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なにかが、始まる

これで終わりです。

ようやく主人公視点に戻ります。

夢を見た。


幼いころの自分と、弟がよく遊びに行っていたあの公園に、1人ポツンと立っていた。


何かを待っているような、そんな気分のまま、暗い夜に街灯の灯りだけを頼りに立っていた。


よく見ると、公園には、他にも人影があった。


ブランコの上、電柱の影、シーソーの端と端に、何人も佇んでいる。見えるだけで7,8人だろうか。

皆、背格好はバラバラで、男女、子供大人と、それぞれいるらしい。


けれどなぜだか皆、顔が見えない。


どうすることもできなくて、水道の近くに立ちすくんだ。


ふと、近くにいる小柄な人影に見覚えがあるような気がした。


砂場にしゃがんでいる人影は、昔からいつも一緒にいた…弟に、よく似て………


「い……せ…ぱい……!先輩ッ!!」


ハッと目が覚めた。


目の前に、よく見知った後輩が不安そうにこちらを見下ろしている。

見上げると、光が眩しくて目を開けてられなくなった。朝のまばゆい光が、道場に差し込んでいた。

ぼやけて霞む視界に自分が泣いているのだと気がつき、米子はあわてて手で拭った。


「み、実くん…」


米子が目を覚ましたことにホッとした顔になり実が息を吐く。

ゆっくりと起き上がろうとする米子の体を支えてくれた。


「ありがとう」


「いえ。先輩、昨日のこと、覚えてますか?」


「昨日…」


再び、窓に目をやる。


朝日が目に沁みる…朝日…


「朝…?」


いつの間にか朝になっていたのだ。

米子は頭を抑える。


(昨日は…そうだ。実くんと私とで、道場の片付けをしていて、たくさんの幽霊が……っ)


「先輩!?大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ!」


実があわてて横にさせようとしたが、米子は弱々しく笑って断った。


「大丈夫よ…少し、眩暈がしただけ。結局、あのまま寝ちゃったのね…」


米子の言葉に実は複雑な顔をした。


「それなんですけど、昨日いったい、なにがあったんですかね?ぼく、あまり覚えてないんです。確かいきなり停電して、そっから先がどうも記憶が曖昧で…」


昨日、実は幽霊に乗り移られていたのだから無理もない。

米子はほこりを払いながら立ち上がった。


「停電に驚いて頭を打ってそのまま寝てしまったんでしょう。2人とも」


「え"っ…僕らそんなに間抜けだったんですか…?」


実が嫌そうに自分の頭をさする。米子は苦笑して実にも立ち上がるよう促した。


「ほら。それより、昨日は親に連絡もなくここに泊まったことになるんだから早く家に電話しなさい。きっと心配してるわ」


「あ、そうですよね!」


実はあわてて壁際に置いてある自分のカバンに近づいた。中に手を突っ込み、携帯を取り出し、ギョッとした声を上げた。


「げーッ!着信12件!?うわ、ヤバ〜…全部家と兄貴からだ。メールもすごいし…せ、先輩!ちょい、電話してきます!」


「えぇ」


米子が頷くと、実はあわてて携帯を耳にあてて駆け出していった。

道場の入口付近からすぐに「うわ…声でか過ぎだから兄貴…」と実のげんなりした声が聞こえてきた。


米子はその様子を横目に見ながら、近くに置かれた弓を手にとった。


とくになんの変わりもない、普通の弓だ。

手触りも、見た目も。


だが。


(私はこれで、あの幽霊を倒した…)


米子は、弓を固く握りしめる。

昨日は全てがおかしかった。


数百もの幽霊がなぜこの道場に集まってきて、米子たちを襲ったのか、そしてあの声の主はいったい何者なのか。


米子は頭が痛くなるのを感じ、弓を持つ手で額を抑えた。


この力は、あの声がくれた。

それは間違いなかった。


(代わりに願い事を一つ叶えてくれって、言ってたっけ…)


米子は口元を小さく歪めた。


ずっと、霊感があることが嫌だった。見えるだけでなにもできない自分が嫌で、いっそ見えなければいいと何度も願った。


けれど、見えるだけでないのなら…


(いいよ。なんだって叶えてあげる。この力があれば、私は、もう無力じゃない…)


これがあれば、きっと守ることができるだろう。


(大切な誰かを、今度は私の手で…)


