キラキラ 2
「この子は、私の友達なの。ひどい、全然寂しくないよ。こっちはなんでもあって楽しいもん」
電話では強がってそう言っていたが、実際は違うのだろう。家に帰ってから彼女はよくため息をついていた。
「学校になじめない。帰りたいなあ」
そうもらしたこともある。
彼女は大学進学のために故郷から離れて一人で暮らしている。
毎日のように地元に電話をする彼女は本当は寂しいのだろう。ため息の数は日が経つにつれ増していった。
私に話しかける言葉も新しいことを発見したり体験したりと楽しそうだった内容から、だんだん「緑が少ない」「列に横入りされた」と嘆くような内容に変わっていった。
彼女が一度だけ泣いたことがあった。
ソファーに座ってぼんやりテレビを見ていた彼女は脈絡なく泣き出し、それからしばらく声も出さずにしくしくと泣いた。
そうして泣く彼女は、いつにもまして小さく弱弱しく見えた。
彼女は少しの間泣いてから、涙を拭いて「よし」と言って勢い良く立ち上がり掃除を始めた。掃除を終えるともう一度「よし、頑張ろう」と言って、それから何事もなかったようにいつもの彼女に戻った。
スイッチが切り替わるように彼女はその後少し元気になったが、しばらくするとまた電話をしてテレビを見てため息をつく生活に戻ってしまった。
しかし、同じ日は一日としてなく、全ては日ごとにその姿を変える。彼女だってそうだ。
彼女はサークルにはいりバイトを始め、それから急激に忙しくなった。お酒を飲んで帰ることも増えて、家にいる時間は随分減ってしまった。
「気持ち悪い」
帰るなりそう言って、顔を洗ったらベッドに直行し眠りこける、それが日々繰り返された。
前は学校だと慌てていた時間も、時々彼女は布団の中で過ごした。生活が変わってから、カーテンも閉じられたままになっている。
そして私はだんだん忘れられていき、彼女の話を聞くことはもうなくなった。何日も声をかけられず、水を与えられていない。私の中の水分がどんどんなくなっていく。私は立ち上がる力をなくしていた。
しかしきっと、彼女はもう寂しくないのだ。
それを私は嬉しく思う。