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なんで底辺な私がこんなに執拗に誘われてるのだろうか

マスターの目の前のカウンター席でジンを少しづつ飲む、ほろ苦い口当たりで徐々に酔っ払うのを体感する。私の仕事終わりのルーティンであり、人生の中でも指折りの至福な時間だ。

今日はゴブリンの群れを一掃した。特に恨みもない、食いつなぐための金稼ぎのため、その為だけに命を悪戯に消費するなんて許されていいのか。そんな一抹の不安がよぎるが、生きる為だと割り切って嫌な考えを酒で洗い流している。

いい感じに酔っ払ってきて、いつものように深夜帯の馬車で帰ろうかと寝落ち寸前の頭で考える。

「ここ、座っても?」

男にしては少し高い声で聞かれた。

私は軽く了承する。私より年上の勇者だ。

店は深夜ということもあって空いてるのにわざわざ私の隣に座る男に私は少し苛立った。

「君、ジョブは?」

てっきり私はマスターと話すものかと思っていたから呆気に取られる。

ナンパか何かだろうか?

ただ、そう言われると私は言葉を詰まらせる。

私にはこれといったジョブはない。

適任と言える尖った才能が私には無いのだ。

この世界には戦闘試験という戦闘力を数値的に表す試験がある。

これらの点数をグラフ化し、それをステータスと呼んでいる。

素早く、そして強く、筋力と繊細さ、収発力が試される剣術試験、集中力、忍耐力、体力が試される治癒試験、才能、集中力、忍耐力が試される魔法攻撃試験と魔法防御試験、判断力、筋力、収発力、反応速度が試されるスピード試験。

大体一つでも100点を取れば魔王にも通用すると言われ、80点では四天王ほど、50点は平均値、30点以下は底辺チーム程だ。

私は全ての試験で30/100点。

訓練所の受付嬢が苦笑いしながら放ったセリフがフラッシュバックする。

「い、色んな場所で頼りになりそうね!万能な能力じゃない!」

無駄な慰めだ。

私はおとぎ話のようなスキルや隠された能力などは当然持っていない。

どうせ欠員埋め目的できたこの男はガッカリした顔で酒屋を後にするだろう。

でも、弱みは見せたくない一心で強がってみせる。

「このステータスよ?私にジョブなんてあるわけがないじゃない。そんなガラでもな」

またしても言葉を詰まらせる。

キラキラした目でこっちを見ている勇者がいた。

「いや、君をパーティーに入れたいんだ。大丈夫、ちょうどあと一人だったんだ。」

予想外の答えに唖然とする。

「それとも僕のステータスを見てないからかな?」

そうでは無いのだけど、興味はあるのでみてみる。

パッと見でもすぐに気づくほど剣術の才能に秀でていた。70程はあっただろう。ここらのような地方ではトップレベルだ。そんな人がいるパーティーに入るなんてガラでもない。

「いや、私は別に非凡な才能を持ってる訳でも無いから。さ、他の子を誘って」

良く考えればこんないい条件なのだから了承すれば良いのに。なぜか自信が無いわけでも塞ぎ込んでる訳でも一人でいたい訳でもないのに謙遜して断ってしまう。

そんな私を察したのか男は尚更捲し上げるように褒めあげる。

強がりすらも隠せなく動揺した様子で訳を聞く。

「...なぜそうまでして私をパーティーに入れたいの?」

「直感さ。それに」

自信満々に放った言葉にしてはふわふわしていて少し失望した。

どうしてこんなことを煌めきを隠さない顔で言えるのかと笑いが込み上げそうになる。

「魅力的だし」

またもこの男の言葉に唖然とさせられた。

もう強がってたのを隠そうともしないほど自分が赤面しているのが分かった。

嬉しさ、恥ずかしさ、期待、男の非常識さなど色々な考えと感情が混ざりあって隠そうとしたが隠しきれてないかもしれない。

「一緒に果てしない旅へ、行こう?」

私はそのまま顔を隠しながら同意した。

「やった!」

本当に心からよろんでいる顔を私に見せた。

無邪気な子供のようにも、ギャンブルで勝った汚い大人のようにも見えるその笑顔は周りの笑顔もを誘う。

「マスター、ジンを二つ!」

「へいよ」

私はまた驚いた。

男は私の返事など勝手にまた酒を頼んだ。

まだ飲み終わってもなかったのに、もう少しゆっくり飲みたかったのに、仕事終わりの余韻をもうすこし感じていたかったのに、追加のお酒を頼まれてしまい仕方なく一気に三分の一程のジンを飲み干す。喉が少し痛い。

私の至福の時間を無下にした罪は大きい。

...でもなぜか怒りより笑いが込み上げた。

酔った頭でも本当にこの男と共にして大丈夫かとか、私が危ない時この男が守ってくれるのかとか、ネガティヴな考えが浮かぶ。

でもそんなことはどうでもよかった。

酔い過ぎ?ある種の魔法?単純に私がこの男に惚れたから?

何もかも人に責任転嫁しそうになった。

この男と旅をしたい、そういう感情とナンパみたいな手口にまんまと釣られたくないというプライド、相反する二つの感情の意味の無い脳内論争。嫌ならすぐ逃げればいいことなど分かっている。でも脳がそうさせてくれない。

結局、この男にまんまとはめられたのだ。

「...よろしく」

私がそう酔いに任せて微笑むと勇者もまかせてと言わんばかりの表情で微笑む。

「これ"以上"は...失望させないでね?」

星雲の中の六等星のような私たちだけど、私にはその人は一番星より輝いているように見えた。

誤字修正とかそういうの含めなかったら2時間で作ったのでうっすいです。正直なろうのシステム把握に使っただけなので次回作作る気はあまりありません。ないとは思いますが好評ならもしかしたら?是非評価して頂けると嬉しいです。

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