アオプロ 膨張薬の暴走編
最初の事件です。キャラ設定もよろしくどうぞ。
「ただいま戻りましたー」
バスに電車に徒歩二十五分。全ての講義を終えたホミカは前田荘へ帰ってきた。
こうして改めて見るとものごっつい豪邸である。店主の話によると、一昨年リフォームしたらしい。なるほど新しく見えるわけだ。
時刻は三時半。先ほどは小学生も見かけたし、だいぶ早い帰宅である。はやく部屋でゴロゴロしつつ『シダースの冒険』の最新巻を読みたい。そう思いドアノブに手をかけた瞬間、
「うわっ、ほみほみ開けちゃダメーっ!」
松風が裏庭から走ってきた。いつも異様なまでにポジティブな彼女にしては珍しく本気で焦っているようだ。
見渡すと斎藤以下住人全員が外に出てきている。ハカナの顔が、貼られてからしばらく雨風に晒された選挙ポスターのように青くなっているのが気になるところ。
「えっと、これは何があったんですか?」
全員顔を見合わせる。確実に何かあったようだ。
「俺から説明しよう」
青野が前へ。なんだか胡散臭い。
「実は最近膨張薬の開発に成功したんだ」
「ぼ、ボウチョウヤク?」
「そう。詳しい原理は面倒だから省くが、要は血を吸ったダニみたいな現象が起こる」
「巨大化じゃないですか!」
この世界はファンタジーじゃないのにそんなことが罷り通るのだろうか。甚だ疑問を感じるホミカ。
ここで青野は肩をすくめる。やれやれのポーズ。少し腹が立ったがホミカは聞き役に徹した。
「その最終テストをしようと思ったんだが、廊下にフラスコを置いといてちょっと目を離してたら効いてしまったんだ」
「えっ?」
「テストではハネケイソウを使うはずだったんだが……。違う生物がフラスコの中へ落ちて、薬を飲み干してしまってな。今そいつがちょっと引くくらい大きくなって前田荘のなかで暴れてるんだ」
「……」
話が飛躍しすぎてついていけない。それでも一つだけわかる。
「それっぽく語ってますけどつまり原因は青野さんじゃないですか!」
「いやぁ、それほどでも」
誉めてませんよというホミカの叫びはあまり響かなかった。




