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Q.変人と常識人の違いを述べよ. A.奇声をあげない

一気にキャラクターが増えてしまいました。

しかもみんなキャラ濃いよ…まだ全員の個性を掴めてません。

ちなみに、一部のキャラはシリーズ初めに出てきた人たちです。

染井はいい先生だろう。


横暴だし、不良教師だし、おっさんだけど、生徒目線で会話してくれるし、意外と生徒のことをよく見ている。


口は悪いが、優しい…のだろう。


たとえば、評価点をつける前に一度出したノート整理の再提出を許すとかな…!


「あぁ、確かに優しいよ…クッソめんどくさいけど!」


廊下をずかずか歩きながら、独り言をつぶやく。

結局俺は帰ることを諦めてノートを片手に一階への階段に近づいていた。


俺の通う高校は一年生の教室は二階、二年が三階で三年は四階になっている。クラスは全部で四クラスあり、全学年で300人以上はいる、それなりに大きな学校だ。

一階は職員室があり、その他に授業で使う教室がちらほらある。放課後は文科系の部活動が部室として利用している。

その中で、一階の奥にある多目的ルームが後藤のいる部活、オカルト研究部だ。

階段を降りながら足がどんどん重くなるのを感じた。

俺の心があそこへ行くことを全力で拒否している。それに比例するように全体的に足に重石を繋がれたように重くなっていく感じだ。


あぁ…行きたくねぇ…


そうは言っても、やらねばならないことは避けては通れない。

ここで忘れてたで済ませたら、あのおっさんと後藤にどんな報復をされるかわからないしな。


俺は自分を奮い立たせてようやく多目的ルームの扉の前にまでやってきた。


一度深呼吸してから、目の前のごくごく普通の扉を見る。


ここに来るのはかれこれ四回目になる。

後藤について行って何度か部員たちにも会ったが、彼らはまさに"残念"な部類の連中だった。

普通にクラスにいる時には、それなりに常識人に見えるが、この部屋に入った途端に奴らは本性を露わにするのだ。


できれば、本性を隠したままの状態だけ知っていたかった。


…なんて、考えても遅いか。


頭でいろいろ考えても仕方が無いと振り切り、ようやく扉を横に開けて中へと入る。


「あー、お邪魔しま…」


「っだーーー!!この変態エリマキトカゲ!

