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16/30

16.その頃チェルシーは②(チェルシーside)

「さて、ここが悪徳商人のアジトか、いかにもって雰囲気ね」


 目的地に到着した私は遠間から様子を伺う。

 真っ当な奴隷商人の店舗は町中にあるが、ターゲットのアジトは町外れにある大きな倉庫だった。

 確かにここなら人通りもほとんどないし、闇取引にはもってこいね。見張りは男が二人に武装が長剣……ここはいつもの作戦で行きますか!


 いつもの作戦とは私の美貌を活かし、娼婦に変装して侵入する作戦だ。このために私の仕事着バトルクロスはドレス風に仕立てている。魔力の付与された生地で作られた真っ赤なドレスは防刃性が高く、その上見た目も可愛いお気に入りだ。

 そんじゃあ行きますか! 商売女らしく明るく隙のある感じを意識してっと。


「はぁい、そこの見張りのお兄さん。私ここに呼ばれてきたんですけど、通してくれますぅ?」


 いかにも呼ばれてきましたよ、感を出して、私は正面から堂々と見張りに話しかける。

 こちらに気付いた見張りの男は怪訝な表情を浮かべるが、すぐに納得すると、こちらを値踏みするような視線を向けてきた。


「何だお前は? まったく、誰だアジトに女を呼んだ奴は? 上玉だがまだガキじゃねえかよ」

「いやいや、こういう青い女が良いって奴もいるからな。若くて見た目が良いってだけで高く売れるぜ」


 バカ二人の言葉を聞いた瞬間、私のこめかみに怒りの青筋が浮き出る。


「女の敵! 葬る!」


 腰の後ろに差したナイフを引き抜き、見張りの男の首を掻き斬った。


「クソ女が! 殺し屋だったのか!」


 仲間をやられたもう一人の男が激昂して剣撃を放ってくる。それをもう一方の手に持ったナイフで受け止めた。

 ナイフ二刀流、それが私の戦闘スタイルだ。


 私のナイフは変わった物だ。鎌のように曲がった短い刃、グリップの端には指を入れるリングがある。カランビットナイフとか言う名前らしい。

 使用には器用さを必要とする武器だが、私の職業である『暗殺者』はスピードと器用さに特化した職業だ。カランビットナイフの扱いにも長けている。


「なっ! 俺の剣が! ガハッ……!」


 私は受けた敵の剣を鎌状の刃で絡め取り、反対の手に持つナイフで相手の首を掻き斬った。

 はぁ……まったく、クズのくせに仲間意識だけは強いのね。そんなに仲間が大切なら悪の道に行く前に止めなさいよ。さて、見張りも片付けたし先に進みましょうか。


 見張りを倒した私はそっと倉庫の扉を少しだけ開けて隙間から中を覗く。倉庫内には野生動物を捕まえる罠のように、鉄格子で作られた移動式の大きな箱が並んでいる。その中には連れ去られた人間、獣人、エルフにドワーフといった様々な種族が捕らえられていた。

 そして、その周囲には客と思われる複数の人間に、それに商品説明をする悪徳奴隷商人たちの姿があった。


「保護対象の富豪の子供は……発見!」


 鉄格子の箱の一つに黒い鳥の式神から聞いた特徴と一致する子供を発見した。

 依頼内容は富豪の子供の救出に奴隷商人の皆殺しだから、まずは子供の安全を確保して巻き込まないようにしなきゃね。

 私は倉庫内に入り、正面から堂々と一直線に保護対象に向かって歩みを進める。すると、途中で私に気付いた奴隷商人の一人が道を塞ぐように立ちはだかった。

 堂々としてれば客と思って近づけると思ったんだけど、奴隷商人も富豪の子供と知って攫ってきたって事かしら? 警戒していたようね。


「そこの奴隷を見たいのだけれど通してくださる?」

「すまんがこっちの奴隷は特別で売り物じゃないんだ。始め見る顔だが、どなたのお連れ様ですかなお嬢さん?」


 誰の連れ……か、あえて言うなら、


「ん~そうねぇ。死神の連れってところかしら?」

「ああん、何言ってん――ガ八ッ……!」


 表の見張りと同じように、腰の後ろに差したカランビットナイフで男の首を掻き斬る。男は傷口から鮮血を吹き出し、糸の切れたマリオネットのように地面に沈んだ。


「て……敵襲だあああ!」

「ひぃぃいいいっ! こんな危ない奴が現れるなんて聞いてないぞ! 我らの安全を保障しろ!」


 客の富豪どもが声高に叫び出す。

 ふんっ、自らこんな場所にきておいて、悪徳奴隷商人に身の安全を保障しろだなんて笑っちゃうわね。でも、貴方たちはターゲットに入っていないわ。攻撃してこなければ殺さないから、そこで大人しく震えていなさい!


「賊は一人だ! 囲んで殺っちまえ!」


 奴隷商人たちは私を囲むように配置につく。

 あら? そちらから向かってきてくれるの? 好都合だわ!

 私は向かってきた悪徳奴隷商人たちを次々と斬り刻む。


「なっ! こんな小娘一人に……! さてはガキの親が殺し屋を雇いやがったな! 奴隷どもを人質に取れ!」

「あら、もう遅いわよ」

「バ、バカな……全滅だと……!」


 私は常に保護対象を警戒しつつ戦い、辺りには敵の死体が大量の血を流して転がり、すでに悪徳奴隷商人はボスを残すのみとなっていた。

 クズの考える事なんてお見通しよ。


「す、すまなかった! お偉いさんの子供だなんて知らなかったんだよ! 許してくれぇ!」

「はぁ、呆れた男ね。もういいわ。行きなさい」


 謝って許しを請う奴隷商人のボスに行けと促す。ボスは驚いた様子を見せ、


「へへへっ、すまねえな。なんて言うと思ったか小娘が! ――ガハッ……!」

「もちろん許すわけないわ。クズには死あるのみよ」


 私の横を通り過ぎると同時に振り返りナイフで襲ってきた。

 クズの思考は読みやすい。私は迫るナイフを躱しつつ、すれ違いざまにカランビットナイフで悪徳奴隷商人のボスの腹を斬り裂く。

 ボスは襲い向かってきた勢いのまま進み、保護対象のいる鉄格子にガシャンッとぶつかると、腹から鮮血と臓物を撒き散らしながら絶命した。

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