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「まずは、橋モンの部屋の様子からネ。ついてくるヨ。」
南は、自分を中心に魔方陣を展開した。魔方陣と呼ぶには些か機械的で、その模様はまるで時計の中身のように密度が高かった。
クウガと蔵屋敷は南に密着し、そのまま橋モン陣内の転送した。
「やっぱ、合理的だよねー 南さんの魔方陣。」
「世辞は要らないネ。説明するヨ。」
南は床に散らばっている本やらなにやらの書物をかがんで説明した。
「この書物の文字だガ、お前らの言う通り初めて見かける文字ね。機械で調べたらしっかり“変換”されたネ。まあ、物の状態から見て、5か月くらい前ネ。」
ー変換とは、個々人が新たな異世界からの書物を目にした時に発生する現象である。異世界の文字はすべて自身が読める言語に自動変換される。これを一般的に変換という。その世界の言語を目にしたら、それ以降同じ世界の書物は初めから自身が読めるものになっている。
「それとこの書物の量からして、魔術系の可能性が高いガ、おそらく違ウ。」
「…? 何でです? 普通魔術じゃないんすか?」
「…これだから新人は嫌いネ。喝妈妈的胸部」
南は振り向きクウガをキッと睨みつけた。予想以上の視線の痛さにクウガはたじろいでしまった。
「…そもそも異世界はそんな簡単に行き来できるものじゃないネ。少し前と比べて来やすくなったガ、それは0%がμ%に変わったとかそんな程度ヨ。」
「そ、そりゃあそうっすけど…」
「そんな星5もびっくりな激レアの実力者がわざわざ絵本みたいな魔術本を持ってくるかってことだよね? 南さん。」
「大奖!!! この家の奴は中々頭のキレる異能か超人ネ。聖遺物ならもっと楽ネ。」
蔵屋敷が取り上げた本は、お粗末にも絵本の類でしかない。つまり、魔術が妄想の類になっている世界線なのである。
「あ… いや、でも実力者ってことは決まってないってことっすよね? たまたま異世界に来た人で、敵意はないんじゃ…」
「敵意が無いなら、それで御の字ネ。頭の良いキャラは大抵何か行動に移すことが多い。」
「うん、陣内って人が潜伏していたのも気になる。」
「そう、そして俺の予想が正しけれバ…」
ダンッ!!!!
治っていた陣内のドアは再び破壊され、そこから現れたのは黒服の集団であった。
「相変わらず悪趣味な制服ネ… カ〇ジのコーポレーションのほうがかっこいいネ。」
「南さん!!! こいつらって」
「そうヨ、新人。異能暴力指定団体ネ。」
「ここの住人に用があってきた。投降して、おとなしく場所を吐け。」
黒服の先頭に立つ男はマシンガンを携帯していた。
「做吧、平和だった日本もこんなに荒っぽくなったカ…」
「何を喋ってる!!! 撃つぞ!?」
「黙るネ。モブ」
「モ…!」
「南さん、あたしちょっと戦いたいんだけど…」
「ダメネ。近所迷惑ネ。帰るヨ。」
南は魔方陣を再度展開し、青い粒子とともに、3人は消えていった。
「南さんひどいよー あたし戦いたかったー」
「喚くナ、小娘、あんな場所で戦ったら俺も責任発生するネ。」
「南さん、それよりも、現場が彼らに取り押さえられちゃったじゃ無いすか!!! ヤバいっすよ!!」
「口を閉じるね、童貞。いわれなくとも、全部持ってきてるネ。」
「…全部? アダッ!!」
クウガの頭から突如本が降り注いてきた。
「中国人是精明的。さあ、早く中華街いくネ。お腹すいたヨ。今日は鱈腹食えるネ!!!」
後日、南の昼飯代は支給されなかった。