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前田荘777号室  作者: 吉岡 澪
前田荘に忍び寄る影
63/100

ハカナの黄金伝説~with剣 その頃の巻

 ところかわって、前田荘。こちらもちょうど夕食を終えたところだ。どうやらお楽しみがあるらしい。


「今日は、デザートにパンナコッタを作ってみたんだ。よかったら食べてな」


 斎藤の言葉に一同は歓喜する。デビルコックのハカナがいないため、食卓の未来は当分明るいのだ。青野に至ってはライスを三杯おかわりしたくらい。


「デザートか。よっ、待ってました!」

 足名稚が感嘆の声をあげる。アルコールが入っているせいか赤ら顔だ。


 現れたパンナコッタはまさにプロの味。とろけるような味わいだ。


「美味シい! こレは本場のパティシエも一糸纏ワぬ感じデ逃げ出しマすよ」


「服は着ていてほしいけどね」


 マーにすかさずツッコむ松風。ホミカもいないため、ツッコミ担当の穴を補う必要があるのだ。


「マーさんの言うとおり。大家さんすごいですね」

 ちゃっかり夕飯の席に紛れ込んでいる店主。いつの間にか人数が増えていても気にしないのが前田荘だ。


「もっと食べたい人は冷蔵庫の中に残りが入ってるからね」


 パーフェクトな大家、斎藤。抜かりがない。



 デザートも終え、松風とマーは風呂。青野は部屋で論文を書き、足名稚は原稿の整理。居間には斎藤と店主だけになった。


「そういえば、ハカナさんと剣さんは今日はどちらへ?」


「二人は太平洋沖の無人島へキャンプに行ったんだ。ハカナさんがホミカちゃんを無理矢理連れ出したんだけどな」


「そうですか。どのあたりなんです?」


 斎藤はチラシの裏に海図を描いて説明してやる。海軍出身なのではと疑うほど上手い。


「ここ。矢形島(やかたじま)というらしい」


「こんな辺境……大丈夫でしょうか……?」

 冷や汗を垂らす店主。その反応が普通だ。


「大丈夫さ。ハカナさんはロビンソンよりずっと優秀なサバイバーだ。何があってもモーマンタイさね」


 なぜか、斎藤はハカナに全幅の信頼を寄せているらしい。ゴキブリ事件を解決した功績はそれほどまでに大きいのだろうか。


「いやいや、私が心配なのは剣さんです。あの方はごく普通の大学生じゃないですか」


「大丈夫だ。実はハカナさん、矢形島には縁があってな。島で迷うことはまずない。よってホミカちゃんも大丈夫」


 店主はほっとした表情を見せた。


 ただ、斎藤も店主もあえて口にしなかったことがある。言うまでもないが、料理…… 

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