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前田荘777号室  作者: 吉岡 澪
前田荘に忍び寄る影
77/100

ランチを巡る仁義(スカン)無き戦い 丑

 桐山荘をなんとか退けた前田荘に平和が訪れ、住人たちは再び穏やかな時間へとその身を委ねることとなった。

 

 一人増えた朝食の席。三木はオムレツを頬張る。

「いやぁ。大家さんの作るご飯は美味しいっすね!」

「そうかいそうかい。作った甲斐があったよ」


 普段はチームの寮で生活している三木だがしばらくこちらへ滞在することに。


 彼は先日の戦いで気張ったホミカに興味を示したようだ。

「そういや、ホミカちゃんは東凰大学なんだって? すごいじゃん!」

「それほどでも……」

 アリテレ界でも有数のイケメンで知られる三木に話しかけられると緊張してしまう。


「何学部なん?」

「理学部です。まだ教養の段階ですけどね」


 ほぉ、と感心する文系出身の三木。

「すげぇな。東凰の理って高いじゃん」


 足名稚もホミカを褒め称える。

「まったくだよ。ホミカちゃん、大学出たらうちの会社に来ないか? 俺が口きいてやるよ」

 就職も安泰とはずるすぎる。


 そんなホミカに危機感を抱いた者が一人。というか三木にちやほやされているのがひっかかるのだろう。

「なあ三木。今度は私が作ってやるからな」

 ハカナの一言に固まる食卓。松風がひっと声を漏らす。


 しかしそんな空気を緩和する者もいる。

「ハカナさンはお皿を洗っててクださいヨ」

 三木に自分を売り込もうとするダークマター製造機を食い止めるマー。いい仕事だ。


(今の前田荘はバランスがいいな)

 役者が揃ったおかげで斎藤も一安心だ。


 あっという間に朝食を食べ終え、ホミカは大学へ。松風と足名稚も仕事に出かける。


「それではいってきます」


「いってらっしゃい。夕方から雨らしいから傘持っていったほうがいいよ」

 斎藤の天気予報は必ず当たる。三人はいそいそと傘を用意した。


 足名稚は車、松風はバイク、ホミカは徒歩で前田荘を出発した。


「三木。私をビーチに連れてってくれないか!」

「行かねぇよ! 俺今日はぐだぐだするから!」 

 後ろで何か聞こえた気がした。


 本来ならツッコむのだが今回はスルー。実はホミカには今日果たすべきミッションがあるのだ。


(今日こそジンギスカンを食べる!)

 以前食べられなかったローリング学の教授お薦めのジンギスカン弁当だ。


 今日は昼前の講義がない。そのため前回のような悔しい思いをする必要がないということだ。ローリング学の教授が絶賛するジンギスカンを是非とも賞味したい。そのためには前売りの券を買っておく必要があるのだ。


「待ってて、私のジンギスカン!」

 駅へ足取り軽く歩き出すホミカ。


「羊ノ肉に期待しすギじゃなイですかネ……」 

 当然のように彼女を尾行するマー。販路拡大のチャンスをまだまだ諦めていないようだ。

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