44 イタズラand窃盗andハイエナ。
皆さん、子どもは好きですか?あれ、この聞き方だとなんかヤバい人みたいだ。健全な意味で、教育的な意味で、子どもの相手をするのは好きですか?
私は前にも言ったけど、正直苦手です!
一昨日の対アンジェちゃんで、それなりに耐性が付いたと思ったけど間違いでした。アンジェちゃんがそこそこ良い子だっただけでした。直ぐに保護者も来てくれたしね。
この小学生男子、相当手のかかるイタズラ坊やでした……
お金の入った貴重な募金箱を二つ共握りしめ、私の存在なんてまるっと無視して足元の小銭を拾い集める少年。目も合わせてくれないけど、だからって私まで無視する訳にはいかないよね。
「とりあえず、その募金箱返して貰える?それ、お客様からの善意の結晶なんだよ?」
いくら金額が微々たるものでも!一ヶ月で千円ちょっとしか集まらなくても!募金と言うより、一円とか五円とかのお客様が要らない小銭を捨てるような箱になってたとしても!!超たまに千円札が入ってると逆にお客様のお財布事情を心配しちゃう事があっても!!!
とにかく募金箱は、大切なお客様からの思いやりの塊なのだ。それを奪うなんて、銀行強盗と同罪だよ?!
「だから、お前には関係ないだろ?いいからすっこんでろよ。」
「関係あるって!それ、私の店の物なんだから!極論、私の物って言っても過言じゃないんだよ?!」
「そうか、お前のか。じゃあくれ、貰うから。ほら、これでいいよな?」
「全然良くない!そんなに募金箱欲しいんなら、ちゃんとお買上げしてください!中のお金の分もしっかり貰うからね?いいの!?」
小学生と同レベルの口喧嘩を繰り広げるJK店長であった。
「……金?こんなオモチャみたいなのが金なのか?」
「あー…たしかにミオン硬貨と比べたら一円玉なんてオモチャかもしれないけど…れっきとしたお金だよ!いっぱい集めたら、なんだって買えちゃうんだから!!」
「へぇ…」
心なしか、お金と聞いた少年の目の色がギラリと変わった気がした。散らばった小銭をさっきよりもハイスピードでかき集め、せっせと募金箱に入れ始める。
「そういえば、その床の小銭は何?キミが散らかしたの?それ、そもそも募金箱の中に入ってたのでいいんだよね?まさか、レジから盗ったりしてないよね??」
まぁ、名札の責任者番号をピッとしないと、レジは使えないしキャッシャーも開かない仕組みになってるから、それはなさそうだけど。
なんなら画面付いててお金入ってるの一台しかないし。一瞥してもレジに異常はなさそうだ。
「さっきからうるせーな。見上げたらいいモンがあってちょっと手に取ったら勝手にこぼれただけだよ。これが悪い。」
「そう…まぁいいや。じゃあ私も手伝うから、全部拾って戻してくれたらちゃんと返してね?」
改めて、レジ周りに貴重品を置いとかなくて良かったな…私のセキュリティー意識、グッジョブ。
少年は小銭を集めるのには一切文句も言わず、せっせと黙々と拾い続けている。
私も手伝おうと手を伸ばしたけれど、無言で払いのけられてしまった。仕方ないから正面にしゃがみ込んで見守っておこう。
少年はレジカウンターの下奥深くまで潜り込んでいるし、かなりの枚数をまき散らしたっぽい。落とした時に結構な騒音がしたと思うんだけど、なんで気づかなかったのかなぁ?
「大丈夫?やっぱり手伝う?せっかくの髪の毛やお耳が汚れちゃわない?」
「まったく…うるさいのはちょーろーそっくりだ。」
「え?キミ、やっぱりエルフの里から来たの?」
「それ以外にないだろ。ここら辺にある集落なんて、エルフのしかないんだから。昔は人間族や混血達もくらしてたけど、今じゃすっかりエルフしかいないよ。」
「へぇ…詳しいんだね…そんなに小さくて可愛いのに。」
この子パッと見十歳かそこらに見えるのに、やたらと昔の事に詳しそうだ。歴史が好きな子なのかな?
「かわいーって言うな!…ほら、全部集めたぞ。これでいいんだろ?」
すくっと立った少年が募金箱を自慢げに突き出してくる。
あんなに欲しがってたから返してくれないかなって思ってたけど、意外と素直な良い子だ。
そしてドヤ顔がまた可愛らしい。アンジェちゃんとは別ベクトルの可愛さだね、生意気だけど可愛いみたいな。
「あ、ありがとう。多分これで全部なはず…」
募金箱を目の高さまで掲げて見たり軽く振って重さを確認したりする。うん、大丈夫そうだ。
多分って言うのは、普段募金箱の中身を正確に把握していないから。集金は月末に一回やるだけだし、小銭の束を見たっていくらあるのかは分からないからね。
「じゃあ、もうこれでいいだろ。ボク、帰るから。」
「え、もう帰っちゃうの?!せっかくお客様として来たんでしょ?フライヤーとかはもう捨てちゃったから作り直さないとだけど、珈琲とかならすぐ飲めるよ?あ、キミはココアとかの方がいいかな?」
「子ども扱いすんな!食べ物とかはもういいよ、旨くなかったし。」
「え?」
まさか、と思って少年の近くにあるゴミ箱を覗き込んでみると、さっき捨てた廃棄のチキンのいくつかに、小さな齧り跡が付いているのがあった。
そういえば、彼の口元の食べかすもチキンの欠片みたいだったな。
「キミ、これ食べちゃったの?もう食べられないから捨ててたのに…そりゃ美味しい訳ないよ。」
廃棄のチキンなんて、サイズも縮むし噛んだらガチガチに固いしジューシーさの欠片もない代物に成り果てる。食べられた物じゃないのだ。
「そんなの知るか。無防備なお前が悪い。ボクはただ落ちてるのを拾っただけだ。」
「何その超絶理論…落ちてるの勝手に拾ったら泥棒なんだよ?」
そもそもゴミ箱に捨ててあるんだから落っこってた訳でもないし。
「まぁそんな気にすんなよ。こんなマズイの食わせられたのは許してやるから、お前ももう忘れろよ。」
「なんでキミが上から目線なの?!勝手に忍び込んで勝手に廃棄食べたのはそっちでしょ?それ、犯罪だよ?!キミの言ってることも滅茶苦茶だし!」
「うるさいなぁ。そんなカリカリしてると将来ハゲるぞ。」
「そんな心配いらないから!」
不法侵入に窃盗未遂に無銭飲食で盗人猛々しいこの発言……もうこれはイタズラとかいう次元を超えてるよ。
なんて困ったケモ耳小学生なんだろう……
毎回一番苦労しているのは、実は本編よりもサブタイトルだったりします。名前付けるのって難しいですよね。




