双子の妹の身代わりで獣の王子と結婚しましたが、溺愛されて幸せです。
「私が、妹の代わりにお嫁にいきます」
震える声で父、国王陛下にそう告げた。
父は何も言わなかったが「当然だろう」と言いたげな冷たい視線を私に送る。
そして、母の腕の中で泣きじゃくる双子の妹の頭を優しく撫でた。
「もう大丈夫だ、リナ。お前を獣人の国へ嫁になど出さないからな」
「お父様……大好きですわ!」
「ああ、可愛い可愛い我が娘よ。もう大丈夫だ」
私だって、娘なんですけどね。
我国は、戦争に敗れた。その賠償金として、隣国から姫を寄越せと申し立てられた。
向こうからの要望は、若い方。とのことだ。
私、アンナ・カトリーシュと妹のリナは一卵性双生児。生まれた時間の差は、僅か十分。
それでも、向こうの要望に沿うのであれば妹を嫁に出すのが正しいのだろう。
父は私を愛さなかった。
母も私を愛さなかった。
なぜなら……私の右頬には火傷のような痣があるからだ。
呪われた忌み子と呼ばれ、民の前に出されたことはない。
両親と妹、そして僅かな従者しか私の存在を知らなかった。
普段は自室の中から出ることを禁じられ、週に一度だけ庭で散歩を許される程度。
そんな私にとって、唯一の癒しが妹、リナの存在だった。
誰も近づかない私の自室に、いつだってひょっこり現れて遊んで欲しいとせがむ。
可愛くて、可愛くて仕方がなかった。
瓜二つの顔で、同じ洋服を着て遊んだり
おままごとをしたり
リナの勉強をそばで見守るのが幸せだった。
だから、獣人の嫁になど行きたくないと泣いているリナをどうしても助けたかった。
リナを泣かせたくなかった。
私だって、怖い。獣人は人を喰う化け物だと聞いている。私も食い散らかされ、生涯を終えるのだろう。
それでも……リナがそんな目にあうよりずっといい。
「ああ、お姉様!」
「こら、リナ! そいつに触るな! 汚れてしまう!」
「だめよ、リナちゃん!」
リナは両親の静止を振り切って、私に抱きついた。私よりも小さな体から伝わる温もりに、堪えていた涙が溢れた。
「大丈夫よ、リナ。私はあなたの為なら、なんだってするわ」
「ありがとうございます! お姉様!」
「大好きよ、リナ」
そう伝えると、リナはクスリと笑った。
違和感を覚えて首を傾げると、耳元でリナが囁く。
「私は……大っ嫌いよ」
聞き間違いかと思った。
全身が固まる私に、リナは続ける。
「ほんと、汚いお姉様が消えてくれて助かるわ。私の未来の旦那様に、こんな姉がいますなんて紹介したくないもの」
「リナ……何を言っているの……。私たち、仲良しだったでしょう?」
「まだ勘違いしてるの? 昔から気持ちよかったわ。痣持ちのお姉様の隣で同じ格好をすると、私がさらに可愛く見えて楽しかったの。
勉強させて貰えないお姉様の隣で勉強をするのは、とっても優越感があったし。
お姉様が恵んでもらえない玩具を、私が分け与えていると餌やりみたいで快感だったわ」
でもね、もういらないの。と、リナは笑う。
これ以上いられると、自分の身内にこんな姉がいるとバレる可能性があるからだ。
「いつ排除しようって思ってたけれど……とっても都合いい出来事があってなにより。
私の代わりにありがとね、この呪われブス女が」
リナはそっと私から離れ、両親の腕の中に戻る。
「お父様。お母様。私、お風呂に入りたいわ。なんだか、泣きすぎて汚れちゃった気がして」
「ああ、もちろんだとも。そんな服は捨てなさい。また新しいドレスを買ってやろう」