頭硬すぎなのよ!今時妖怪なんて流行んないのよバーカ!」


「流行る流行らないで議論してたのか間抜け。それから何度言わせる気だ。俺の名は衿真(えりま) 道哉(ゆきや)だ。いい加減覚えろバカ女。せめて変態は外せ」


部屋に入ったとたん左右からまるで子供の喧嘩のような言い争いを聞かされてしばし硬直する。


呆然としている俺に前方から明るい見知った声がかかった。


「あれ?山手じゃないか!来てくれたのか」


後藤がにこにこと笑いながら近づいて来るのが見えた。ハッとする俺に、最初に叫んでいた右側の女生徒が俺の存在に気がついたらしい。

怒鳴るのをやめて俺の前にぴょこぴょことやってきた。


「ああっ山ちゃん!久しぶり〜!最近、全然見かけなかったから心配したよ〜」


輝く笑顔が眩しい。

幼い顔つきをした小柄な少女は俺の手をひょいとつかんで振り回す。喜びの表現も子供並みだ。

俺はされるがままに揺さぶられながら、苦笑した。


「久しぶり、長浜。相変わらずだなお前ら」


俺は笑いながら左側を見る。

眉間にしわを寄せたツンツン頭の男子生徒が腕組みをしてそこに立っている。

俺を見て少しだけ表情を和らげたが、近づこうとはしなかった。

俺は、長浜に腕を引っ張られながら、そいつに声をかけた。


「よう。衿真。お前も久々だな」


「……山手。そいつに近づかない方がいい。馬鹿が移る」


衿真がそう言った瞬間、じゃれていた長浜がキッと衿真を睨みつけた。


「はあ?なに言ってんの?意味わかんないんだけど。てか、あんたこそ山ちゃんに近づかないでよね。妖怪馬鹿が移るからっ」


「俺は一歩も近づいてないだろうが。見てわかんねぇのかよ馬鹿」


俺を挟んでバチバチと火の粉を燃やすこいつらの言い合いもすでに何回見たことか。

俺は、近くで苦笑しながら成り行きを見守っていた後藤に似たような苦笑いをした。


右にいるチワワのようなチビは、長浜(ながはま) 佳代(かよ)。俺や後藤と同じクラスの一年生だ。背が低いのがコンプレックスだとよく嘆いていたが、女子として特に気にする必要もないのではないかと俺が指摘してから変に懐かれている。

童顔で幼児体型なので、一部の男子には人気だが、俺は年上趣味なためあまり食指は動かない。

まあ、きいきいとたまにうるさいが、基本的には常識人だ。


「うっさい!黙れ変態!あんたなんかエクソシストに灰になるまで燃え尽くされろっ!この悪魔!」


……洋風のオカルトマニアでなければ。


隣の暴言を吐かれた腕組みの彼は、衿真(えりま) 道哉(ゆきや)

170㎝と背が高く、長浜と並ぶとその差が歴然で見ている分には微笑ましい気分になってくる。

男の割に細身だが、ツンツン頭がよくに合う体育会系のイケメンで、それなりに運動神経はいいらしい。

衿真とはクラスが違うため、普段の様子はよく知らないが、あまり騒ぎを起こすタイプではないだろう。


「悪魔とははるか太古の昔に人間が作り上げた空想上の生き物だ。そんなことより、おいチビ…さっき妖怪を馬鹿にしただろ。頭押さえ込んで身長さらに縮めるぞ」


……妖怪を馬鹿にしなければ。


衿真は日本の妖怪にお熱な妖怪馬鹿で、妖怪検定なるものも一級を取得済みというとんでもないやつだ。ちなみにそれ以外のオカルトはどうでもいいらしい。


そして長浜は、悪魔、エクソシスト、吸血鬼などの洋風のオカルトマニアで、日本のオカルトには全く興味がないそうだ。


つまりこの2人が仲良く部活で笑い合うことは天地がひっくり返ってもあり得ないというわけだ。


それは、出会った当初から変わらず、俺はこの2人が喧嘩している姿以外を見たことがない。


喧嘩をヒートアップさせる2人からなんとか抜け出し、後藤の元へ向かう。


「あいつら、いつも通りだな」


「うん。いつも通り、ケンカップルだよ」


後藤がそう言うと背後で金切り声が上がった。


「部長。やめて下さい。こいつとカップルなんて冗談じゃない」


「いくらゴトーちゃんでもキレるからね…」



2人してこちらを睨みつける姿は、まるで阿修羅のようだ。

息ピッタリじゃないかと思ったが、これ以上面倒はごめんだったため、なにも言わないでおいた。

後藤は笑いながら全然誠意のない謝り方で謝ると、俺にあちらに行こうと教室の隅を指差した。

俺は素直に頷き、再び喧嘩を始めた凸凹コンビを尻目に後藤について行った。


教室を見渡すとあの2人以外には、後藤しかいない。

俺は首をかしげた。


「先輩はどうした?」


「さっきまでいたんだけど、急用が出来たとかで帰ってったよ」


逃げたな。まあ無理もない。あいつらには挟まれりゃ逃げたくもなるわな。


先輩に同情の念を送りながら俺は近くのイスに腰掛けた。

後藤も同じように、俺の腰掛けた前のイスに腰掛けながら困ったように眉を寄せた。


「けど、まだ部員全員揃ってなかったから紹介し終わってないんだよね」


「そういえばそうだな。残りの2人はどうしたんだ?1人はサボり癖があるからいなくても納得だが…」


「あぁ。佐々木さんなら今日は用事があるから出られないって連絡をもらってるよ」


オカルト研究部のメンバーは全部で5人だ。今は先輩が入って6人となったが、基本的には、一年生4名、二年生1名で構成されていた。先輩が入ることでようやく三年生が1名になったというわけだが。

