃん!」
中でレジのところに座っていたおじさんが急に立ち上がって俺に向かって言ってきた。
「へ?悠人たちが生きて帰ってきてんだからオレも帰ってくるに決まってんじゃねーか」
オレはさっそく盗んだアイスを豪快に二本口に頬張りながらそう答えた。
すると駄菓子屋のおじさんはオレに向かって突進してきてそのまま抱きつこうとしてくる。
オレは横にヒョイっとかわし、駄菓子屋のおじさんはオレの隣の壁に勢いよく顔面から突っ込んだ。
「気持ちわりーんだよ!」
今のが綺麗なお姉さんだったらいーけど、こんなハイテンションおじさんに抱きしめられるとか死んでも嫌だ!
オレは逃げるように外に出て、花屋のところに駆け込む。
「…え?えっ?修也ちゃん!?」
次は花屋の姉ちゃんがオレを見て驚いた顔をしてきた。
…なんかメンドクセーなーこれ。
「そうだよ!千香たちが帰って来てんのにオレだけ帰ってこないわけねーだろ!」
オレがそういうと、次は花屋の姉ちゃんが「修也ぢゃ〜ん!」と泣きながら飛びついてきた。
…前言撤回、オレ、姉ちゃんに抱きつかれるのも無理ぃ!!
そして、反射的に近くの花を盗みながら花屋の姉ちゃんを避け、外に飛び出た。
すると、次はアイスを盗まれたことに気づいた駄菓子屋のおじさんがオレを追ってくる。
おー、よく気づいたな〜。
まあ、さすが鷹の目の鈍足オヤジなだけはあるぜ。
オレのつけた名前の通り足の遅い駄菓子屋のおじさんはすぐにオレと差をつけられその場にしゃがみこんだ。
しかし、その間にもいろんな物を盗みまくっていたオレの後ろには沢山の大人たちが追ってきている。
「やベーなー、このペースだとあと30秒ぐらいで捕まっちまうなー」
でもだいじょーぶ!
オレは盗んだ物の一部を地面にばら撒き、大人たちがひるんだ隙に近くの路地裏まで走った。
ん、確かこのまま路地裏の端まで走ったら千香の家の前に出るんだった気がするんだけど。
するとオレの予想は的中したみたいでオレは千香の家の前に勢いよく飛び出た。
「ん?おー千香久しぶりー」
意外と遅れて入学してもうまく学校生活をおくれてるみてーだなー。
その証拠に千香は同じクラスであろう女子と一緒に制服姿で帰っている途中だった。
するとオレに気づいた千香が、急に泣きながら飛びついてきた。
…今日はやけに飛びつかれるのが多い日だよなー。
路地裏から勢いよく飛び出したあとあとだったオレは、千香をかわすことができずそのまま千香の両腕の間におさまってしまった。
くそ、ついに捕まってしまったか…。
「修也、修也ー、よかった、やっぱり悠人の言うことは本当だったんだ…
修也はどこに行っても最後は自分たちのところに帰ってくるって」
やめろ、人を放し飼いしてる猫みたいに言うんじゃねー!
あと、隣で千香の友達が見てんだけど…。
「ねーねー千香!もしかしてその人が千香の言ってた遠くに行って会えなくなってた彼氏って人!?」
その千香の友達からの言葉を聞いた千香は顔を真っ赤にしてオレを両腕で強く突き飛ばした。
おい、お前が勝手に抱きついてきたんじゃねーか!
すると千香が顔を真っ赤にしたまま口を開く。
「べっ別に彼氏とかそんなのじゃないから!たっただの…ただの……友達!友達だって!」
おい!今の間はなんだよ!!
勘違いされるような言い方すんじゃねーよ!
オレは心の中でそうツッコミ、後ろを振り向いた。
何かが追ってくるような音がだんだんと近づいてくる。
これは…あれだな!
商店街のオレを探してますよ軍団!
「千香!じゃあまたお前のとこ行くからこれ持ってそこ立っとけよ!」
オレは手に持っていた盗んだ物を千香に全部投げつけて、そのまま全力疾走で逃げだした。
「え、うんってコラぁ!!私を巻き添えにしないでよ!!」
千香がそう叫んでオレを呼び止めようとしたが、ドジ属性のある千香はやっぱりそこでつまずきヘッドスライディングをするように転んでしまい、オレを呼び止めることに失敗した。
「ま、予想通りだなー、じゃーな千香ー」
遠くで転んでいる千香に聞こえるようにそう言い、オレはそのまま全力疾走を続けた。
「あとはあれだな…悠人にさえ見つからなければ……」
んー…ん?
あの見覚えのあるっていうかすごく頭に染み付いている赤い物体はなんだ?
いや、なんだ?じゃねーか…あれは…あれは!!!
その瞬間、黒いロングの髪がオレの目の前を横切り、オレの口の中にその赤い物体が押し込められた。…一瞬の出来事だった。
「ムガっ!?」
オレは口に赤い物体を押し込められた反動で頭を後ろに吹っ飛ばされたが、残った体はそのまま走っている方向へ進んだせいで、後ろに宙返りするようにひっくり返る。
「イッテェ〜〜〜!!」
後頭部を地面に強打して悲鳴をあげる。
…そして口の中のこの世のものとはおもえない辛さの存在に気づいたオレは、横になったまま激しく全身を動かして命の危機を訴えた。
いや、マジで死ぬ、マジでこのままじゃ死ぬから!!
