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前田荘777号室  作者: 吉岡 澪
前田荘に忍び寄る影
60/100

ハカナの黄金伝説~with剣 歳月と鬼スミスの巻

 周りを見渡せば海、海、そしてカモメ。


 本当に来てしまった。人の住んでいる気配が全く感じられないほんまもんの無人島だ。

 中央にほどほどの高さの山、細く流れる川に森。年末の特番のロケでも使われていそうだ。


「嘘でしょ……」


 いくら瀬戸内の出身といえど、こんな場所は初めて。リュック一つで来てしまったことをホミカは後悔した。もちろんもう遅い。


「いやー、ハカナくん。この島を紹介してくれてサンキューねぃ!」


 スミスはずっとこのノリでいくらしい。


 グロッキー状態のホミカにはハカナとスミスの会話もよく分からない。

 しかし、この島を推薦したのはハカナらしい。


 

 そして、スミスが全員を集めてオリエンテーション。日本語がとてもうまい。


「ここからは自由行動。好きな場所でキャンプを設営してねぃ。明後日の正午、ここに集合! まぁ、その前に戻ってくる人も多いかと思うけども」


 なんとも分かりやすい説明である。


 やがて、参加者たちは思い思いの方向へ散って行った。


「よっし、私たちも行くか」


「三日間、三日間耐えるんだ私……」


 ここまでくるとホミカも気の毒だ。スミスの発言について深く考える余裕もない。


 歩きながら尋ねる。

「それで、ハカナさんはどうしてこの島のことを知ってるんです? 無人島なのに勝手にキャンプしていいんですか?」


「あぁ、それなら大丈夫。権利関係の問題はない」


 ハカナはさりげなく前者への回答を避けた。何か真意があるのだろうか。


「とにかく場所を見つけて居住スペースを用意しよう」





 移動はさほど苦ではなかった。


 土地勘のあるハカナのおかげで森を抜けた先にある、おあつらえむきの場所を見つけることができたのだ。


「ここなら川も近いし、見晴らしもいい。なかなかだな」


「そうですね」


 ホミカとしては帰りたい一心だが、ここまできたら仕方ない。


「あとは、早くスミス教官に見つけてもらわないとな。今年もビシバシ鍛えてもらわないと」


「え?」

 やっと。やっと気づいたホミカ。


「ちょっと待ってください。ただの無人島キャンプではないんですか?」


「敵が上陸してきたという設定のちゃんとした演習だ」


「それはつまり分かりやすく言うと?」


「ズバリスミス教官との鬼ごっこだ。教官にタッチされたらアウト。捕まると軍隊式トレーニングを体験させてくれる」


 化け物じみたハカナは毎年そのトレーニングを体験するためにわざとスミスに捕まっているらしい。


「とにかく、もっと分かりにくいところに移動しま」


「うわああああ!」


 ホミカが言い終わる前に遠くからかすかに聞こえる悲鳴。参加者の誰かのようだ。


「さっそく脱落者が出たか……今年も楽しめそうだ」


 ハカナの前田荘では見せない表情にびびるホミカ。無事に帰れるだろうか。

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