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10.勇者パーティーとの再会

「おいおいおい! 誰かと思えばリアムじゃねえかよ!」


 ブレイドは俺を見つけると大股歩きで近寄ってくる。

 ちっ……嫌な奴に見つかっちまった。できれば会いたくなかったぜ……!


「えっ、リアム? ああっホントだ! あんたを探してたんだよ!」

「探したわよリアム」


 少し離れた所にいたピーチとエリザベスは、俺を発見すると安心したように息を吐いた。


「自分たちで追放したくせに俺を探しているってどういう事だ?」

「はあ? 俺らがお前を探すだぁ? そんなわけねえだろバカか!」

「ち、ちょっとブレイド! 話が違うじゃん!」

「私たちはリアムに話を聞かなくてはならない。そうでしょう?」


 問いただすとブレイドは俺をバカにしてきた。

 ちっ、相変わらずだな。

 だが、ピーチとエリザベスは俺の話を聞きたいって言うし、いったい何だってんだ?


「ちっ! そうだった。こいつの顔を見たらつい……! おいリアム! お前の作ったポーションはどうなってやがる! 市販品と全然違うじゃねえか!」

「喧嘩腰はダメだよブレイド!」

「それじゃあ話も聞けなくなるわよ!」


 高圧的に詰問してくるブレイドをピーチとエリザベスが止めに入った。

 俺の作ったポーション? 何の事だ?


「俺のポーションは普通に外で採取した薬草を錬金術で錬成した物だが、それがどうしたってんだ?」

「はあ? そんなわけねえだろ! 俺たちの用意したハイポーションはすぐなくなっちまったんだぞ!」

「そんな事言われても事実しか話してないぜ」


 俺の説明を聞いたブレイドは「ちっ! ちょっと待ってろ!」と言って、ピーチとエリザベスを連れて離れた場所で話し合いを始めた。


「リアムは嘘をついているように思えないわ」

「奴が気付いてないなら、このままパーティーに戻して飼い殺すか……?」

「さっすがブレイド! 悪い事考えるね!」

「ふっ、最も利益が出る方法と言ってもらいたいな」

「最近のリアムは勇者パーティーにいた頃には考えられない活躍をしている噂を聞くし、私もパーティーに戻すのには賛成よ」

「よし! 決まりだな」


 何やら小声で相談している様子だが、距離があるため俺には良く聞き取れない。だが、なぜかスカーレットは顔を顰めている。

 奴らの事だ。どうせ碌な話はしていないだろう。

 スカーレットはこの距離でも聞こえるのかな?

 そんな事を考えていると、勇者パーティーが再び戻ってきた。


「聞けばお前、最近は活躍してるそうじゃねえか。喜べリアム。相談の結果、お前を我が栄えある勇者パーティーに戻してやる事になったぞ! どうだ? あれだけ懇願したんだ。嬉しいだろう?」


 ブレイドは実に自信たっぷりに胸を逸らし、俺に指を突きつけながら宣言した。

 こいつ……俺に何をしたか覚えているのか? 今さらそんな事言われて嬉しいわけねえだろ。頭湧いてんのか?

 答えはもちろん。


「戻るわけねえだろ」

「はっ? 良く聞こえなかったな? もう一度言ってみろ」

「お前のパーティーになんて入らねえって言ったんだよ!」

「な、何だとこの役立たずの能無し野郎が!」


 言い返されて怒りが爆発したのか、ブレイドは拳を振り上げ殴りかかってきた。顔に拳が近づいてくるのが見える。

 あれ? こいつのパンチってこんなに遅かったっけ?

 俺がブレイドの拳をじっくり見ていると、パンチは目の前でスカーレットの掌によってキャッチされていた。


「はっ? 何だこいつ……どこから現れやがった? つうか、勇者であるおれの拳を止めただと……!」

「その辺にしておけ小僧。こやつは我の弟子じゃ。其方らに渡すわけにはいかん」


 スカーレットはブレイドの拳を放し宣言した。

 ブレイドは性格はあれだが勇者の職業を持つ男、実力は本物だ。そのパンチを掌でキャッチするなんて、やっぱりスカーレットは凄い。躱すよりよっぽど難しいぞ。


「ありがとうスカーレット。助かったぜ」

「弟子を護るのは師匠の努めじゃ。気にするな」


 スカーレットは当然と言わんばかりに述べる。

 そして、それを聞いたブレイドは納得したように頷いた。


「弟子だと……? なるほど、リアムが急に成長したのはお前の仕業か。それに……まだ青いがとんでもなく良い女に成長しそうじゃねえか、フードに隠れてわからなかったぜ。お前も勇者パーティーに入らないか? 可愛がってやるぜ」


 目深に被ったフードに隠された美しさに気付いたブレイドは、醜悪な笑みでスカーレットをパーティーに誘う。


「はぁ……お前のような輩がいるからフードで隠す必要があるんじゃ。あまり我を怒らせるなよ……!」

「――なっ! 何だ……このプレッシャーは……!!」


 ブレイドの発言が気に障ったのか、スカーレットは魔力を解放して圧力をかける。その迫力に、ブレイドはじりじりと後ずさり始めた。


「へっ! 今日のところは引いてやる!」

「ちょっとブレイド! 何であんなガキンチョ相手に引いちゃうの? いつもみたいにやっちゃえばいいじゃん!」

「お前にはあの女の凄さがわからねえのか? ありゃあやばい……俺らが束になっても勝てねえかもしれねえ……」

「貴方がそこまで言うなんて……それほど危険な相手なのね……」


 ブレイドは捨てセリフを吐くと、踵を返し足早に去って行く。その後をピーチとエリザベスも追いかけて行った。 

 去って行く勇者パーティーが見えなくなると、スカーレットはこちらに振り返り少し申し訳なさそうに口を開いた。


「すまんなリアム、奴のパンチが見えていたろう? 余計な手出しをしてしまったようじゃ」

「いや、あの時俺はあいつの拳を見る事に集中しすぎていた。見えてはいたが躱すって判断ができなかったよ」

「うむ、そこまでわかっていればよい。次は躱す、受けるなどの対処も教えよう」

「ああ! よろしく頼むぜスカーレット!」


 俺の返答を聞いたスカーレットは満足そうに頷いた。

 スカーレットに修行してもらうまではブレイドの攻撃を目で追うなんてできなかった。そう思うと、勇者パーティーの奴らに会っちまったのは災難だったが、俺は自分が確実に強くなっていると実感する事ができたんだ。

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