19.消えたのは
起きたら、珀蘭がいなかった。
「珀蘭! 嘘でしょう!!」
珀蘭は――サリヤの使い魔だ。普段はサリヤの懐剣の中に納まっている。それは常に自分の胸元に、寝る時は枕元に置いて、いつでも手に取れるようにしている。
けれど珀蘭は好奇心が旺盛で、たまに好き勝手に動いてしまう。でも今それは困るのだ、ここスペースシップの中では。
(あんな疑わしい発言をしたあとなのに)
彼らはお茶会を切り上げてなにも聞かないでくれた。でも全く信用されていないのはわかっている。
(不審行動はしたくないのに)
サリヤは、一度深呼吸をして心を落ち着かせて、彼の魔力を探る。でも、この中は様々な機器が張り巡らされていて、うまく潜り込めない。
(お願いよ、珀蘭)
彼は、まだ幼獣で、サリヤと会話がうまく成り立たない。育てば強い絆も結べるし、言い聞かせることもできる。というよりも、制御できていない自分が問題なのだ。
ザハナートの魔力にあてられてずっと興奮している、だからでていってしまったのかもしれない。
「探さないと……」
呟いて、インターコムを眺める。トイレ、シャワーは幹部用の利用許可を与えられた。
それが特別扱いというのは、師団で寮暮らしをしていたのでサリヤにもわかる。
それ以外に出ていいのは、展望デッキ。シャッターが降りたそこには誰も行かないからだという、ただし出るにはスヴェンの付き添いつき。
とはいえ忙しい彼に内線で事情を話すことは――できない。
“使い魔が逃げました”なんて。
(でも、あの子を……ほっとくわけにはいかない)
サリヤは扉の前に立つ、もちろんロックがされている。
でも、これくらいはなんとかなる。
電力でできている。魔法は、自分の魔力と自然界のエレメンタルを掛け合わせて事象を起こさせる。
だから、電力が使われているこの扉のロックも、壊すことができるけれど。
扉を見つめた時に、不意にそこが開いた。




