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面接 4


「さてと、早速で悪いんだけど面接を開始しても良いかな?? まずはそうだな……やっぱり自己紹介からお願い出来るかい??」

 

 落ち着いた口調で先生がそう言うと、最初に部屋に入った男の人は大きな声で返事をした。 

 

「はい!! 私の名前は、上代裕司です。 青藍高校の2年生で、趣味は読書や映画鑑賞です!! この度は先生に恩を返せるとチャンスだと思い、このバイトに応募しました!! よろしくお願いします!!」

 

 あ、あの人、青藍高校なんだ!! 凄い!!

 

 青藍高校はこの辺りでは有名な進学校だ。 そんな人までこの面接に来ている事に私の緊張は益々膨れ上がった。



 その後に続く人達も先生と何かしら繋がりがあったり、有名な高校や大学の名前ばかりで私なんか完全に場違いだった。

 

「ありがとうね、じゃあ最後の君……あれ?? 君とは初対面かな??」

 

「あっ……は、はい。 すいません……私は……その、楽代高校一年生の三上みくです。 

 その、バイトの経験は全くなくて役に立てるかはわかりませんけど……が、頑張りましゅ!!」

 

 さ、最悪だ。 

 

 全然出てこない言葉や思う通りに動かない自分の口が心底嫌になる。 


 何もこんな時にまで噛まなくたって良いのに……やっぱり私には面接なんて無理だったんだ。

 

「そうなんだ。 ありがとうね、嬉しいよ」

 

 そんな私の気持ちを察してか、先生は優しく微笑みを返してくれた。

 その笑顔はとても格好良くて私の心臓は今まで聞いた事ない音を鳴らしていた。

 

「じゃあ自己紹介も済んだ事だしこれからいくつか質問させて貰うね。 

 そうだなぁー、全員学生さんだから最初はこの質問にしようかな。 

 あっ、これは順番に答える必要はないから、答えが決まった人から手をあげて貰えるかな??」


 先生の言葉に、私以外の4人は「はい!!」と即答した。


「良い返事だね。 さて、じゃあ君達にとって『大人』とは一体何かな??」

 

 お、大人とは何か?? ……どうしよう、全然考えた事もない。

 

 戸惑う私を他所に他の4人は既に手を挙げていた。 

 

 はやっ!! えっ?? もしかしてこれって結構有名な質問だったりするの??

 

「……じゃあ、裕司くん。 聞かせて貰えるかな?? 君にとっての大人とは何かを」

 

「はい!! 私にとっての大人とは、自分の意見をしっかりと言える人であり、その発言に責任を持てる人だと考えてます!!」

 

 す、凄いなぁー、直ぐに答えられるなんて!! それにこんなに自信満々に。

 

「なるほどね……じゃあ次、沙織さんはどう考えているんだい??」

 

 そこから、先生は他の人達に同じ様に尋ねた。

 

『経済的に自立してる人』 

『一般常識を身につけている人』

『他人の気持ちを考える事が出来る人』


 質問された他の3人も特にもたつく事なく、自分が思い描く『大人』を語っていった。

 

 

「ありがとうね。 それじゃあ、最後にみくさんの考えを聞いていいかな??

 君にとって『大人』とは何だい??」

 

「え、えっーと……その」

 


 ど、どうしよう、他の人達が話している最中も必死に考えたけど全然思いつかない……私にとっては今一緒に面接を受けているこの人達でさえ、随分と大人に感じてしまう。

 


「みくさん?? 大丈夫かい??」

 

「す、すいません……わ、わかりません」

 

 沈黙する空気に耐えられなくなった私には俯きながらそう答えるのがやっとだった。

 

「わからない……それがみくさんの答えでいいのかな??」

 

「……はい」

 

「そう、ありがとうね。 じゃあ、次の質問に行こうか」

 

 そう言うと、先生は手に持っていた紙に何かを書き始める。

 


 その後の事はもうあまり覚えていない。 先生の他の質問も、他の人達が何を話したのかも。

 覚えてるのは私はずっと俯いていた事だけだった。

 


 そしてそのまま私の人生初めてのバイトの面接が終わった。

 



     

「はぁー……本当に最低だ、私」

 

 家に帰った後、私は直ぐにベットに飛び込んだ。 

 盛大にやらかした面接を、今でも恥ずかしく思う。

 

「……ゆきさんはどうだったんだろ。 上手くいったのかな??」

 

 寝転びながらスマホの連絡先を見て、せめてゆきさんの面接が上手く行った事を祈りながら、私は目を瞑った。

 


 ……司先生、本当に格好良くて優しそうな人だったなぁ。 もうちょっとお話してみたかったかも。


 目を閉じて一番最初に浮かんだのは、司先生の優しい笑顔だった。

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