敵と書いてエネミーと読む 桐山荘確執
入ってきたのは様々な年代の男女。そのうち一人が斎藤のもとへ進み出る。彼と歳が近そうな女性で、スマイルと書かれたシャツを着ている。
客観的にみてダサい。
「あーもう、来るって言っといたじゃないの。何の歓迎もないわけ?」
なんだか図々しい。ホミカが抱いた第一印象である。
「ああ、わざわざ来てもらって悪いね」
あまりそうは思ってなさそうなトーンの斎藤。迷惑な相手なのだろう。
「大家さん、この方は?」
「桐山荘のだっさい服着た大家の桐山さんだ。二号館を建てるとか寝言をおっしゃっていて、私たちにここを出ていけと昔から言ってくる迷惑かつ迷惑なお人。外で待ってるのは彼女の愉快な仲間たちさね」
なんと、迷惑の二乗。
本人を前にしてコソコソと話している二人にカッカきているであろう桐山。ホミカに絡み出した。
「ん? あんたも前田荘のもんかい?」
「はい。剣といいます」
「変わった名前だねえ」
名前じゃなくて名字だと言おうかと思ったがホミカはやめておいた。世間を渡る術を学んでいる。
「金なら出すから早く立ち退いておくれよ。いつまで粘るつもりだい?」
どうやら前田荘の立地は彼女にとって魅力なようだ。駅から多少離れるが、生活においてなかなか便利なうえに何より土地がいい。ホミカが前田荘を選んだのは家賃がすべてではないのだ。
「私たちにも生活がある。そっちの勝手な都合によって出ていくつもりはない」
あくまでも応じる気はない斎藤。ちょっとかっこいい。
「そうかいそうかい。副業に励む場所が必要ってわけかい。まあいい。今日は牽制のために来ただけ。明日からは実力行使に出るからそのつもりで」
桐山は前田荘の門を蹴飛ばし、待たせていた住人を引き連れ去っていった。
「大家さん。どうするんですか? 実力行使らしいですけど」
「毎回こんな感じだから気にしない、気にしない」
「それにして桐山さん、服がちょっとダサいですね」
ホミカは時々場の流れに関係ないことを言う。
華麗にスルーする斎藤。
「ホミカちゃん、うちも作戦会議だ。皆を呼んできてもらえるかな?」
前田荘一丸となる必要がありそうだ。




