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リー大佐の追憶

”ドラコの狂犬”こと、リー大佐が頭角を現すエピソードです。

ボクは彼の生き方にも少しだけ共感を覚えるところもあります。

本編では極悪非道っぽい彼にも、彼なりの哲学だったり、生きていく彼なりの思いがあります。

そんな情景を描いてみました。

本編の時間軸で言えば、インターミッション4.5 それぞれの前夜の最後になります。

長すぎたので別置きしました。

その日、リー”少佐”はゴライアスの中から戦場を見渡していた。既に味方は総崩れだった。

帝国統一歴697年、惑星ダゴルラド。リーの部隊は確実に追いつめられていた。

周りには、もうプトレマイスのアンドロイド兵しかいなかった。

ここはプトレマイス王領との地域紛争の最前線だ。

紛争なんて別に珍しくも何ともない。これが”帝国の平和”なる星系の日常だからだ。

昨日も今日も、5大星系領主たちは取ったり取られたりのゲームを、際限なく繰り返している。

(所詮俺はゲームの駒だ)リーは自身の立場をよく理解していた。

とは言え、ここで簡単に穫られて生を終えるのも面白くない。

それでリーは自身の小隊に命令を下す。

リーの小隊は、今回初めて編成された人型機動兵器”ゴライアス”から成る小隊だった。

ゴライアスは元々、防御力を重視した拠点防衛兵器として開発された。

しかし守るべき拠点は、もう敵プトレマイスのアンドロイド兵の攻勢の前に潰えようとしていた。

プトレマイス王領の軍は、アンドロイド兵の運用に優れるとの評判を取っていた。

それはリーも否応無く認めざるを得ない。

事実、目の前でプトレマイスのアンドロイド兵は、ドラコのアヴァタール部隊の弱点を着実に衝いて、次々と仲間を撃破していった。

もはや前線指揮官はリー以外には存在していなかった。

だからリーは後顧の憂い無く決断出来たのだろう。

「ゴライアス小隊に告げる。近接武器を装備し敵部隊に突撃。優先撃破目標は敵アヴァタール指揮官!」


リーの小隊4機は、突如としてプトレマイス領の自軍に10倍以上する敵部隊に向かって突撃を開始した。

プトレマイス軍はゴライアスを防御兵器と認識していたため、その攻勢への対応策をアンドロイド兵にプログラムしていなかった。

アンドロイド兵は、命じられたプログラムに沿って着実に任務を遂行する。

それが戦場において、兵を人からアンドロイドに置き換えた理由であったが、プログラム想定外の状況に対応出来ないとの弱点もあった。

人工知能は人のサポートには優れても、単独ではまだ人に敵わない部分はあったのだ。

・・・母星時代の古代期でもあるまいし、今時武器で直接殴ってくる兵器は存在しない。

その考え方が、プトレマイス王領軍の油断だったのかも知れない。

レーザーをシールドで無効化し、電磁バトルアックスでアンドロイド兵をなぎ倒しつつ、アヴァタール指揮官機に迫るリー達ゴライアス小隊。

近接武器を装備しないアヴァタール士官とアンドロイド兵は、ゴライアスの暴力に対抗出来なかった。

狂気のバーサカーの如く斧を振り回す、現世の巨人兵達は戦場で存分に暴れまくった。

60機いたプトレマイスのアンドロイド兵は、瞬く間に数を減らし既に半分近くになっていた。

特に、リーが搭乗するゴライアスの動きが凄まじかった。

行く手を遮るアンドロイド兵を、両手に装備した斧と剣で破壊の限りを尽くし、敵前線司令部に向かって一直線に進む。

おそれをなしたプトレマイスのアヴァタール士官がじりじりと後退する。

鬼気迫るその戦いに、プトレマイス部隊の包囲網の一角がついに崩れた。

崩壊した包囲網からリーのゴライアスが飛び出し、敵司令部の中に踊り込んだ。

目に付くもの片っ端から破壊し野獣の如く飛び回り、周りに死をバラ撒いて行く。

リーの目の前に、敵前線指揮官クローンの恐怖に歪んだ顔が浮かぶ。

そして次の瞬間に、敵指揮官の首が宙を飛んだ。


指揮系統を破壊されたプトレマイス部隊は崩壊し、個々に逃走を試みたが戦場に逃げ場は無かった。

既に壮絶な掃討戦が始まっていた。そこに慈悲は無かった。

降伏する暇もなく、全てのプトレマイスのアヴァタール士官が死んだ。

彼らの部下のアンドロイド兵は全て破壊された。

プトレマイス王領のダゴルラド攻略部隊は、10機のアヴァタールと60機のアンドロイド兵を全て失い壊滅した。

ドラコ星系軍が惑星ダゴルラドに遅れてリー達部隊の救援に赴いた時、戦場に立っていたのはリー達ゴライアス小隊4機のみであった。

この戦いで、リー達のドラコ陸戦隊は伝説の存在となった。

”ビースト””アンドロイド殺し”数々の悪名が生まれ、全ての星系領の陸戦隊はリーの部隊を恐れた。味方でさえも・・・。


(あれから、もう10年も経ったのか・・・)

リー大佐はドラコ第3アヴァタール・レギオンの指揮官として、惑星強襲母艦”ゴルゴロス”の艦橋にいた。

あのダゴルラド戦役以降、リーの陸戦隊はいろんな戦場を駆けめぐり、敵に恐怖を与え続けた。

”ドラコの狂犬”との悪名も次いで頂戴した。

リーにとって、悪名とは戦場での勲章に他ならない。

リーは次の戦場に思いを馳せる。

この戦場暮らしがいつまで続くのだろうか・・・。

(構うものか)リーは独り小さく笑む。戦場はもはや自分の故郷だ。

戦場に生き、いつか戦場に斃れる。それが自分には相応しい。

「戦いに理由わけを問うこと勿れ。我も問わじ」

その言葉は、リーがドラコ星系軍に入って初めて殺した敵の言葉だった。

名も知らない、漆黒のパワードスーツに身を包んだシルエットが印象的な、頑強で手練れのクローン兵だった。

長い戦いの果てに声もなく斃れたその敵を、リーはいつしか”黒騎士”と呼び時々思い出した。

リーが自分の装備に漆黒を使い始めたのは、それからの事だった。


艦橋のスクリーンには何も写っていない。もうすぐ時空の裂け目に入る。

裂け目から出れば、そこはもうロスト・コロニー惑星”ロスロリエン”だ。

自分には、星もない漆黒の宇宙そらが似合っている。

そんなことを思いながら、リーは自身が眠りにつくカプセルへと向かった。

この一編は、正確には”リー大佐へのレクイエム”とした方が良かったかも知れません。

本編では敵役のリー大佐でしたが、実はボクの密かな好きキャラでもあります。

早くの退場に、一番後悔してる残念な作者であります。

彼にはもっと活躍の場を与えたかった。

ですから、大好きなリー大佐に捧げるお話にしました。

たぶん彼は、これからも様々な人々の思い出に上がってくることでしょう。

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