その夜としか言い様がない
また日にちが空いてしまいました。すいません。
入学式の夜。斎藤が音頭をとる。
「それでは、ホミカちゃんの入学を祝って乾杯!」
呼称はホミカちゃんに安定したようである。
「いえーい! おめでとー!」
仕事を終え、帰宅した松風はハイテンション。というよりここの住人たちはどんちゃん騒ぎが好きなようだ。ホミカからすると完全に異世界な前田荘。
「それで、ホミカちゃんは何学部に入るんだい?」
足名稚が尋ねる。右手にビール、左手には砂肝を掴んだ箸を装備している。
「理学部です。そっちの分野に興味がありまして」
「ほう、理学部か!」
先程までハカナとブロッコリーの奪い合いをしていた青野が話に混ざってきた。教授をしているだけあって興味があるのだろう。
「理学部はいいぞ。色んな研究ができて、興味関心の方向へ一直線だ!」
「そ、そうですか……」
夏の日のマンホールのように熱い青野。たまにはこんなこともあるようだ。
「そうだ、俺からも一つ連絡」
唐突に足名稚。
「何ですか? 不幸の手紙とかですか?」
「嫌な想像をするな……違う違う。ホミカちゃんが楽しみにしていたであろう、東州斎先生の『トンマのトン吉くん』の新作単行本が出たんだ」
「なんですと!」
とても楽しみにしていた逸品だけに興奮も並みではない。
斎藤はホミカのテンションはいまいち分からないなぁと思ったが、黙っていた。
「ソこで私の出番でスね!」
押入れからマーが現れた。ずっと隠れていたようだ。
「こレは私達前田荘一同からノ入学祝です。お受取り下サい!」
前田荘一同よりと書かれたでっかい紙袋を渡されたホミカ。言われるままに開けてみると……。
「『トンマのトン吉くん』の新作! それに『シダースの冒険』の作画集まで! 他のもある!」
ファン垂涎のレア物である。しかも……。
「東州斎先生のサイン付きじゃないですか!」
感激するホミカに足名稚は最高のどや顔を返す。
「本当にいいんですか?」
「えェ。でもできれバそのニットとこウかぐふっ」
ハカナの突きでマーはノックアウト。
ホミカにとっては最高の一日となった。




