アオプロ BATTLE IN MAEDA 編
最初の戦闘がGとは……。今回は長いです。ご容赦。
現れた巨大Gは撒かれたフェロモンの辺りをうろうろしている。見た目以上に動きが速く非常にグロテスクである。
「青野さん、ここからどうするんですか?」
青野の額に冷や汗。
「いや、あの、外に出せばなんとかなるんじゃないかなぁと思って……」
「ノープランかよ! 現代っ子の象徴か!?」
ホミカが吠えた。斎藤は自分の予想斜め上をいくホミカのツッコミ属性に不謹心ながらも感心してしまった。
「青野さン。なんとカしてくださいよ。しナいなら私たちで貴方をなんトかしますよ?」
口許しか見えないが、マーの表情が恐ろしい。
「分かった分かった。実はプランが一つあるんだ」
いや、あるなら早く言ってよ。多分みんなそう思った。
「して、そのプランとは?」
安全ヘルメットでちゃっかり身を守りつつ斎藤が尋ねる。
「総攻撃をかけて弱らせる。それしかありません」
まさか、アニメや漫画じゃないのにそんなことが出来るのだろうか。巨大なアレに立ち向かうのは女性にはキツイはずだ。
「よっし、イっちょやりまスか!」
「苦肉の策すぎんだろ……でもそれしかないか」
足名稚とマーはなんと納得したようだ。まぁ、確かにGを野放しにしていてはまずい。なんといってもあのサイズだ。ご近所に飛来したら、また前田荘の悪名が高くなる。
「Gの体は硬い羽で覆われている。致命傷を負わせるのはまず無理だ。だからこいつを使う」
青野はポケットから親指くらいの大きさの青い小瓶を出して皆へ見せる。
「それは何ですかー?」
松風はペースを取り戻したようだ。
「これは収縮薬だ。効果は膨張薬の反対。これをあいつの体にぶちこむ。羽で防がれてしまうから狙うはどてっ腹だ。ちなみにこいつのストックはこの一本だけだ」
「いや、そっちをもっと作っておきましょうよ!」
ホミカも状況がのみこめたようだ。
「よし分かった。皆、なんとかGを退治してやろう!」
いや、だからあっさり了解しすぎでしょうというホミカのツッコミを華麗にスルーした斎藤の一声に、残りの面々が雄叫びをあげる。ホミカは前田荘は変人の巣窟であるということを改めて実感した。
ハカナをベンチに寝かせ、全員戦闘準備をして持ち場に。動きがテキパキとしているところから察するに、このような事件が頻繁に起きているのではないだろうか。ホミカの冷や汗は止まらない。
「いくぞ!」
その声を合図に、気絶したハカナを除いた全員がフェロモンを嗅ぎまわっているGに襲いかかる。
まずは足名稚がカバンからゴルフボールを出す。それをオーバースローで投げる。人間相手なら相当効くはずなのだが……。
「ふんぬっ」
ボールはGの羽に当たり、カーンと乾いた音をたて跳ね返った。これではダメージにならないようだ。Gは痛みを感じていないらしく、特に足名稚を相手にしない。
「次は私!」
腕組みしつつ松風がGに向かって行った。どうするつもりだろう? というよりこの騒動はこれからどうなるのだろう?
ゴルフクラブを構えながらホミカはいまだにこれから読もうと思っている漫画のことを考えていた。




