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「そろそろ来るころかのう」
部屋を出て縁側に座り、庭を眺めだした。
――来る。なにが?
こうきも縁側に座った。
ばあちゃんの隣に。
しかしなにも起きない。
ばあちゃんは黙って庭を見ているだけだ。
そのまま時が止まったかのよう。
――なんだ、これは。なにが来るんだ。
結構時間が経ったと思われたころ、庭に突然現れた。
そいつが。
身体は少女、いや幼女か。
スカートをはいていた。
しかしそいつの頭は、異様と言う言葉を優に通り越していた。
小さな体、そして細い首の上にある頭はほぼ円形で、その大きさが一メートルを軽く超えていた。
そこに顔の端から端に避けたような大きな口があり、中には大きな歯がずらりと並んでいた。
その眼もびっくりするほどに、大きかった。
眼は黒目の部分が多く、両端に申し訳程度に白い部分がある。
とにかく身体よりも頭の方が断然大きいのだ。
髪はおかっぱだ。
一応人型ではあるが、人間、ましてや幼女には見えなかった。
そいつが言った。
「お菓子食べたい。ちょうだい」
その声は、四、五歳くらいの幼女の声だった。
「いいよ、いいよ」
ばあちゃんが実の孫にも向けたことがないほどの満面の笑みで答え、奥に引っ込んだかと思うと、戻ってきた。
その手にはおせんべいがあった。
「はいはい」
そいつがカバみたいに口を開け、ばあちゃんがその中におせんべいを放り込んだ。
――手が届かないんだ。
どう見てもそいつは、頭が大きすぎて自分の手が自分の口に届かないように見えた。