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前田荘777号室  作者: 吉岡 澪
トラトラトライ
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30/100

その夜としか言い様がない

また日にちが空いてしまいました。すいません。

 入学式の夜。斎藤が音頭をとる。

「それでは、ホミカちゃんの入学を祝って乾杯!」

 呼称はホミカちゃんに安定したようである。


「いえーい! おめでとー!」

 仕事を終え、帰宅した松風はハイテンション。というよりここの住人たちはどんちゃん騒ぎが好きなようだ。ホミカからすると完全に異世界な前田荘。


「それで、ホミカちゃんは何学部に入るんだい?」

 足名稚が尋ねる。右手にビール、左手には砂肝を掴んだ箸を装備している。

「理学部です。そっちの分野に興味がありまして」


「ほう、理学部か!」

 先程までハカナとブロッコリーの奪い合いをしていた青野が話に混ざってきた。教授をしているだけあって興味があるのだろう。


「理学部はいいぞ。色んな研究ができて、興味関心の方向へ一直線だ!」

「そ、そうですか……」

 夏の日のマンホールのように熱い青野。たまにはこんなこともあるようだ。


「そうだ、俺からも一つ連絡」

 唐突に足名稚。

「何ですか? 不幸の手紙とかですか?」


「嫌な想像をするな……違う違う。ホミカちゃんが楽しみにしていたであろう、東州斎先生の『トンマのトン吉くん』の新作単行本が出たんだ」


「なんですと!」


 とても楽しみにしていた逸品だけに興奮も並みではない。

 

 斎藤はホミカのテンションはいまいち分からないなぁと思ったが、黙っていた。


「ソこで私の出番でスね!」

 押入れからマーが現れた。ずっと隠れていたようだ。


「こレは私達前田荘一同からノ入学祝です。お受取り下サい!」

 前田荘一同よりと書かれたでっかい紙袋を渡されたホミカ。言われるままに開けてみると……。


「『トンマのトン吉くん』の新作! それに『シダースの冒険』の作画集まで! 他のもある!」

 ファン垂涎のレア物である。しかも……。

「東州斎先生のサイン付きじゃないですか!」

 

 感激するホミカに足名稚は最高のどや顔を返す。

「本当にいいんですか?」

「えェ。でもできれバそのニットとこウかぐふっ」


 ハカナの突きでマーはノックアウト。


 ホミカにとっては最高の一日となった。








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