敵と書いてエネミーと読む 桐山荘副将
「よく勝ったな!」
「まあこれくらい楽勝楽勝」
ハカナに労われドヤ顔の青野。普段は微妙でも料理対決の今回ばかりはその白衣が似つかわしい。
「青野さんどうして卵アレルギーが分かったんですか?」
ホミカとしてはどうしてもそれが気になる。
「ああ、昔教えてくれた人がいたんだ」
小さい頃白衣の人から教わったという。世の中には見ただけで他人アレルギーが分かる人がいるらしい。
「盛り上がってるとこ悪いけど副将戦に入っていいかい?」
桐山が次の選手を連れてきた。今度は見るからに体育会系だ。
「次は何勝負ですか?」
前田荘を代表してホミカが尋ねる。
「副将戦は腕相撲をやってもらう。シンプルに勝負をつけてもらうよ」
途端にざわつく前田荘。
「足名稚さン、いっテちゃちャっとヤっつケてきてクだサいヨ」
足名稚にふるマー。一度戦った者の余裕だ。
「あいたた。俺今筋痛めてるからさ……青水ちゃん、まかせた!」
松風にふる足名稚。演技が白々しい。
「ふえっ? んあっ、ほみほみいってみよう!」
ホミカにふる松風。彼女はおそらく応援に徹したいのだろう。
「わかりました。私がいきます!」
その真面目さゆえに、覚悟を決め戦いに赴こうとするホミカをハカナが止める。
「まあ待て。ここは武闘派の私がいく。ここまで好き勝手やられてるが、私がこの試合で敵の息の根を止めてやる」
「息の根はとめないで!?」
ここまでの試合が相手の思い通りに進んでいることをハカナもなんとなく理解しているようだ。
「よし。揃ったね。じゃあ早速この机の上で対決を始めるよ」
お互い手を握り肘を机につく。腕に力を込めすぎたのか、ハカナは顔が野ざらしになっている選挙ポスターのように真っ青だ。
ここでも審判を務める本城が厳かに二人の拳を抑える。小学生などがよくやっているあのルールに準拠して行われるようだ。
「あれですよ、ハカナさんなら楽勝ですよね!」
「……」
斎藤は何も言わない。
「レディ、ゴー!」
ストン。
勝負はあっという間だった。ほぼ抵抗することなく片方の手の甲が机についた。まさに瞬殺。
「桐山荘チームの勝ち!」
なんと、なんと、ハカナが負けてしまった。そのまま崩れ落ちるハカナ。立ち上がれないようだ。
「ハカナさん! 大丈夫ですか?」
一言も発しないハカナ。頼まなくてもしゃべるタイプなのにどうしたのだろうか。
「お前! ハカナに何をした!」
ハカナを負かした男性に迫る青野。彼が怒りを見せるのは珍しいことなので稀少価値がある。
「何って? 何もしてませんよ」
「ふざけんな!」
あくまでもとぼけるようだが、ホミカにはなんとなく分かった。
激昂する青野をちょいと除けるホミカ。
「すみません。手を見せてもらっていいですか?」
「えっ」
無理矢理彼の手を掴んでパーにさせる。
「おいおい……」
その手のひらには手軽さでお馴染みのタトゥーシールが貼られていた。しかもハカナの唯一かつ最大の弱点である黒光りする甲虫。これは手を握るだけでも苦痛だろう。
「なるほど、そうきたか」
ハカナの選出も読まれていたようだ。彼女に対するピンポイント対策なので青野もこれ以上何も言えない。
「これはしょうがない。相手の作戦が巧かっただけだな」
ぐったりとしてしまったハカナに肩を貸す青野。
逆王手をかけられた前田荘。次の試合でこの対決の勝者が決まることとなる。




