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さよなら!

んー、前から思ってたけどアーロンさんの家ってギルドから意外と遠いよなー…。


アリサと別れたオレはそこから10分ほど歩き、街の人にあいさつしながらアーロンさんの家を目指している。


それにしてもまた会える保証なんてどこにもねーのにまた会おうぜー、とかよく言えたよなー。

M92Fはもとの世界には銃刀法違反とかそんな感じの奴で持っていけねーし、M92F以外で世界を行き来する方法はねーからな。

ま、なんとかなるか!


なんの根拠もなく適当にそう決めたオレはアーロンさんの家に早く着くために走り出した。

オレが急に走り出したため近くにいた小鳥達が慌てて飛び去っていく。

オレは飛び去った鳥達に手を振りながらそのまま走り続ける。


「お、やっと家が見えてきたんじゃねーか?」


視界にアーロンさんの家が少しずつはいってくる。

そしてオレはアーロンさんの家に到着し、インターホンも何も押さずに勝手に門を開け庭に入った。

で、そのまま玄関のドアまでたどり着いたオレはやっぱり勝手にドアを開け、アーロンさんの家へ上がった。

勝手に家にあがるのはよくないって?いーじゃねーか!鍵をかけてねーのが悪いんだよ!!


「おーい、アーロンさーん!」


オレがそう叫ぶと遠くの部屋からアーロンさんが、何ていっているかわからない聞き取りにくい返事をしてくれた。


…まあ、とりあえず声のした方へ行ってみるか!多分そこにアーロンさんもいるだろうしよ。


オレはそう決めて声の聞こえてきた方へ向かって廊下を歩き出した。

が、数分経ってもアーロンさんの姿は見つけられず、その後何分経ってもアーロンさんを見つけることは出来なかった。

そして、一度外に出てみようと道を戻ろうとしたが外に出る道もわからなかった。


最近は商店街でも迷子になってなかったから油断してたみたいだ…


「あークソ!!オレそういや方向音痴だったぁーー!!」


どうしよー、またあの迷宮地獄のはじまりだってのかー?いやだめだ!考えるな!

死ぬ、考えるだけで死ぬ。


オレはその場に縮こまりとりあえず助けを待ってみることにした。

どうせ動いたところで余計に迷子になるだけだしなー。

…全てはアーロンさんのせいだ!こんな無駄にデケー家建てやがって!


が、どれだけ待ったところで誰も来る気配がないのでオレは結局歩きまわることにした。


「こんなに広い家だからお手伝いさんが2人や3人いても普通じゃねーかなと思ってたんだけど」


はぁ…とオレはため息を吐き、今いる廊下をキョロキョロと見回した。

いつも何も考えずに先に進むのが悪いんだよな多分、こうやってしっかりと進路を決めて歩けばいつかアーロンさんのもとにたどり着く…はず。


クソ…足を踏み出すごとにあの迷宮のトラウマが頭によみがえってくるんだけど!!


「うわっ!!」


すると急にオレの後ろに見えない壁が貼り付き、そのまま壁がスライドするように移動した。

オレは見えない壁に簡単に押され、床をゴロゴロと転がっていく。


「イテッ!痛っ、ガッ!?ブヘッ!!」


壁から逃げようとしても押し返そうとしても失敗し、その度にオレは変な奇声を上げて床を転がった。


そして数分間転がり続けた末、やっと見えない壁の動きが止まりオレは見覚えのある部屋の中へ放り入れられた。

オレはカエルの様に飛び跳ね、顔面から見事に着地した。


「やあ修也君、ゴロゴロ探検は楽しかったかい?」


その場に座り込み顔面を両手でさすっているとら頭上から低い聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「うっせーな!痛いんだよアーロンさん!!」


オレは反射的にアーロンさんが立っている頭上に向かって勢いよく立ち上がり頭突きを繰り出した。


アーロンさんは数センチ上に飛び上がり、そのままキレイに足から着地した。

が、鼻からは勢いよく赤い噴水が2つ発射されている。


「痛いな修也君!!鼻血が出たじゃないか!!」


アーロンさんはすぐに指で鼻を押さえ、オレがあげたティッシュを丸めて作った鼻栓を一つずつ鼻に突っ込んだ。


でもバカだなアーロンさん、オレがあげたものを何の疑いもなく使用するなんてよ。


アーロンさんの鼻に差し込んだティッシュは何故か全て真っ赤に染まっている。

それはアーロンさんの血によるものではない、じゃあ何かというと…


「ギィヤァァーー!!!!」


ハバネロを染み込ませた 冷特製ハバネロティッシュだ!!

アーロンさんは絶叫した後、泡を吹いて床に倒れこんだ。…これが、オレを迷宮に迷わせた天罰だぜ!!


オレはハバネロティッシュをアーロンさんの鼻から抜き取り、次は本当に普通のティッシュを鼻に詰めてあげた。


でも、さすが冷が作ったハバネロティッシュだなー…、オレに使用される前に盗んでおいて正解だったぜ。


…で、たしかオレってアーロンさんに挨拶するためにここに来たんだよな。

えっと、アーロンさんに挨拶してもとの世界に帰る予定でここに来たんだよな。


オレは泡を吹いて倒れているアーロンさんを見つめながら胡座をかいて少し考えるフリをしてみる。

そして数秒した後、アーロンさんの右頬めがけて思いきりビンタを決めてみた。


「痛ぁっ!!!?」


アーロンさんがカッと目を見開きその場に立ち上がる。


「なんでいきなりビンタするんだ修也君!?」


そしてオレに向かって頰をさすりながら叫んできた。


「なんとなく!」


とりあえず即答する。

するとアーロンさんは疲れたようにため息を吐き、近くにあった椅子に腰を掛けた。


「まあ…もういいよ、このままじゃ永遠と続きそうだしね。

…で、修也君は何しに来たんだい?ついにもとの世界に帰るって言いにきたのかい?」


アーロンさんはそう言うと何か書かれているっぽい紙を取り出した。

オレはとりあえず頭を上下に振ってYesと返し、アーロンさんの持っている紙に手を伸ばす。


「修也君…そんなに焦らなくてもちゃんとあげるから」


するとアーロンさんに腕をグイッと掴んで戻され、膝の上まで持っていかれた。

でもオレは簡単に諦めねーぞ!


