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デレデレしすぎなのだの巻

 クレアが全裸のまま途方に暮れていると、雲が月を隠した。

すると再びクレアは、ハムスターの姿に戻ってしまった。

 どうやら月の光を浴びると一時的に人間に戻れるらしい。


「人間の姿もいいけど、そのモフモフも好きだな」


 ジェイムがそう言うと、クレアは頬を染めた。


「ほ、褒めても嬉しくないもん……。ジェイムこそ、そのモフモフ可愛いよ」


「なっ! 照れるじゃねぇかよ。それはそうと月の光を浴びると人間に戻れるってのもわかったことだし、縄張りに急ぐぞ。さぁ、背中に乗ってくれ」


「うん……やっぱりジェイムの背中、モフモフして気持ちいい」


 ジェイムは口角を上げながら、縄張りまでの道程を急いだ。




◇◇◇◇◇◇




 オイルに汚染された大地を駆け巡り、風を切ると産業廃棄物の山が見えてきた。

 クレアは嫌な予感がして、ジェイムに聞いてみた。


「まさか、彼処が縄張りとか言わないわよね?」


「さすが、クレア。鋭いカンしてるな」


「冗談でしょ? ちょっと降ろしてよ。帰る」


「帰るって何処に?」


 クレアはそう言われると言葉を失い、肩を落とした。

もっとも、現在のプックリした撫で肩では、落とす肩もないのだが。


「そう、ガッカリすんなって。住めば都ってよく言うだろ?」


 仮にも、王女であるクレアだ。

こんなゴミの山に足を踏み入れることなど、本来ならなかった筈だ。

しかし、現実にはゴミの山が差し迫っていた。

 ジェイムは器用にゴミの山を登っていく。

すると、周囲の景色が一望出来る場所に出た。


「綺麗~」


 クレアの目には、キャンドルライトのような家々の明かりが映っていた。

ジェイムは、誇らしげに胸を張りながら言った。


「だろ? ここは俺の秘密の場所なんだ」


 そう語るジェイムの目は純粋で……、でも、何処か寂しげであった。


「クレア……怖いか?」


 不意にジェイムは、景色を眺めるクレアにそう言った。


「そ、そう言うアンタはどうなのよ?」


「俺? 俺は……今までずっと一人だった。孤独だった。でも、今は違う……それは……」


――ぐぅぅぅ――


「ごめん、お腹なっちゃった」


「で、何だっけ?」


「いや、いいんだ。ちょっと待ってろ。確か木の実があった筈だ」


 ジェイムは体を反転させ、保存用の食料箱から木の実を取り出し、クレアに渡した。


「これ、美味しい~。ジェイム……ありがとね」


「お、おう。それ食ったら、今日はもう寝るぞ」


「寝るって、ここに?」


「そう慌てるなって」


 ジェイムが目の前の錆び付いた鉄板を蹴りあげると、空洞が現れた。

比較的中は広く、思ったより清潔的だ。


「うわ~。フカフカのベッド!」


「スポンジのベッドは気に入ってくれた?」


「これスポンジなの? みえな~い」


 クレアは子供の様にはしゃぎ、疲れたのかそのまま眠ってしまった。


「むにゃむにゃ……」


「可愛い寝顔だ……」


 ジェイムはそう言うと、ペロッと顔を洗い床に体を丸めた。

 こうしてクレアの激動の一日は終わり、夜が更けていった。

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