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13.店主の親父を引き渡そう

 拘束した店主を騎士団に引き渡すため、俺たちは騎士団の詰所に向かう事にした。

 王都には騎士団の詰所が一定の間隔を置いて作られている。俺たちは道具屋から近い中央通りにある詰所に向かった。


 騎士団の詰所に到着すると、表に男が立ち番として見張りをしていた。

 丁度いいや、あの男に取り次いでもらおう。


「すみません。犯罪者を捕らえたので引き渡したいんだが」

「ん? ああ、君は確か勇者パーティーを追放された……リアムだったか?」

「そうだが、噂になっていたのか……」


 くっ……俺が追放された話がこんな所にまで広まっていたのか……!

 勇者の職業は王都でブレイドだけだし、ピーチの奴はバカだが魔法の実力と美貌で有名だ。それに第三王女のエリザベスまで在籍しているから、勇者パーティーは王都でもかなり知られた存在だもんな。

 だが、まさか俺の追放まで噂になっていたとは……。


「いや、違うぞ。君が追放されてから活躍しだしたから知っているんだ。俺は個人的に勇者パーティーの連中が好きじゃないから、活躍してくれて嬉しかったよ。何しろ君が功績をあげれば奴らの見る目がない証明になるからな。俺の留飲も下がるってもんだ」


 落ち込んだ俺の様子に気付いた男が訂正してくれた。

 実は勇者パーティーは人気もあるが意外と嫌われてもいる。

 何しろあいつら、権力者や利益のある人間には調子よく接するが、そうでない者には傲慢な態度を取るからな。権力者には味方も多いが、その分敵も多いって事だ。この人はその敵側だったようだ。


「奴ら俺みたいな騎士見習いには酷い態度しやがるからな。それで、今日は犯罪者を捕らえたんだったな。これでまた勇者パーティーの株が落ちるな」


 騎士見習いは口端を吊り上げて笑う。

 この様子じゃあよっぽどの恨みがありそうだな。あいつら何をしたんだか……。


「奴らに一泡吹かせてくれたリアムなら大歓迎だ。案内するからついてきてくれ」


 そう言って歩き出した騎士見習いに詰所の中の個室に案内される。そこにいたもう一人の騎士見習いも加わり事情聴取を受ける事になった。


「なるほどポーションの買取り詐欺か、悪質だな。安心しろリアム、こいつに支払い能力がなくても店を売りに出せば回収できるさ」

「そんな……俺の店がぁぁ……!」

「店はもちろんだが、それとは別に詐欺罪の罰も受けてもらうぞ」

「そんなバカなぁぁ……!!」


 騎士見習いの発言に店主の親父は地面に膝をつき泣き崩れる。


「とりあえず裁きが確定するまでは牢に入ってもらうぞ。おら! 自分で立って歩かんか!」

「ひぃっ……ごめんなさい!」


 もう一人の騎士見習いが蹲って泣き叫ぶ店主を引きずって部屋を出て行った。

 ずっと騙されて悔しい思いをした。けど、最後の姿を見ると長い付き合いだった事もあるし、なんだか悲しくなってくるな。


「気にするなリアム、自業自得じゃ」


 ちょっと可哀そうに思っていだが、スカーレットの言う通り自業自得だな。罪は罰を受ける事でしか清算できないのだから……。


「犯罪者の捕縛感謝する。賞金首ではないから褒賞金は出ないが国から感謝状が出ると思う。さっき聞いた家に送らせてもらうよ」

「やったなリアム、お手柄じゃぞ」

「ああ、差額も返ってくるみたいだし助かるよ。ありがとうスカーレット、君のおかげだ」

「な……なぁに言っとるのじゃ! 其方が優秀だからじゃよ。ポーションの代金も今までの積み重ねが花開いたのじゃ。リアムの努力、弛まぬ日々の結晶じゃ。自信を持ってよいぞ」


 スカーレットの言葉が俺の心に突き刺さる。

 本当に嬉しい……今まで俺の人生を肯定してくれたのは妹のチェルシーだけだった。それだけにスカーレットの言葉が突き刺さったんだ。


 店主の親父を引き渡した俺たちが家に帰った翌日、王宮から使いがやってきた。

 突然どうしたってんだ?

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