結局反対の手でその紙を奪い取り、中を開いて見てみる。

中にはたくさんのお礼のメッセージ、親しかった人からはお別れのメッセージも書かれていた。


「…なんだよ、みんな結構軽い感じだったからみんなオレが帰るの悲しくないんだなって思ってたんだけど」


オレはそう言いながら広げられた大きな紙を隅から隅まで見ていった。

中にはオレだけじゃなく悠人や弘毅、千香、冷、優里香に向けてのメッセージも山ほどあった。


「悲しくないわけないじゃないか、みんな修也君がもとの世界に帰ってしまうのは寂しいに決まってるだろ。

ただ、ここの街の人たちのほとんどはそういうのを伝えるのが苦手らしくてね、私もその1人だけど」


オレはアーロンさんの言葉を無視して、テーブルの上に置いてあったお菓子を口に詰め込んだ。

いや、聞いてなかったわけじゃねーけどな!


しかしアーロンさんはオレが無視していることに気づかずそのまま話を続ける。


「悠人君達が帰るときも何かしらみんなで見送ったりしようとしていたんだけどね。

結局失敗してしまったけど。

だから修也君!このメッセージを悠人君達にも見せてあげてくれないかな!?」


オレは頰をリスのように膨らませた状態で右手の親指を上にあげてグッジョブと返事した。

《このお菓子めちゃくちゃうまいな!!》

リスのように頰が膨らんでるせいで口に出すことはできなかったが、心の中でこう叫びながら。


するとアーロンさんは椅子から立ち上がり部屋を出ようとした。


「むがっ!?どこにいくんだアーロンさん!?」


「え?外にだよ、ここで異次元の扉を開かれても困るしね。

他のみんなも外で修也君を待ってるよ」


オレが詰め込んだお菓子を無理やり喉に押し込めながらそう言うと、アーロンさんがこう返してきた。


ん?みんな待ってるってどういうことだ?

商店街のみんなにももう挨拶とかしてきたんだけどなー。


オレは迷子にならないようにアーロンさんに連れられて外まで移動した。


すると外には商店街のおじさんやここに住んでいる人たち、アリサ、葵たちが集まっていた。


「あ!?なんでこんなに勢ぞろいしてんだ!?」


「フッフッフー、修也君を1人でコソコソと僕が帰らせるわけないのさ!」


アリサが胸をドーンと腕で叩き、何か自慢げにアピールしている。


「金髪野郎たちの時はしくじって見送りできなかったけどよ、悪ガキの見送りまでスルーするわけには行かねーしなぁ!」


商店街のおじさんの1人がそう言って何故か強がったような感じの態度をしていたが、目には大量の涙が溜まっていた。

泣くなよ…気持ちわりーから絶対なくなよ!!


と、後ろを振り向くとアーロンさんは普通にワンワンと子供の様に泣いていた。

オエェ……


「…気持ちわりーよ!!!」


オレは容赦なくアーロンさんの頭をパシーンと叩いた。

そして、M92Fを誰もいない方向に向けて構える。

このM92Fの役目もついにここで終わり、お別れ、なんだな。


「アーロンさん!オレがもとの世界に戻った後だけどよ…M92Fのこと、頼んだぜ!」


「何自分の子供みたいに言ってるのさ…」


アリサがすぐにツッコんできたが気にしない気にしない。


オレは指をトリガーに引っ掛けて、そのまま引き金を引く。

すると、M92Fの中から歪んだ空間が発生し、オレの目の前に異次元の扉が出現した。


その場に不安定な風が吹きおこり、オレの白い髪はその風によって荒々しくいろんな方向に揺らされていた。


そういやこの髪ってどうなるんだろーなー。

ま、このままでも黒に染め直せば問題ねーから別にどうなってもいーけどよ!


オレは異次元の扉に向かって一歩、また一歩と近づいていった。

…そして最後の一歩というところまで来た時、


「修也君!!」


とアリサに呼び止められ、オレはアリサの方へ顔を向ける。


「えっ、えっと、僕!修也君のこと好きかも!!」


えぇ!?いきなりなんだよこいつ!

少々戸惑ったがオレはすぐに返事を返した。


「オレは嫌いだけどな!お前とは全然合いそうにねーからよ!じゃ、またな!」


そう言ってオレはアリサに向けて手を振る。

周りにいた他の人たちはみんな驚愕な顔をしていたが、アリサだけはその言葉を返されるのがわかってたようで、笑顔で手を振り返してきた。


「やっぱそうだよねー!冗談で言ってみたけど、それでもこんな返事を返す修也君とは絶対合わないよ!

……じゃ、またね!」


アリサのその返事を聞いたオレは、M92Fをアーロンさんではなくアリサに投げつけ、そのまま手を振りながら異次元の扉の中へ消えていった。

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