猫耳バンドの在処の巻
一人取り残されたクレアは、少し遅めの朝食を取ろうと考えた。
ハムスターになってから口にしたのは、木の実だけ。
とりあえずは、水を飲もうと水源を探した。
しかし、それらしい物は見付からず、体力だけが奪われていった。
「そうだ。魔法……水の魔法で」
クレアは一つの決断に達し、水がないなら作ればいいと考えた。
「ふまふまーっ! あれ、おかしいな。ふまふまーっ!」
必死に魔法を詠唱しようとするも、何故か言葉が出てこなかった。
どうやら、ハムスターの状態では詠唱が出来ないようだ。
「仕方ないわ。やっぱ、水源を探すしかないようね。あたし、負けないんだからっ!」
クレアは、再び水源を求めて歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
一方、ジェイムは人間達が彷徨く村で、猫耳バンドの匂いを追っていた。
一見、平和に見えるこの村だが、古からのしきたりで『モフモフ狩り』という何とも不可解な御触れが出ていた。
何でも、作物を食い荒らす一部の動物によりこの御触れが制定され、動物が侵入することは勿論のこと、ペットを飼うことさえ重罪とされていた。
そうとは知らずジェイムは果敢に村に飛び込み、猫耳バンドを探した。
「近い……近いぞ」
ジェイムは、細心の注意を払いながら匂いのする方へ駆け出した。
「あった。彼処だ」
市場の片隅で売られている林檎の脇に、猫耳バンドは一緒に陳列されていた。
しかし、村人が行き交う人通りが多いこのエリアでは、モフモフしたジェイムは目立ち過ぎる。
例え、御触れがなかったとしても、見つかれば捕獲されることは間違いない。
目の前に見える猫耳バンド。
ジェイムは、人が途切れるのをひたすら待った。
「今だ!」
ジェイムは人通りが途切れると、夢中で猫耳バンドに飛び付いた。
「ちょろいもんだ。ついでに林檎も頂くとするか」
猫耳バンドを手にし、クレアの為と思って盗んだ林檎がジェイムに災いをもたらす。
「こらーっ! 泥棒猫め!」
店主は、林檎を奪ったジェイムに気付き、青龍刀を持ち出した。
「やられてたまるかよ。あんな物で斬られたら、命がいくつあっても足りない。逃げるが勝ちってね」
壁を伝い、屋根を伝い、ジェイムは命からがら店主から逃げ出した。
「ふぅ……危ない危ない……うぐっ」
路地裏に駆け込み、一息ついたジェイムを何者かが掴み上げる。
「おぉ、こいつは上等なペルシャ猫だ。高値で売れるな」
ジェイムは、厳つい顔をした男に捕獲されてしまったのである。
「離せ、この野郎ーっ!」
「ん? こいつ生意気に猫耳バンドをつけてやがる。これは俺様がもらった」
「フミャーフミャー!」
ジェイムは捕獲される中、もう一つの猫耳バンドを地面に落とした。
――クレア……これに気付いてくれ――
ジェイムは、僅かな望みを猫耳バンドに託した。
「こいつ、大人しくしやがれ」
「フミィ、フミィ……」
「そうだ、それでいい」
男はジェイムを縛り上げ、馬車の荷台へと放り込んだ。
――クレア……どうか……生き延びてくれ――
◇◇◇◇◇◇
一方その頃、泉を発見したクレアは喉を潤していた。
「美味しい~。後でジェイムにも教えてあげよ」
クレアは満足すると、帰りの道を急いだ。
喉を潤したことで、帰りの足取りは軽い。
何も知らずに、クレアは歩みを進めた。




