1話
2月13日 大隅高校 3年B組
昼休みの教室。そこは賑やかで明るく活気に満ちている。そんな中にあって一人だけ机に突っ伏している男がいる。
濱田 勝悟
寝ているわけではない。しかし彼は寝ているかのような体勢でいる。つまりは、ぼっちなのだ。孤独なのだ。友達がいないのだ。
視覚は暗闇に閉ざされているが聴覚は周囲の様子を強く窺がっている。これで時間が過ぎるのを待つのが彼の日常なのだ。
「明日は2月14日だぜ」
「だから?」
クラスの中で最もチャラい、そして濱田が大嫌いな人物と密かにいいなと思っている女子が喋っている声を彼の耳は捉えた。
男の名前は前田 源。ロバのような顔をしている。
女の名前は島田 結花。胸がデカい。
「だから?じゃねーよ!チョコだよチョコ。くれんだろ当然」
「はー何いってんの?どうせ他の女から貰うんでしょ?」
「そんなことぜってーねえって」
「本当ー?」
濱田 勝悟のイライラ度が高まっていく。
「明日さー遊びいこうぜー」
「えーまじー?」
「まじまじ」
「まーいいけど。別に」
鼻息が荒くなってきた。そして奥歯を力いっぱい噛み締めている。
「エロい下着履いて来いよ。楽しみにしてっからさー」
「なにいってんのーここ教室なんだけど」
ブチッ!
楽し気な笑い声の中、濱田 勝悟の怒りは頂点に達した。
何がバレンタインデーだボケ!何がチョコだボケ!
殉教した聖ウァレンティヌスをしのんで喪服で黙とうをささげる事こそが最もふさわしい行為だ。断じてカップルがイチャイチャする日であってはならない!!
なにがエロい下着だボケ!ふざけんじゃねー!
だいたい女も女だロバみたいな面した前田なんかについて行くなんて馬鹿じゃねえか!ただチャラいだけのブス顔じゃねえか!
だいたいにして女は優しい男が好きとか言ってるくせに!全然違うじゃねえか!馬鹿か!目を覚ませ!
もー許さねえ。もー決めた。
ぶっ壊す
爛れきったバレンタインデーぶっ壊す!!!