それからことは、よく覚えていない。
気づけば私は、隣国へ向かう馬車に揺られていた。
リナが私を嘲笑っていたという、受け止めきれない現実。もう取り消せない、身代わり婚。
何もかもが、絶望だった。
「結局……私は誰にも愛されていなかったんだわ」
窓の外を眺め、次々に流れる涙を拭う。
次の日にはたどり着いた、獣人の国──ラッシュ帝国。
宮殿は、我国より倍は大きかった。
吊り橋が下ろされ、馬車は宮殿内部へ進む。
恐る恐る見た護衛は、みんな頭から鹿の角のようなものが生えていた。
「怖い……」
人の見た目に似ていて、やっぱり違う。
所々牙が生えている人もいるし、おしりからは色んな形の尻尾が見える。
馬車から下ろされ、案内された先は王室の礼拝堂だった。
真っ白な礼拝堂は、夏らしい爽やかな風が吹き抜けている。
真っ赤な絨毯が引かれたその先に、一人の男性が立っていた。
「ようこそ、ラッシュ帝国へ」
白いスーツを身にまとった男性。歳は二十代後半に見える。
薄茶色の長めの髪。程よく陽に焼けた肌。凛とした目に輝く黒い瞳。高い鼻筋。
そして……丸みのある二つの耳と、人間より明らかに長い犬歯。極めつけは、先端が房になっている細長い尻尾。
「俺の名前はラッシュ帝国第一王子、レオ・スペンサー。純血の獅子族だ」
獅子……ライオンってことですよね。
肉食ですよね。
「さあ。早速、結婚の儀をあげよう」
今から……結婚式?
私は、今晩には食い殺されるんだ。いや、もしかしたら今から噛み殺すことが、儀式なのかもしれない。
「君の名前は……って、大丈夫かい!」
気づけば、私は震え、ボロボロと大粒の涙を流していた。
表情を青ざめた王子は、慌てて私の元に駆け寄ってくる。
「旅酔いをしたか!? それとも、なにかここの空気が悪かったか!?」
「あ……あ……こわ、いです……」
「何が怖い! 俺が君の怖いものを全部とり払おう! なんでも言ってくれ!」
「あな、たが……こわ、い、です……」
茫然自失のままそう伝えると、王子の動きが固まった。
「お願いします、命だけは……なんでもします……なんでもしますから……」
「き、君は何を勘違いして……」
「結婚、したくない……したくないです!!」
わあああっと、私はついに泣き崩れてしまった。
これに困り果てたのは王子だ。
おろおろと私の周りを回り続け、周囲の従者に声をかける。
「お、俺のどこが怖い!」
「いえ! リオ王子はとてもかっこいいです!」
「で、ではなぜこの娘は泣いている!」
「極度の緊張かと思われます!」
「緊張とはなんだ! ど、どうすればいい!」
「や、優しく抱きしめてあげれば良いかと!」
言われるがままに、王子は私に触れる。
途端に、私は悲鳴を上げてしまった。
「いやあああああ!!! 殺さないでえええ!!!」
王子の耳はぺったりと寝てしまい、尻尾は股の内側に入り込むほど巻いている。
「すまん!! すまなかった!!」
謝り続ける王子に、私は少しだけ落ち着きを取り戻し顔をあげる。
「名前を教えて欲しい」
「アンナ・カトリーシュです……」
「アンナ。俺は人を食ったりしない。それでも怖いのならば、君が俺たち獣人を好きになるまで絶対に触れないと誓う。結婚も一旦はやめよう」
「……本当ですか?」
「ああ。俺は女子を泣かせてまで結婚したいとは思っていない。まずはお互いの信頼回復に努めよう」
全てを信じたわけではないが、限りなく譲歩しようとしてくれている姿勢が伝わってくる。
もしかして……獣人の人は、思ったより怖くない?
