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2.二つの先生

絵本にとびだす絵本ってのがあっただろ?あれを魔法にしたのが魔法絵本。俺は童話が大好きで、小さい頃から本を読むときは、本の世界に自分が飛び込んだかのような錯覚にとらわれていた。もし魔法で絵本の世界が再現できたら最高じゃないか?その考えのもと魔法絵本を生み出し、今それなりの人気を得ている。ちなみにさっきの豆の木はジャックと豆の木だ。

「とにかくとりあえず9時には新人の方が来ますので早く院に顔を出してください。どうせ朝食もまだなんでしょう?今日はフレンチトーストに目玉焼きにサラダでしたよ。」

「おっ、うまそうだなぁさすがハント。それにしても最近入院者増えたもんなあ、申請してから長いことこなかったけどようやく来てくれるのか。」

「ハントさんの料理はとってもおいしいですよね!とりあえず食堂に行きましょう。」

そうして俺はレビィと一緒に院内食堂へと向かった。俺は魔法絵本作家だけでなく院の従業員でもある、というかこっちが一応本業だ。リフィックへの授業なんかも時々やっているので、実はレビィの言う『先生』は二種類の先生を含んでいるのだ。ちなみにレビィは俺の魔法絵本ファンだ。俺の仕事が見てみたいと言われたので、缶詰小屋に一度招待したのだが、えらく感動したいみたいで足繁く通うようになった。院の先生をやってる上に作家である俺の不摂生も同時に知られたので、こうして俺の編集者、というよりはお世話係みたいなことをやってもらっているのである。


そうして長い廊下をあくびを噛み潰しながら歩いていると、ようやく食堂だ。食堂はよくある厨房前で料理を受け取るシステムだ。厨房から顔を出したのは白頭巾を頭に被り、白いコックコートを身に纏っている男性だ。さらに特徴的なのは文字通りの豚っ鼻にちょび髭を生やした温和そうな顔だ。

「おっ、おはよう先生。最後に見たのは三日前の昼だったか。ちゃんと食わないといつか倒れますよ。」

「おはようハント。いやぁ締切が迫ってていつものことだから大丈夫だって。最悪レビィが倒れてるところ見つけてくれるからさ。」

「もうっ、やめてください!先生に倒れられたら院のみんながどうなるか想像つきますか!?」

「んぁすまんすまん。」

そうしてレビィと戯れ合いながら、朝食を受け取り席についた。豚というのは味蕾が人より多く味覚が鋭いそうだ。目玉焼きひとつでも様々な味付けを施されており大変おいしい。俺は三日ぶりのご馳走に舌鼓をうち、「ごちそうさま」とハントにお礼を告げ食堂を出た。

「んで今日って新人さんを迎えるわけなんだけど、何すればいんだっけ??」

「とりあえずノアシップの案内と仕事の説明じゃないですか?てか、私に聞かないでください。私は今から、役所に用事があるのでこれで失礼します。しっかり対応してくださいね?変なところだと思われてすぐ辞められたらせっかくの従業員さんをまた募集することになるんですから」

「わかってるって、俺も仕事楽したいしね。」

チューチュー!っとねずみらしい甲高い鳴き声をあげるレビィと別れ、俺は事務室へと向かった。

 ここノアシップには現在人間の従業員は俺ともう一人の同僚、残り15のリフィックで構成されている。東京都の西武に位置し、東京都は思えない畑一面の場所にぽつんと立っている。もともと孤児院だったらしいが、少子化や過疎化が進行し廃院となっていたところを再利用する形になったのである。机の上に積まれた細々とした書類を片付けていると、二人分の足音が事務室の扉の前で止まった。こんこんこんっとノックの音が三回なった後、元気に引き戸が開けられ、ただ一人の同僚であるみち子さんと、利発そうな女性が入ってきた。


「失礼します!本日よりこちらに着任となります。微塚ちひろと申します!」

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