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笹と獺虎のコーヒーブレイク  作者: 仇 媒鳥
6/9

六話

 コンビニから出て左へ向かうと、二人は街路樹の周りに設けられたベンチに腰掛けた。丁度街路樹の葉によって日光が遮られていて、日陰になっているのだ。


「えーと、ツナマヨ、と、マグロのたたき、ね、はい」彼女は笹川におにぎりを渡してきた。


「あ、あとこれ、飲み物。サービス」


「サンキュー」


 飲み物の缶は汗をかいていた。きちんと冷えているようだ。


「……えっと、ふるふるゼリー?なに、これ」物珍しそうにラベルを眺め、笹川は聞く。


「ん?なんか適当に選んだんだけど。新発売だって。もしかして飲めない感じだった?」


「いや、そんなことはない。と、思う。実は、僕ジュースとかって飲んだことないんだよね」


「えぇー!嘘でしょ!?ジュース飲んだことないって……りんごジュースとかも飲んだことないの?」


「うち、基本麦茶だからね。ジュースは身体に悪いって、親が言うんだよね」


 そうなんだ、と彼女は相槌を打ち、笑った。


「じゃあ、これが初めてのジュースじゃん。飲んでみてよ、初めての飲んだ感想聞かせて」


「そんな大したことじゃないだろ」笹川は笑った。


 ラベルには小さく『よく振ってからお飲みください』と書いてあったので、笹川はよく振った。


 プルタブを引く。勢いよく、プシューと音がした。


「うーん、不思議な味というか、食感。柔らかくて緩い蒟蒻食ってるみたいだ」


「一応ゼリー飲料らしいからね。って言っても、私もよく分かんない」彼女は笑った。「実は、ゼリー飲料って私も飲んだことないんだ」


「なんだ、無いの?まあ、新発売みたいだしね。冷えてて、そこそこ美味しいよ。あ、じゃあ、ちょっと飲んでみる?」何気なく、笹川は缶を差し出す。


「ーーえっ……ど、どうしよっか、なー……」突然の誘いに、彼女は逡巡した。いや、逡巡したフリをした。しかし、元から腹は決まっていた。


「…………じゃ、じゃあ、飲む……お言葉に甘えて……」


 彼女は缶を受け取った。その頬は赤く染まっているように見えなくもなかった。きっとそれは、暑いからだ。暑い時には冷たい飲み物と、相場は決まっているだろう。理屈は通っている。


 缶を傾けて、中から出るドロリとしたゼリーを喉に流し込む。冷たいゼリーが食道をぬるりと伝う。これは、喉ごしがいい。


「…………うーん、なるほどね、うん、うん……何とも言えないね。でも、おいしいかな。はい、ありがとう……」


 笹川は缶を受け取り、口を付ける。彼女はそれを横からただ見つめていた。

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