ジェイムは何処への巻
「おっそいわね。ジェイム……何してんのかしら?」
日が暮れても帰らないジェイムに、クレアは不安を抱き始めた。
木枯らしが吹き荒び、孤独が押し寄せる。
クレアはやむを得ず、その場を離れた。
向かった先は、ジェイムが猫耳バンドを探しに行った村。
危険なのは重々承知だ。
しかし、胸騒ぎがしたクレアは自然と村に向かっていたのだ。
幸い、日が暮れたお陰で人通りは少ない。
「ジェイム……ジェイム……」
クレアは囁くように、ジェイムの声を呼んだ。
当然ながら、ジェイムの返事はない。
「はぁぁ……痛っ!」
溜め息をつきながら腰を下ろすと、お尻に何かが当たる。
「何なのよ。もう、痛いじゃない」
クレアが丸いお尻を上げると、そこには猫耳バンドが転がっていた。
「これは? 猫耳バンド……クンクン……ほんの少し、ほんの少しだけどジェイムの匂いがする……」
クレアは宛にならない自らの嗅覚を研ぎ澄まし、それがジェイムの匂いだと判別した。
何処か懐かしくて、優しいジェイムの匂い……。
クレアは猫耳バンドを装着すると、本能的にジェイムに何かが起きたと悟った。
「ジェイム……貴方の身に何かが起きたのね。いいわ、あたしが助けてあげる。助けてもらったお礼よ」
そこへ通りすがりの燕が、クレアに話し掛ける。
「貴女、あのペルシャ猫の仲間?」
「燕さん、ジェイムを知ってるの?」
「あの猫、ジェイムって言うのね。ジェイムは、盗賊の男に拐われ西の方角へ向かったわ」
「本当に? 燕さん、ありがとう」
「ちょっとアンタ、まさか助けに行こうなんて思ってないわよね? 相手は大盗賊の『マッドマックス』よ。止めておきなさい、ハムスターには無理よ」
「あたしに指図しないで。それに、あたしは人間だから! 勘違いしないでよね」
クレアは、燕との会話もそこそこに、西へと歩き出した。
人間ならともかく、ハムスターの状態ではモフモフして歩きにくい。
「人間に戻れれば……人間? そうだ、月……月の光を浴びれば……」
しかし、今夜は雲が厚くて、光はクレアに届かなかった。
「上等よ、猫耳バンドがあるから、魔法が使えるんだからっ」
クレアは目を閉じ、アクアの下級魔法のウェーブを詠唱した。
「この波に乗っていけば、少しは早く追い付けるわ」
クレアは詠唱しながら、ウェーブに乗りジェイムが拐われた西へと向かった。
モフモフの毛が、水に濡れて体温が下がったが、クレアは魔法を止めなかった。
少しでも早くジェイムを助けたい……少しでも早くジェイムに会いたい……その気持ちが、ツンデレだったクレアを素直にさせた。
「ジェイム……今、行くからね」
クレアは、一段とウェーブを加速させた。




