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笹と獺虎のコーヒーブレイク  作者: 仇 媒鳥
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一話

 赤羽櫻子は走っていた。


 セミの声がよく響く、とある初夏の日。窓からは猛烈な日差しと生ぬるい風が吹き込み、カーテンを揺らしている。昼休みに廊下へ出た生徒たちの顔は一様に火照り、下敷きで胸元をパタパタと仰ぎながら、その額には汗が滲んでいた。


 そんな中、ドタドタと廊下に足音が響き渡る。周りの生徒は、場違いに走る彼女を奇異な目で見ていた。


 これまでに一体いくつ角を曲がったか分からない。


 遥か後方から飛んでくる本気の罵声を背中に浴びながら、彼女はただ走っていた。


 幸いにも、彼女はその逃げ足に自信があった。腕で額の汗を拭う。


 全速力で駆けながらも、彼女は次に隠れる場所を探すために必死に頭を回転させていた。


 どこだ……どこだ……。


 また一つ角を曲がった。その時ーー


「あぶないっ!」反射的に彼女は肩を横にずらした。


 危うく向かって歩いてきていた女子生徒と衝突するところだった。しかし構っている暇はない。ごめん!と振り向きながら謝り、すぐに向き直って駆け出した。


 長い廊下を走った。


 二段飛ばしで階段を上がった。


 彼女は止まらない。止まれない。後ろを振り返る余裕はなかった。


 息を切らせながら次の廊下の角を曲がったその時、あるものが彼女の視野に入った。


 あ、あそこに行けば……!


 彼女の目がきらりと輝き、やんちゃをする前の悪戯っ子のようにその口元が歪んだ。

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