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結果 1

 

「……お腹減った」

 

 夕方になって目を覚ました私は、直ぐにリビングへと降りた。

 

 ……パパの荷物が無い、本当に行っちゃったんだな。

 

 リビングにあった大量の荷物と、机の上にあるパパが置いて行ったであろう封筒を見て、私の祈りを神様は叶えてくれなかった事を悟った。

 

「す、凄いお金。 絶対こんなに使わないよ」

 

 封筒の中には現金20万円とパパからの手紙が入っていた。

 

『みくへ。 荷造り手伝ってくれて本当にありがとうね。

 それからごめん!! 遊園地行く約束は忘れたわけじゃなから!! 次の休みに絶対行こう!! 

 何かあったら直ぐに連絡してくれよ?? それからこのお金は自由に使ってくれ!! 友達との遊びにも使って良いからな』

 

 

 約束覚えててくれたんだ……。

 

 パパが約束を覚えてくれた事が嬉しくて、私は少しだけ気分が良くなった。

 

「……友達との遊びかぁ」

 

 台所にあったカップ麺にお湯を注ぎ、完成を待ってる間に夏休みの予定を考える。

 

 まずは学校の課題を終わらせて……その後は何もないかな、遊ぶ友達なんて私には居なっ。

 

「あっ!! ゆきさんから連絡来てるかも!!」

 

 私は急いで部屋へと戻り、スマホを確認した。

 

 スマホの画面には、新着のラインと着信履歴が一件表示されていた。

 

「ゆきさんからのラインだ!! あとは……知らない番号だけど誰だろう??」

 

 一先ず着信は無視して、私はゆきさんのラインに目を通す。

 

『みくちゃんー!! バイト受からなかった……無念!! みくちゃんはどうだった??』

 

 ……ゆきさん面接駄目だったんだ、ゆきさんが落とされるんなら私なんて絶対に無理だよ。

 きっとこの着信は断りの電話なんだろうな。

 

『こんばんわ。 連絡ありがとうございます!! バイトの合否は電話で来るんですよね?? 

 私、寝てて取れなかったんですけど多分駄目って連絡だと思います』

 

 あっ、既読ついた。

 

『え?? 違うわよ?? 人数が多いから受かった人だけに今日の13時に連絡するって説明されたでしょ?? 

 ってもしかしてみくちゃんには電話きてるの?? それってつまり採用って事じゃないかしら!! 

 やったじゃない!! 私に連絡するより早く掛け直したほうが良いわよ!!』

 

 う、嘘?? 本当に?? 間違い電話じゃなくて??

 

 ゆきさんからのラインを見て私は直ぐに着信履歴を確認する。

 

 その電話番号は私が面接を受けたあの占いのお店のものだった。

 

 

「か、掛け直した方が良いかな?? で、でももう3時間も前の電話だし今更遅いかも……」


 私以外誰もいない空間なのに、思わず質問口調で呟いてしまう。

 

「……ま、間違って掛けてきただけかも知れないし、一様確認だけしようかな。 あっ、忘れ物したのかも知れないし」

 

 必死に言い訳を探しながら、私は履歴に手を伸ばした。

 

 

 電話のコールが耳元で3回程響いた後、落ち着いた声がスマホ越しから聞こえた。

 

 

「はい。 こちら占いの館でございます」

 

「……も、もしもし、私です!!」

 

「えっーと……すいません、どちら様でしょうか??」 

 

「あっ、すいません!! 私、三上みくです!! で、電話が来てたので、そのっ!!」

 

「みくお嬢様ですか!! 執事のジェイムズです。 良かったです、ご連絡がつかずどうしようかと思っていたのです。

 折り返しのご連絡感謝いたします」

 

「い、いえいえ。 すいません、私今までずっと寝てて……そ、それで、どうして私に電話をしてくれたんでしょうか??」

 

「昨日の面接の件です。 旦那様と話し合った結果、みくお嬢様に私共のお仕事を手伝って頂きたくご連絡いたしました。 

 どうでしょうか?? 宜しければお引き受け願いたいのですが」

 

「……えっ??」

 

 その言葉を聞いた時、私は電話越しで絶句してしまった。

 

 まさか本当に採用の連絡だなんて思ってなかったから。

 

「厳しいでしょうか??」

 

「あっ……」

 

「そうですよね、みくお嬢様が困惑される理由もわかります。 占いの仕事はなかなか一般には理解し難い事柄でもありますから。 

 どうでしょう、みくお嬢様さえ良ければもう一度お会いして話しませんでしょうか?? 

 バイトをするかどうかはまたその時に判断なさると言う形でも構いませんので」

 

「……わ、わかりました」

 

「ありがとうございます。 ご主人様もみくお嬢様とはもう一度お会いしたいとおっしゃっていたので喜ばれる事でしょう。 いつ頃なら都合が良いでしょうか??」

 

「い、いつでも大丈夫です」

 

「では明日の午前11時はいかがでしょうか??」


「は、はい!!」

 

「ありがとうございます。 では、また後日お待ちしていますね。 失礼いたします」

 

 ジェイムズさんはそう言い残し、私との通話を切った。

 

 


 い、一体どうして私を?? 

 

 今までの会話が全部夢なんかじゃないかとさえ思い、自分のほっぺたをつねる。


 ……痛い。

 と、とりあえずゆきさんに連絡しなきゃ!!

 

 後が付きそうなくらい耳に押し当てていたスマホを離し、直ぐにゆきさんへとラインを送る。

 

『採用の電話でした……ど、どうしようゆきさん。 私、バイトなんてした事ないからどうしていいかわからなくて』


 ゆきさんからの返信はまたも直ぐに返ってきた。

 

『凄いじゃない!! でも、私もみくちゃんなら受かるかもって思ってたわ!

 バイトの経験なんて気にしなくても大丈夫よ。 司先生がみくちゃんを選んだ理由はもっと別の事だと思うから!!』

 

『別の事ですか??』

 

『えぇ。 気になるなら先生に直接聞いてみても良いんじゃないかしら。 

 それより本当におめでとう!! あっ、今度ご飯行く時にまた色々教えてね??』

 

『ありがとうございます!! はい!!

 ゆきさんとのご飯楽しみにしてます!!』

 

 私の返信にゆきさんは可愛らしいスタンプを返してきた。

 

 



「……制服綺麗にしておこうかな」

 

 急に出来た明日の予定の為に制服に手を伸ばして粘着ローラで念入りに掃除をした。

 


 何か忘れてる気もしたけど、そんな事はどうでも良かった。

 

 人生初めてのバイトの面接に受かった事、あの人が、司先生がもう一度私に会いたいって思ってくれた事に私はとても嬉しくなった。

 


 ……もしかしたら、忘れられない夏休みになるかも。

  

 夏休み初日にかかってきた、たった一本の電話に私の心はかなり舞い上がっていた。 

 


 その日の夜になってようやく気付いたカップ麺でさえ、いつもより少しだけ美味しい気がした。

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