取り乱していた心は落ち着き、次第に冷静さが戻ってきた。
王子は再び従者を見て、意見を求める。
「おい! 人間と仲良くなるにはまず、どうしたらいい!」
「わかりません!」
「むう……で、では俺なりの礼儀で……」
王子は少し不安そうな顔で、私に語りかける。
「誰かと信頼を築くには、まず共に行動からだ。俺と……明日からデートを重ねてくれないか?」
不安そうに耳はパタパタと動き、尻尾はだらんと下がっている。
少しだけ……ほんの少しだけ、その姿が可愛らしく見えた。
「わかりました……」
勢いで了承してしまった私は、次の日からリオ王子と共に過ごすこととなる。
■
共に過ごし始めて、三ヶ月。
ひとまず私は、獣人をみて泣き叫ぶことはなくなった。
勉強していなかったせいか、獣人に対する思い込みはただの偏見だと知ったのだ。
彼らは人間と変わらない食事を摂るし、人間を食い殺すこともない。
ただ、人間と容姿が少し違うだけなのだ。
ラッシュ帝国は自然豊かな国で、城下町に出るとどこもかしこも自然に溢れている。
戦争をしていたとは思えないほど、穏やかな国だった。
国王との面会も終わり、国王も王妃も私とリオ様のペースを尊重すると言ってくれた。
今日もまた、リオ様と共に自然公園へと散歩に出る。
元々外を出歩いたことのなかった私にとって、何気ない散歩でも新鮮で楽しく感じた。
「リオ様は……どうして人間の国から嫁を取ろうと思ったんですか」
「一つは、未だに婚約者を決めない俺に父が痺れを切らした。それと、もう一つは……俺の夢だったんだ」
「夢、ですか?」
「もう人間と争いたくない。人間と獣人は分かりあって暮らしたい。そのために、俺が民にとっての象徴になりたかったんだ」
ううんっと、私は考え込む。
この世界は、獣人の国より圧倒的に人間の国が多い。私の祖国も、そのうちの一つだ。
レオ様はしょぼんと、悲しげな顔をした。
「けれど、俺は浅はかだった。人間の国からきた娘が、どれだけ俺たちを怖がるかなんて考えていなかった……。結果的に、君にとっては生贄にされたように思っただろう」
確かに、レオ様は出会った瞬間は自信満々で、なぜ泣かれているのかも分かっていなかった。
「アンナを通して、色々知ったよ。人間は思った以上に几帳面だし、繊細だし、それに……よく笑ってくれる」
「この国の人々も、皆様笑っていますわ」
「確かにそうだが、アンナからは儚さを感じる。絶対に自分が守らなければという、使命感を駆り立てられるんだ」
公園を歩いていると、遠くから民が私をみてヒソヒソと話をしていた。
それをみて、私はさっと頬を隠す。
「アンナ?」
「……すみません」
王子の正妻候補。
それが人間で、しかも顔に痣がある。
民にとっては面白くないことばかりだろう。
幸い、レオ様からこの顔の痣について問われることはなかった。
だから、私も今まで考えないようにしていた。
「リオ様。これからは、もう少し人のいないところに行くか、もう一緒のお出かけはやめましょう」
「どうしてだ」
「私のこの顔の傷は、消えません。王子が傷物に絆されていると、きっと国民からバカにされてしまいます」
レオ様は少し戸惑ったあと、私と視線を合わせた。
「アンナ。触ってもいいか?」
「……はい」
レオ様の右手が、そっと頬に触れる。
「勲章のようだな」
「……え?」
「きっと、産まれてくる時にアンナは凄く頑張ったに違いない。命を燃やしながら産まれてきたんだ。これは、命を燃やした勲章だ」
「汚いと、思われないのですか?」
「なぜそんなことを思う必要がある。この痣が、アンナの美しさを際立てているんだ。俺はこの痣が誇らしい」
ほろりと、涙が零れた。
「お、俺はまた君を怖がらせてしまったか!?」
「違います、違います……」
私を美しいと、言ってくれる人がいたなんて。
私の存在を誇らしいと言ってくれる人がいたなんて。
ずっと与えられなかった愛情は、こういった優しさを言うのだろうか。
「民はな、アンナの悪口を言っているんじゃない。どう話しかければいいか分からなくて困っているだけなんだ」
王子は私の後ろに立つと、視線の先にいる民に大きな声で話しかける。
「俺の将来の妻だ! どうだ、いいだろう! とっても可愛らしい。どうか仲良くしてやってくれ!」
王子のその声で、民の表情が綻ぶ。拍手が返ってきて、「もちろん、歓迎しますとも」の声が聞こえた。
「私を……そんなにも堂々と紹介してくださるのですか……」
