出張
「みくー!! ちょっと来てくれ!! 大事な話があるんだ!!」
「……うん、わかった」
リビングから響くパパの焦った声で目を覚ました私は、直ぐに階段を降りてパパの元へと向かった。
手に持ったスマホで時間を確認すると、もう22時を回っていた。 どうやら帰って来てから6時間も寝てしまっていたらしい。
……それにしてもパパどうしたんだろ?? 私が起きてこないから心配してるのかな。
「ど、どうしたのパパ??」
「みく!! 良かった、もう寝ちゃったのかと思ってたよ!! いや、実は父さん急に出張が決まってね。 明日にでも行かなきゃならなくてさ、悪いんだけど荷物をまとめるのを手伝ってもらえないかな??」
リビングに着いた私を見てほっとしたのか、パパは額の汗を拭きながらそう言った。
「しゅ、出張?? 明日から?? い、いつ帰って来れるのかな??」
「うーん、それがまだわからないんだ。 早ければ2週間くらいだけど、最悪1ヶ月くらいになるかも知れないんだよ」
「い、1ヶ月も?? えっ、でも、私明日から夏休みで……その」
「悪い!! どうしても断れなかったんだ!! まぁ、そんなに遠くに行くわけじゃないから、何かあったら連絡してくれ!! それより、荷物まとめるの手伝ってくれ!! 頼むよ、父さん一人じゃ絶対に朝までに終わらないんだ!!」
「そ、それは良いけど……で、でも私一人で1ヶ月もっ」
「ありがとうみく!! やっぱ頼りになるのは、愛しの娘だな!! じゃあ早速生活用品をまとめてもらって良いか?? あっ、カバンはそこに出してるから!!」
私の言葉を遮ってパパは大きく頭を下げた。
「……わ、わかった」
その姿に私はそれ以上、何も言えなくなってしまいパパに言われた通りに荷造りを手伝う事にした。
ま、まぁそんなに遠くに行かないみたいだし、そんなに心配しなくても大丈夫かな?? ……でも出来れば行って欲しくないなぁ、今年の夏は一緒にテーマパークに行く約束もしてたのに。
パパに対する不満を口に出して伝える事は出来ずに荷造りが終わるまでひたすら手を動かしていた。
「はぁー、やっと終わったよ。 ありがとうなみく、これで何とか間に合いそうだ」
汗の染み込んだシャツの袖をまくり、息を切らせてパパは安心したように言う。
「う、うん……間に合いそうなら良かった」
私は横目でリビングの時計を確認する。
もう3時だ……急だったから凄い時間かかっちゃった。
「ごめんな、みく。 こんな時間まで付き合わせて。 かなり疲れただろ?? 今日から学校も無いんだし、ゆっくり寝てくれな。 父さんはこのまま朝の飛行機に乗るよ。 あっ、心配しなくてもお金は置いていくから!!」
「えっ?? も、もう出発しちゃうの?? そ、それに飛行機って……パパ、何処に行くの??」
「ん?? 北海道だよ?? そうだ!! お土産いっぱい買ってくるから楽しみにしとけよ!!」
「ほ……北海道??」
陽気な笑顔でそう言うパパの姿に、私は急に不安になった。
北海道なんて全然近く無いよ……どうしよう、やっぱり嫌だって言おうかな。 1ヶ月も1人なんて多分私には無理だろうし……。
「あ、あのねパパ……やっぱり今回の出張っ」
「あっ!! そういえばみく、面接はどうだったんだ?? やっぱり緊張したか?? ごめんな、みくにはまだ早いって言ったんだけど、参加だけでもして欲しいって言われてな」
「あっ……そのっ……うん、緊張はしたけど行って良かったかも。 う、受かっては無いだろうけど」
「そうか……まぁ父さんは詳しく知らないが、かなり人気のバイトらしいからな。 でもみくが行って良かったって思ってくれて嬉しいよ。 本当にありがとうね」
「う、うん。 ……じ、じゃあ私はもう寝るね。 出張頑張ってねパパ」
「あぁ、ありがとう! 行ってきます!!」
急な質問に困惑した私は逃げる様に部屋へと戻り、パパの出張が白紙になる事を祈りながらベットに入った。




