もっとモフモフした~いの巻
メルルがジェイムの肉球と戯れている間に、日は沈もうとしていた。
メルルは我に返り、ジェイムに謝罪した。
「ゴメン、ゴメン。あまりにもプニプニしてもんだから……ニャハ」
「い、いや、構わない」
ジェイムを見る限り、満更でもなさそうだ。
クレアは、これで大地の臍に行けると確信し、ジェイムの背中でモフモフを楽しむことにした。
「そっちも良さげだね。あたちもモフモフした~い」
一人モフモフを楽しむクレアに、メルルも参戦してきた。
今までモフモフを独り占めしてきたクレアだったが、メルルの参戦に動揺を隠せなかった。
「ちょっと私のモフモフなんだから~」
「ズルいよ~。 ん、ん?」
メルルは何かに気付いたかのように、クレアの瞳を見つめた。
「何よ、何か文句あんの?」
「うんとね、ジェイムもモフモフだけど、クレアもモフモフだよね。そりゃ、そりゃ」
メルルはクレアのモフモフした体に、手を伸ばした。
「ちょ、ちょっと何処触ってんのよ」
「いいじゃん、いいじゃん減るもんじゃあるまいし、胸はペッタンコだし~」
メルルは地雷を踏んだことを知らなかった。
その後、クレアに八つ裂きにされたのは言うまでもない。
「二人とも、いい加減にしてくれないか」
「ジェイムは黙ってて」
クレアとメルルにユニゾンでそう言われると、何も反撃出来ずに歩き出した。
女性の中に男一人……いや、一匹か……肩身の狭い思いには誰もが同情するであろう。
◇◇◇◇◇◇
深夜になっても、ジェイムは歩き続けていた。
それは今までの時間を取り戻したい、早くクレアを人間に戻してあげたいという表れだった。
ジェイムの背中では、クレアとメルルが寝息を立てて眠っている。
ジェイムは背中の二人を見ると微笑みながら、夜空を見上げた。
「今宵も月が綺麗だ……」
厚い雲が流れ、月の光が辺りを照らす。
勿論、この月の光にクレアの体は徐々に反応を示していった。
「ん~むにゃむにゃ……何か、眩し……い」
「クレア……起きてしまったか? 見て見ろ、今宵は月が綺麗だ。人間に戻れるチャンスだぞ」
ジェイムはそう言うと、クレアを月の見える方角に向けた。
「本当……綺麗……」
――ドクン、ドクン――
月の光を浴びたクレアは、ハムスターの姿から人間の姿に戻っていった。
「あわわわ……」
クレアは貧乳を腕で隠しながら、ジェイムに背を向けた。
「見ないでね……」
「あぁ、わかってる……」
ジェイムはそう言いつつも、横目でクレアを見つめた。
「綺麗だ……」
ジェイムはウットリしながら、静かに瞼を閉じる。
クレアは水の魔法で羽衣を纏うと、ジェイムとメルルを抱き抱えた。
「えへへ。どう? この羽衣……似合うでしょ?」
「に、似合うな。魔法でそんなことも出来るのか?」
「うん、猫耳バンドのお陰。さぁ、月が出ているうちに、大地の臍に急ぐわよ~」
「あぁ、済まない」
ジェイムはクレアの胸の中で、複雑な思いを抱きながら流れる景色を眺めた。
メルルはというと、未だ寝息を立てて眠っている。
「平和なものだ……」
ジェイムはそう言うと、メルルを自らのモフモフにくるんだ。
大地の臍……どのような場所なのだろうか?
クレア達は期待を胸に、先を急いだ。