「当たり前だ! 誰にだって誇らしく紹介する」
ああ。
祖国では閉ざされて暮らしてきた。
誰も私を他人に紹介しようなどとせず、いないものとして扱ってきた。
このラッシュ帝国では、とても丁寧に扱ってもらえている。
嬉しくて、暖かくて、幸せだと思えた。
■
ラッシュ帝国に来てから、半年が過ぎた。
ここ最近、大きな変化があった。
私がこの獣人の国で幸せに暮らせているらしい、との評判が国を超えて伝わり始めたのだ。
周辺諸国が、ラッシュ帝国に外遊にくることが増えた。国王陛下はもちろん、レオ様もその対応で忙しそうだ。
「聞いてくれ、アンナ! ずっと貿易を閉ざしていたナルビル王国と貿易が再開することが決まったぞ!」
ナルビル王国は、人間の国の一つ。
戦争中は私の祖国と連合軍を築いていた国の一つだ。
元々敵対関係にあった国のひとつが貿易の窓口をあけたということは、世界中を驚かせる出来事だった。
「対談して分かった。ナルビル王国の国王はとても聡明で先見の目がある。アンナの存在がいい方に転んでいるという、世界の動きを見逃してない」
意気揚々と語るレオ様は、喜びに満ち溢れていた。
「私は何もしてませんわ」
「いいや、アンナのおかげだ。これでまたひとつ、未来の戦争が減ったんだ」
国同士の対談から始まった輪は、国民にも広がる。
試験的な交換留学生制度や、サミット……様々な人間の国との交流が広がっていく。
ラッシュ帝国に感化された他の獣人の国も、少しずつ交易を広げていた。
まだ問題は多く存在するものの、一年が経過する頃にはラッシュ帝国内でもチラホラと人間の姿をみるようになったのだ。
「聞いてくれ、アンナ!! ナルビル王国の伯爵領当主から、我国の伯爵領当主へ縁談があったぞ!」
「本当ですか!」
「ああ! 人間の国からの申し出だ! これはとんでもない歴史の変化だ!!」
一年前、私の前でオロオロとしていた王子の姿はどこにも無い。
まぎれもなく、一刻を支える柱となっていた。
国民からも、レオ様に早く戴冠を。との声が大きくなり始めている。
それが……誇らしいと思えた。
「アンナ。我国がなんと呼ばれているか知っているか」
「なんですか?」
「燃ゆる姫が輝かせる、革命国だ!」
「……それ、私のことですか?」
「そうだとも。痣は呪いなどではない。生き物は、見た目に左右されず愛し合えるという象徴なんだ!」
素直に、嬉しいと思った。
この頃には、私はレオ様が密かに好きだと思っていた。
毎度毎度、私に指一本でも触れる時は確認をしてくるし、いつだって尊重してくれる。
大切にされているのだと、信じられた。
彼が喜ぶ姿をみるのが、何よりの幸せだ。
「レオ様」
「なんだ」
「私は、幸せです」
「そうか! 俺も幸せだ!」
ニカッと笑うレオ様に、心臓が高なる。
この幸せを良しとしないのは……まぎれもなく私の家族だった。
■
ある日、レオ様が困った顔で私の元に来た。
「アンナ。その……」
「どうされたんですか?」
「実は先ほど、父上に書簡が届いた。アンナの国の国王からだ。一度俺と謁見したいと」
「……そうですか」
「要件は書かれていないんだ。戦争以降、疎遠になっていたからな。少しでもいいきっかけになればと、受けようと思うのだが……情勢を見るならば、少し検討も必要かもしれん」
「レオ様のお心のままに」
結局、レオ様や国王が悩んだりする間もなく、私の家族がラッシュ帝国に乗り込んできた。
真っ先に父が言ったのは、国の事だった。
世界的に見ても、いまラッシュ帝国が好調なのは明らか。世界の改変の先端にいるのだから、友好を築かない手はない。
過去の戦争は水に流し、友好国になろうと申し出た。
元々、先にラッシュ帝国に開戦の狼煙をあげたのは祖国の方だ。
交渉もなにも聞かずに、いきなり戦争を始めたので、印象は良くない。
民の意志を尊重するべきだと、ラッシュ帝国の国王は了承しなかった。
父は自分の国だけ受け入れられないことに腹を立てながらも、今度はレオ様に申し立てる。
「レオ王子! 聞くところによると、まだ我が娘と婚姻を交わしていないそうですな!」
「そうだ。アンナの気持ちを一番に尊重したいからな」
凛とした態度で望む王子の後ろに私は控える。
対向にいるリナと目が合えば、リナはニンマリとほくそ笑んでいた。
「一つ、レオ王子に謝罪がある!」
父が自信満々にそう言う。
「実は、あの時の手紙を読み違えておりまして。本当に若いのは、双子の妹のリナのほうです!
