表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の祈り  作者: Yuki-N
8/12

聖也⑥

 聖也は、唐突に、伯父の別荘に戻っていることに気づいた。

 海洋連邦宇宙軍の制服のまま、ベッドに横たわっていた。慌てて起き上がると、部屋の鏡をみる。三十路を間近に控えた自分の姿が映る。

 馬鹿な。

 伯父の別荘は古くなり、数年前に取り壊した。もう、ないのだ。

 それに――。

 聖也は思い出した。自分は、火星探査ミッションに行き、そこで小型船で漂流し、死を待つばかりになっていたはずだ。

 これは夢か?

 壁のカレンダーを見ると、十五年前。あの年だ。真由の祖父、城島健介が急死し、真由がいなくなったあの年。

 今は、何月何日だ?

 もう、予想はついていた。ベッドルームの端末モニターのスイッチを入れると、日付が浮かび上がる。

 あの日だ。

 真由の父親と会い、結局何もできずに、真由を失った日だ。

 ということは、聖也、十五歳の聖也がソファにいるのか?

 確認しなくてはいけない。

 聖也は、そっとベッドルームを抜け出すと、リビングへと向かう。リビングに明かりはついていない。だがあの日、聖也は部屋を暗いままにしていた。

 ――いるのか? あの日の自分が? あの日の自分と対面してしまったら、何が起きるのか?

 そもそも、時間を遡るなど、あり得ない。とすればこれは夢なのだろうか。もう一度、あの日をやり直したいという自分の夢なのだろうか。

 リビングへのドア、その嵌め殺しのガラスから中を窺うが、どうやら人の気配はない。夢であれば、何でもありだろう。何が起きたところで、小型船に戻れば自分は死ぬしかないのだ。何も恐れる必要などないのだ。

 聖也は、思い切ってリビングのドアを開けた。

 ソファには、誰もいなかった。

 ――そう、恐れることなど、何もない。

 聖也は、腰のホルダーに手をやった。宇宙空間、あるいは船内での作業用の万能工具。低出力で的に向けて放電すれば、数メートル先の人間に対してスタンガン代わりになるはずだ。

 ――真由を助けに行こう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