「先輩?」


電話を終えたのか、パタパタと実がこちらに駆けてくるのが見えた。

米子は弓を担いで、ほほえんだ。


「さあ、帰りましょうか」



夢を見たことすら、全て忘れて。



***



静かなとある教室に、不機嫌な顔を隠すことなく、座り込む男子生徒が1人。


まあ俺なんだけど。


俺は誰に言うでもなく、脳内で付け足しながらイライラを全面的に出していた。


さすがに耐えきれなかったのか、ずっと本を読んでいた後藤がため息をついて本をぱたんと閉じた。


「山手…いい加減にしてくれないか。ここは、オカルト研究をする場であって、愚痴をこぼす場じゃないんだけど」


ここは、相も変わらなずお馴染みの放課後の多目的ルームだ。

ようするに、オカルト研究部の部室。

そこに俺は後藤とつるんで、同じ席に座り込み、いつものように駄弁っていた。

今日はまだ、いつもうるさい衿間も長浜も来ておらず、残りの2人も不在だったため、教室には俺と後藤の2人だけだ。


勘違いしないでほしいんだが、俺は普段は真っ先に家へ帰る真面目な帰宅部のエースなんだ。

後藤たちのいる変人残念部には、気が向かなければ立ち寄らないし、学校にいる時間は短ければ短いほどいいと思っている。


ただ、今は…とにかく誰かにこの鬱憤をぶつけたくて仕方がなかったから、こうして後藤に全力でぶつけてるわけだ。


だってさぁ…ほんと信じられねぇ話なわけだよ。


「別に、どっかで一泊するくらい許してやるよ。いくら俺でもそんくらいは大目に見るさ。けど、事前に連絡くらいするもんだろ?そういうのはッ!」


「…はいはい。弟くんが無断で外泊して朝帰りが許せないんだっけ?別にいいじゃん。中3だろ?そういう時期なんだって」


後藤が呆れて言うので俺はバンッと机を叩いていた。


「実はそんなんじゃない!!」


「お前は実くんのお母さんか…いい加減弟離れしないとウザがられるよ」


後藤の野郎…なんだその「はいはいいつものやつね」みたいな返しは…!

俺は真剣に腹立ってんだよ!


「弟離れとか、そういう話じゃねぇんだよ。まず、連絡しないってのが、許せねぇんだ!朝方に電話してきて、『ゴメンちょい色々あってさ…』って!軽いんだよあいつは!こっちがどんだけ心配したと思って…!」


「けど、無事帰ってきたんだろ?事情もあったみたいだし」


後藤のフォローに俺はハッ!と忌々しげに鼻を鳴らした。


「事情?友達の家に遊びに行ってそのまま寝落ちだぞ!?事情もクソもあるか!ったく、ふざけてやがる…」


昨日、どういうわけか弟は家に帰って来なかった。俺と両親は昨晩はほぼ徹夜であちこちを探し回った。

まず弓道道場に行ったきりだったため、道場に電話したが、誰も出ず、仕方なくわざわざ道場にまで立ち寄ったが、中はもぬけの殻。真っ暗で誰もいなかった。


実の友人にも電話したが、どこにいるかはわからずじまいで、途方に暮れ、警察に捜索願を出そうかと家族で話し合っていたところにあの馬鹿弟は電話をかけてきたのだ。


いったい、昨日何回俺が呼び鈴を鳴らしたと思ってやがる…!


とにかく、その後帰宅した弟は親父のげんこつと母親の平手を受け、長時間説教を食らった。俺からも一発お見舞いしてやろうかと思ったが、さすがに可哀想になったのでやめておいたが。

事情を聞くと、ふざけたことに友達の家にお泊まりしたという。

昨日電話したが、お前はいないと言っていたと親父のもっともな言い分に弟は、家族に話していない友達の家にいたんだなどとふざけた言い訳をした。


まさか自分も一泊するとは思っていなかった反省してるごめんなさいとひたすら繰り返す弟に両親は諦めたように首を縦に振った。


とにかく次からはこんなことは二度とするなよ、と釘を刺して。


だが!


たとえ父、母が許しても兄である俺は許さない!


そんな思いで、俺は昨日は弟と一言も話さずに、こうして学校にきているわけだ。


後藤が再びため息を吐いた。


「そんな、たかだか無断外泊しただけじゃん。ご両親が許したんだから、兄貴の山手も許してあげなよ」


俺は冗談じゃないと大きく首を振った。


「絶対に許さない。こういうのを一度許すとつけあがるんだ。だいたいあいつに俺の知らない友人がいたことがまず怪しい…」


「…どんだけ自信満々なんだよ。え…?じゃあ山手は、実くんが嘘をついてるって思ってんの?」


「あぁ。絶対にあれは嘘だ。目が挙動不審だった。親父たちは騙せても俺は騙されねぇ」


「じゃあ何だっていうのさ」


俺はカッと目を釣り上げた。


「決まってんだろ!女だ!」


「お、女ぁ!?」


後藤がすっとんきょうな声を上げ、ギョッとした顔で俺を見る。俺は真面目な顔で頷いた。


「あぁ。そうだ。女だ。あいつ、間違いなく女と一緒だったんだ」


「ま、まさかぁ…だって実くん、まだ中学生だよ?」


「ああ見えて実は結構モテるんだよ…なぜだか!全くわからんがなぜだか!」


「へぇ…」


若干引き気味に後藤が頷く。俺は構わず続けた。


「たぶん扱いがうまいんだろうな…今まで何人に、『あっ実くんのお兄さんですかぁ?これ、実くんに渡してくれません?』とか知らない女子中学生に呼び止められたことか…っ」