まだ婚姻をしておられないのならば、アンナに不満があるのでしょう。この汚い痣持ちの女など送ってしまい、大変失礼した!
今から、リナのほうと取り替えてもらいたい!」
父は何を言っているのだろう?
実は獣人は人間に友好的で、ラッシュ帝国が栄え、自国にとっても有益だと見るやいなや、手のひらを返してリナを差し出すという。
しかし……父の言葉は私の胸に刺さった。
同じ顔、似たような背格好。
それでいて、リナは私より美しい。
王子は、私を選んではくれないかもしれない。
そんな重い気持ちは、ただの杞憂だったとすぐに知る。
「断る」
きっぱりと、王子は父に言い返した。
「顔が一緒だからなんだ。俺はアンナの全てを愛している。
確かに、最初は浅はかな関係だったかもしれない。それでも、この一年、アンナと過ごした日々の方が俺にとっては大切だ。
アンナ以上に心が美しい者はいない。アンナ以上に輝かしい者はいない。
俺は、アンナと共に夢を叶えると心に誓ったのだ」
それを聞いたリナが顔を真っ赤にして騒ぎ立てる。
「獣人って、きっと人間のような目を持っていないんだわ! こんなに美しい私が目に入らないなんて!! 視力でも悪いのかしら!」
この発言を良しとしなかったのは、ラッシュ帝国の国王陛下だった。
「今の言葉、我国ならず獣人への侮辱ととってよろしいか?」
冷めた声に、家族は真っ青になる。
今更謝ってももう遅い。
「貴国とは、未来永劫交易を築くことはない。今すぐ、ラッシュ帝国から去れ」
ラッシュ帝国と交易を築けないということは、獣人の国どことも交易を築けない。
時代の先端にいるラッシュ帝国が振り向かない国は、良い国ではないと……子供だって分かるだろう。
ああ、なんて愚かな家族なのだろう。
哀れみすら感じる。
家族が帰ったあと、私はレオ様から礼拝堂へと呼ばれた。
礼拝堂に行けば、白いスーツに着替えたレオ様が立っている。
「この格好をするのは、ちょうど一年ぶりだな」
「そうですね」
「君への愛を疑ったことは無い。それでも、先程のやり取りで……やはり、俺は君を愛していると確信したよ」
レオ様は私の前に片膝をつき、指輪を差し出した。
「アンナ。もう一度言わせてくれ。
俺と結婚して欲しい」
「もちろんですわ」
レオ様は尻尾をパタパタと振り、私に思いっきり抱きついた。
「本当か!」
「本当ですとも」
「ああ、アンナ。好きだ、愛してる。俺は君と出会えて幸せだ」
「私も、レオ様と出会うために産まれてきたのだと。そう信じております」
そうして私たちは、一年越しに本当の愛を誓い合った。
ラッシュ帝国はそれからも繁栄を続け、やがて世界一の大国となった。
一方の祖国は、次第に人間の国とも交易が
途絶えていった。レナの浪費が止まらず、国費がかさみ、借金が増えた。
もちろん、国の繁栄の機会を失わせた王女の元に家柄のいい旦那が来るわけもなく……次第に祖国は衰退を辿った。
今更後悔されても、もう遅い。
私が心から愛する国と家族は、目の前にあるんだから。
fin
獣人かわええ……。
虐げられていた子がどんどん幸せになる物語は、やっぱり素敵ですね。
この話がすき!いいね!楽しかった!
と思った方は、ぜひブクマ、高評価や感想を入れていただけますと幸いです!!
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名前:志波咲良
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