一年生の中で、もう1人、俺と同じクラスのやつがこの部活に所属している。

それが、過去に俺を心底震え上がらせた女子生徒、佐々木さんだ。

彼女については、正直俺には語れない。なんというか、世の中には知らなくていいことも歴然としてあるのだと思い知らされた、というべきか。

普段が大人しかったために、まだあのギャップから立ち直れてないんだ。


俺は渋い顔のまま、ふうんと曖昧に頷いた。

あの子の正体(?)を知っているのは今のところ俺だけなので、後藤は佐々木さんへの俺の態度にいつも不審がっているが、後藤にそのことを言う気はない。

佐々木さんに口止めされたからじゃないが、たとえ常識は逸していようとも、後藤への彼女の恋心は本物なので、そこは気持ちを汲んでやろうと思ったからだ。

関わりたくなかったという気持ちもあるが。


俺はで?と後藤にもう1人の部員について聞いた。

まあ聞かなくとも答えはわかっていたけれど。


堅山(かたやま)先輩なら今日も来てないよ。いつ来るかくらい教えておいて欲しいよ」


はぁ、と珍しく後藤がため息を吐く。

後藤にこんな疲れた表情をさせられる人なんて、ごく僅かだろう。

堅山(かたやま) 龍牙(りゅうが)はそれができる1人だ。

この部活の唯一の二年生で、サボり癖のある適当人間。


堅山先輩は、とにかくひょうひょうとしていてつかみ所のない謎だらけの存在だった。


二度会ったことがあるが、別にオカルトマニアには見えなかったし、その時も部活に参加するというよりも寝にきている感じだった。

いつもの定位置である窓際の机をくっつけてそこに寝そべったまま爆睡していた男だ。


なんのためにオカルト研究部に入ったのか実に謎だ。


寝たいなら家に帰ればいいものを。


俺が前にそう言った時も、寝そべった状態で堅山先輩は「気にすんな。ただの暇つぶしだから」とあくびをしながら言っていた。

それから何度かたまに他愛ない会話をしたが、いつも気のない返事ばかりで結局なんのためにオカルト研究部にいるのかわからずじまいだった。

ただ、面倒見は良いようで、わかりにくいが収集がつかなくなった衿真と長浜の喧嘩の仲裁に回ってくれることもあったので、悪い人ではないと思う。


「お前も大変だな。問題児ばっかだし、堅山先輩なんて、なんのためにいるのかも謎だし」


後藤に慰めにもならない言葉をかけると、苦笑いが返ってきた。


「部員不足だったから、いないよりはマシだよ。先輩もたまーになら話し合いに参加してくれるしさ」


「はんば傍観者として、だろ」


呆れて突っ込むと、また後藤が曖昧に笑う。


「参加してくれるだけマシだよ」


げっそりしてんなぁ。


いつも振り回されている身としては、その気持ちは十分にわかるが、振り回していた本人がこう、疲れ果てているのを見るのは複雑な心境になる。


頬杖をついて目を細めた。

横ではまだ衿真と長浜の罵り合いが勃発中だ。


「ま、あの人になんか期待する方が間違いか。常にやる気がない人だし」


俺は言いながら、窓の外を眺めた。

下校途中の生徒が何人かちらほらと帰っているのが見えた。


「で、山手はなんでここにきたわけ?」


「あ。忘れるとこだった。ほれ」


ノートを後藤の前に差し出す。後藤は目をぱちくりさせて目の前のノートを見た。


「なにこれ。俺の数学のノート?」


「やり直しだってさ。染井が」


「マ……マジで?」


唖然とする後藤に俺はげんなりした顔で頷く。



「マジ」



後藤がうな垂れるのを見ながら思う。


今日も今日とて、オカルト研究部は騒がしく、平和だ。



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