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「よく来たねえ」
小柄な老婆が迎えた。
その表情は穏やかだ。
――これが俺のばあちゃんか。
こうきは初めて見るばあちゃんに、好印象を持った。
「それじゃあ、明後日の昼過ぎに迎えに来るから」
――えっ?
父はこうきを車から降ろすと、自分は車から降りることなく、元来た道を帰りだした。
父もいっしょにいると思っていたので、思わず「聞いてないよ」と言ったが、父の耳には届かなかった。
残されたこうきの横には、ばあちゃんが立っていた。
「家には入るかえ」
そう言うと、自分が先に入った。
こうきが後に続く。
日本間に通された。
というよりこの家は三部屋ほどあるが、すべて日本間だ。
居間と寝室と物置の三部屋だ。
居間で、とりあえず座る。
ばあちゃんがお茶とお菓子をもってきた
。お茶は渋くて、お菓子はおせんべいだ。
年寄臭いのを絵に描いたようだ。
「やれやれ、やっと会えたのう」
「そうですね」
祖母と孫なのに、こうきは思わず敬語を使った。
それ以後の会話はない。
ばあちゃんがテレビをつけて見始めた。
こんなにも山奥だが、テレビの電波は来ているようだ。
こうきは携帯を取り出した。
携帯の電波は来ていなかった。
今の日本で携帯の電波が来ない家があるなんて。
これでは持ってきた意味がない。