「…………」


後藤から哀れみの視線を感じたが、なにも見てない振りをする。


「とにかくっ、あいつは女なら選り取り見取りなんだよ。確実に昨日は、女と一緒にいたはずだ…」


「なんでそう言い切れるのさ」


「弟の友人なら俺は全員把握している。あいつが俺に隠し事をするなんてよっぽどのことだ。つまり、女だ!」


「そんな無茶苦茶な…」


俺の話に、後藤がどうつっこもうとつぶやいた時、


ガララ…


無機質な音と共に、多目的ルームの扉が開いた。

2人してそちらに目をやると、珍しい人物が入ってきた。


「あれ…お前ら居たのか」


この気だるい声。

相変わらずだな、と俺は苦笑いをした。


「お久しぶりです。竪山先輩」


現れたのは、サボり癖のあるオカ研唯一の2年、竪山(かたやま) 龍牙(りゅうが)先輩だった。


いつもながら眠たげな目だ。


先輩は喋っても残念というわけではないが、がたいのいい素晴らしい筋肉を持っている癖に、運動部に入ることもなく、その筋肉を何にも使っていない、まさに宝の持ち腐れ状態を体現している残念な人だった。


運動部に誘われた数は星数のごとくだが、それらを全て「だるい」「めんどくさい」「やる気がない」の言葉でバッサリ切り捨てた運動部泣かせな男である。


顔もなかなかハンサムなのに、眠たげな目が全てをダメにしてしまっている。


この人が本気を出すことなんてあるのか?と思うほど竪山先輩はやる気が常に欠落した駄目人間だった。


先輩は俺たちを見て、一言言ってからのそりと教室のドアを閉める。


中に入り、いつものように寝るのだろう。

そう思って何気無く先輩の顔を見て、俺はギョッとしてしまった。


「先輩?どうしたんです?それ…」


「ん?」


俺たちの方を向いた先輩の顔を見て、後藤も気がついたらしく息を飲んだ。


「本当だ…先輩。ほっぺどうしたんです?」


先輩のほおは湿布が貼られており、見てわかるほど腫れ上がっていた。

男前が台無しだ。


先輩は、あぁ…と自分のほおをさすりながら、少し眉を吊り下げて困ったような顔で答えてくれた。


「ぶっ叩かれた」


「だ、誰にですか!?ひょっとして喧嘩ですか?」


だとしたら、とんだ勇者がいたもんだ。

見た目はかなり強そうな竪山先輩に喧嘩を吹っかけるなどとは。


俺の問いかけに先輩はいや、と首を振った。


「喧嘩じゃねぇよ。これは、なんつーか…俺の自業自得だから気にしてない」


お前らも気にすんな、と言ってから先輩はいつもの定位置に寝そべった。


「は、はァ…」


一応返事はしたが、聞こえてはいないだろう。なにせ、すでに寝て数秒後には寝息が聞こえて来たのだから。


「竪山先輩でも、自業自得とかいうことあるんだな…」


こそっと告げると後藤がそりゃあるだろ、と微かに笑った。


「…にしても、気にすんななんて言われても気になるもんは仕方ないよな」


「結構腫れてたけど、先輩痛くないのかな」


俺は寝そべる先輩を見ながら、眉を寄せる。


「あの竪山先輩が、一発喰らうなんてよっぽど強い奴だろうな。先輩見ためだけじゃなくて実際めちゃくちゃ強いって噂だし」


「そうなのか?」


意外そうな顔をする後藤にあぁ、と頷く。


「絡んで来たヤンキーを数人病院送りにしたって聞いたぜ」


「へえーそんな暴力を振るう人には見えないけどなぁ」


「人は見かけによらないって…この場合、合ってんのか間違ってんのかわかんねぇな」


なんにしても関わらないに越したことはない。


俺は、そう自分自身に告げた。


けれど、後に、俺はこの竪山先輩と大きく関わりを持つことになるのだが、今はまだ知る由もなかった。

サブタイ、なにかが、始まる…なにが始まるんでしょう。作者にもわかりません。

一応流れはできていますが、全て書けるかはわかりません。

今回みたいにモチベーションが上がれば早めに上がる…かな?


次回へ続く!


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