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6 月 の 花 嫁

作者: あっきぃぃ

ラジオの中で読む朗読用に書き下ろした作品です。

6月の放送だったので、季節に合わせた小説をということで書きました。

YouTubeにてラジオの聞き逃し配信も行っております。

https://youtu.be/V0vgHQekpkY

志保 「いいなぁ。ジューンブライドじゃん」


久しぶりに会った幼馴染の志保に、6月に結婚する事を報告したら羨ましがられた。

ジューンブライド・・・6月に結婚する花嫁は幸せになれる。

当初は私もその有名な話を真に受けていて、「幸せになれるかなぁ♪」なんて浮かれた気持ちでいたりもした。

でも、少し日が立つと我に返った。それって、本当なのだろうか。ただの迷信という気がしないでもない。だから、


美優 「そんなの、ブライダル業界が作り出したただの迷信でしょ?」

志保 「うわー、そんなこと言うか。いいじゃん、いいじゃん。女の子の憧れだよぉ」

美優 「ふふっ。まぁね。じゃあ、志保も6月に結婚式あげないとだね」

志保 「嫌味か⁉私はまず、相手探しからだよ」

美優 「あはは。すぐでしょー」

志保 「そっかな〜。へへ、ありがと。でもさ、美優。・・・本当におめでとう!幸せにな

ってよね。」

美優 「うん。ありがとう」


そんな会話を交わしてからの結婚式の準備はとにかく大変だった。

両家の顔合わせから始まり、式場探し、引き出物選び、招待客リスト作り、そして、ドレス選び、新居と引っ越しの段取りまで。楽しみでワクワクしていた頃が懐かしい。

結婚相手の達也と毎日のように会って、話し合い、決めて。決めて。決めて・・・。


週末日曜日に結婚式の日を迎える段になって、ようやく、少しづつ「結婚するんだな」という実感が湧いてきた。

忙しいうちは、頭が、やらなければいけないことでいっぱいで、あまり物事をじっくり考える暇もなかったが、いよいよ週末が本番となった、火曜日の今日。

独身生活終わりの直前に一人の部屋で何もしないでいると、急に不安が押し寄せてきた。

何だかすごく心が沈んでいく感覚だった。


・・・・私、本当に結婚するの?

・・・・達也と、結婚しても良いの?


そんな事を考え出していく。

外を見れば、今夜は雨だ。


美優 「梅雨時だもんね、仕方ないよね…」


不安感は加速し、気持ちは、どんどん空模様と同化していく。

空が泣いているように、自分もなんだか泣きたい気持ちになってきてしまう。

雨も強くなっていくようだった。


美優 「・・・うぅ・あれ?」


涙が流れてきた。私、何で泣いているんだろう・・。


美優 「嫌だなぁ…。これ、マリッジブルーってやつじゃない?」


私は、まさか自分が、そうなるとは思っていなかった。でも、未来への不安で心が押しつぶされそうになってくる。


美優 「どうしたらいいんだろう。誰か・・・」


せめて、今、この雨がやんでくれれば、涙も止まりそうなのに・・・。

そう思った時、小学生の頃に『てるてる坊主』をお父さんと作った時の事を思い出した。


 それは、すごく楽しみにしていた遠足の前の日。

どしゃぶりの雨が降っていた。遠足が中止になってしまうかもしれない不安で私は泣きそうになりながら、窓の外を見ていた。


美優 「お父さん…明日…晴れるよねぇ」

父  「うーん。明日の天気予報はなー。雨だなぁ」

美優 「ううううう」

父  「そんなに楽しみなのか」

美優 「だって、せっかく志保ちゃんとおやつのお菓子も買ってきたのにぃぃぃ」

父  「ああ、わかった、わかった。泣くなよ。・・・それじゃあ、よし!てるてる坊主を

作ってみるか」

美優 「てるてる坊主?」

父  「知ってるだろ?」

美優 「うん。知ってるよ」

父  「てるてる坊主にお願いしたら、きっと、晴れになるさ。な!」

美優 「うん!作る‼」


そうして、お父さんと一緒にてるてる坊主を作ったのだ。2人で一緒にてるてる坊主を作っている様子を笑顔のお母さんが見守ってくれていたっけ・・・。

何気ない、家族の1ページ。

でもとても幸せな時間だったのだと今なら分かる。

何故、今、そんな事を思い出したのかはわからないが、少しだけ心が軽くなったような気がした。


そしてその時、電話がなった。なんと達也からだった。


美優 「どうしたの?」

達也 「いや、なんだか声が聴きたくてさ・・・泣いてるの?」

美優 「何よ?急に。・・・・別に泣てないし。眠かったから、そんな声になってるだけでしょ」


なんとなく、不安になっていたことを必死で隠す。


達也 「・・・・外・・雨が降ってるなぁ」

美優 「うん」

達也 「日曜の結婚式の日も雨の予報だって」

美優 「そうなんだ。嫌だねー。お客さんも困るだろうなぁ」

達也 「だからさ、明日…一緒にてるてる坊主作らない?」

美優 「・・・はぁ?」

達也 「てるてる坊主。知ってるだろう?」

美優 「そりゃ知ってるけど・・」


達也の姿が思い出の中のお父さんの姿と重なる。

そして、可愛い達也の発言に思わず笑みがこぼれる。


美優 「ふふふ・・・・。うん作る。ふふふ」

達也 「なんだよ、笑うなよ。俺だってちょっと恥ずかしいと思ってるんだから」

美優 「はいはい。…ねえ、達也…だいすきだよ」

達也 「なっ⁉…‥‥おれも…だよ」


未来は自分たちで、描いていくものなのだ。

お父さんと、お母さんが描いてきたみたいな、幸せのページを、私も描いていくんだ。

ジューンブライド。

6月の花嫁は幸せになれるんじゃない。

絶対に幸せになるんだ。

私と達也で、最高に幸せになってやるんだ‼



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[一言] 良かった、ハッピーエンドだった
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