「はぁ…修也が悪いんですよ。普通帰って来た瞬間に盗みをはたらこうとするバカがいますか?」
赤い物体、悪魔のハバネロをオレの口に突っ込んだ張本人がそう言ってきた。
くっくそー…本当に警戒してないといけない人物のこと忘れてた…。
「へほほーれい、ひひはりはあえろをくちいふっほんほはへーんじゃへーあ!?(でもよー冷、いきなりハバネロを口に突っ込むのはねーんじゃねーか!?)」
オレは冷に向かってそう言ったが、口がうまく動かなかった。なんかこのハバネロ、今までのハバネロと辛さが全く違うぞ!?
「えっと、なんて言ってるか全然わかりませんけど、なんでこんなに辛いんだ?って思ってるでしょう?」
うん、うん、思ってる。
っていうか冷の場合おかえりも何もねーんだな。千香みたいに抱きつかれるのも嫌だけど完全スルーもなんか傷ついたぞ!?
…しかし辛さのせいで声が出せないオレは首を冷に向けてコクコクと頷かせることしかできなかった。
すると冷はフフンと自慢げに腕を腰につけて言い続けた。
「今までのハバネロに自分で研究して作ったデスソースを塗りつけてみたんですよ♪」
久しぶりに見た気がする、悪魔の笑み。
ハバネロ耐性が少しついてきたせいか、ようやく動けるようになったオレは、また逃げ出そうとする。
が、もう後ろまで迫ってきていた商店街の大人たちから逃げるにはもう遅く、すぐに捕まってしまった。
「フッフホー!!ほほえてろよれい!!(クックソー覚えてろよ冷!!)」
オレはこう叫んだが、冷は何て言ったか理解できてないようで首を傾げてオレを見ていた。もしかしたらわざと首を傾げていたのかもしれないが。
だって絶対オレの言ったことわかってるって顔してたしよ!!
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
こうしてその後大人たちに長い間怒られ続けたオレはトボトボと家を目指して歩いている。
やっぱり怒られるのに慣れてると暇だよなーほんと、あの時間は。
「あっ修也!よかったー、もう二度と会えないかと思った、あ、いや修也なら絶対帰ってくるって信じてたよ。おかえり修也」
後ろを振り返ると悠人がそう言いながらオレのところまで走ってきた。
「っておい!!絶対帰ってこないって思ってたのかよ!」
「いやー、まあ別にどうでもいいだろそんなこと。
じゃ、みんな待ってるしさっさと行くぞ修也!」
さらーっと流しやがったこいつ…
まあ、オレもどうでもよかったけどよ!
で、みんな待ってるってどういうことだ?
オレは走り出した悠人を追った。
でも悠人の走ってるところ、どう考えてもオレの家までの道だよな…
そして結局、オレの家の前まで来てしまった。
「なあ悠人、結局オレの家じゃねーか。
行く場所変わってねーし」
悠人はオレの言うことも「いいからいいから」とスルーして、オレを家の中に突き飛ばした。
よたつきながら玄関に入ったオレは、そのままバランスを崩して、玄関に座り込む。
…この玄関、この匂い、この空気……ほんっと久しぶりだなぁ。
気がつくと目から水滴が落ちてきているのに気づいたオレは悠人にばれないようにゴシゴシとぬぐってリビングへ向かった。
「おかえり修也!!」
するとリビングに入った瞬間にオレの耳元にその言葉が入り込んできた。
「あ?へ?、あ、ただいま」
状況が理解できないままそう返し、周りを見渡してみる。
すると、ここで暮らすことになった弘毅と、妹の優里香、親父と母さんがいて…何故か千香と冷もオレの家にあがっていた。
「あと、最後のドラゴンとの勝利おめでとう、修也」
悠人がオレの肩をポンと叩き、そう言ってきた。
何故か涙が自然と流れてくる。
あれ?アーロンさんたちと別れる時は泣かなかったんだけどな…
「あ、あれ?なんか勝手に涙が、出てくんだけど…」
「いや、それが普通だよ修也、やっとここに帰ってくることができたのにそうならないほうがおかしいから。
あと、やっと返してくれたねー」
すると、千香がそう言ってきた。
「…うっせーな!それは千香だけだっての。
あとオレ何も千香にあげてねーぞ?」
オレは流れでてくる涙を無理やり止めながらそう言う。
「へ?返したじゃん『ただいま』って」
あれ?オレ言ってなかったっけ、まあ別にいーだろそんなこと。
完全に泣き止んだオレは椅子にドスンと座り込んだ。
「なあ、そこ俺の席」
弘毅が椅子に座ったオレに向かって言ってくる。
「は?ここはオレの席だ!勝手に座ってんじゃねーよ!」
「うるさい、どけって!」
そして弘毅との椅子の取り合いになり、何故か最終的にはオレが弘毅を膝の上に乗せるという形になった。
「いや、重いから!」
オレは弘毅を降ろして椅子から立ち上がった。
クソー、明日からなんかメンドクセーことになりそうなんだけど!
結局オレは悠人たちの集まってる方へ移動する。
そして千香と悠人の間に座った。
冷のとなりは危険すぎるからな、気をつけねーと。
「ほら、修也のガスガン、やっぱり修也はこれ持ってないと修也じゃないしねー」
すると、千香はそう言いながらオレにM92Fを手渡してきた。本物ではなく、オレが中学の時に買った宝物のガスガンをだ。
「ぅおぉ〜…やっと、やっと会えたなぁ〜」
オレはM92Fに向かって飛びつき、そう言いながら頰にスリスリとM92Fをこすりつける。
「うわ、やっぱり処分しておけばよかった」
「気持ち悪いからやめてください」
すると上から優里香、冷の順に冷たい目線で見られながら言われた。
「うっせーな!!エアガン!ハンドガンはオレの宝物、いや命なんだから仕方ねーだろ!!」
オレはそう言ってM92Fを抱えたまま他のエアガンが置いてある自分の部屋めがけて走っていった。
…オレは異世界でもこの世界でもやっぱりハンドガンが一番だぁー!!




