プロローグ
蒸し暑い体育館に煩い蝉の鳴き声、そしていつも通り長い校長先生のあいさつ。
周囲が溜息混じりの声を漏らす中、私の気分も同じように下がっていた。
理由は明白だ。 入学してから待ちに待った夏休みなのに友達との予定が全くない事。
それに昨日の夜、パパに頼まれたお願い事。 この2つが私にとっての今の悩みだ。
『占い師の面接とか、しんどいなぁー。 帰ってドラマの続きが見たいよー!!』
手に持っていたスマホで、数えるくらいしか居ないフォロワーに向けて不満を呟く。
『えっ? みくちゃん占い師のバイトするの?? やめた方が良いんじゃない?? 絶対危ないよ!!』
『けんじさん!! おはようございます!! 大丈夫ですよー!! 募集はたった一人だし、なにやら有名な人らしいから受かるとは思ってないですから!! まぁこれも社会見学って事で気楽に行ってきます!!』
けんじさんは私の数少ないフォロワーの一人でいつもコメントを返してくれる優しい人だ。
『そうなの?? でも気をつけてね?? 占い師なんて偽物ばっかりなんだし、もしバイトする事になっても程々にね』
『はーい!! 心配してくれてありがとうございます!!』
私は直ぐに返事をしてスマホを再びポケットにしまった。
顔を見た事も声を聞いた事もない人からの返信に思わず緩んでしまった表情が、暗くなったスマホの画面に映し出されていて少し恥ずかしくなったからだ。
けんじさんの言う事は私にもわかっている。 私だってもう子供じゃないのだ。 占いを『本物』だとは思ってない、他人の未来や運勢なんてものが見える人なんてこの世にはいない。
あくまで統計学らしいしね……そ、それよりも今日も何とか人と会話出来た!! この調子でこれからは直接会った人とも話せる様になりたいな!!
SNS上での会話だけでも気分が良くなる私を我ながら単純だなぁーと思いながら、壇上で汗を流し必死に話す校長に視線を戻し、この式が少しでも早く終わる事を私は祈っていた。




