34 福袋は開封が一番楽しいよね。
皆さんはコンビニを利用していて分からない事があった時、どうしているだろうか。
例えばコピー機の使い方とか、サイトで当たったクーポンの発見方法とか、楽しみにしていたライブのチケットの支払い方法とか、宅急便の発送方法とか、今流行りの○○ペイの登録方法とか……
例を挙げたらキリがなさすぎる。多種多様なサービスを取り扱うコンビニだからこそ、そのサービスの多さに困惑する利用者も多いだろう。
で、大抵は店員さんに聞くパターンが多いと思う。それが正攻法だと思うし、頼って頂けるのは店員としても喜ばしいことだ。
まぁちなみに、コンビニ店員も実はサービス全部をちゃんと把握し切れていないこともあります。騙し騙し、自信がないなりに頑張ってお客様にご案内してたりすることもある。
店員が自信なさげでも許してください。
つまり、分からない事はどんどん店員に聞いて欲しいし、質問したり頼ったりするのは素晴らしいというのが、私の信条なのだ。
『聞くは一時の恥聞かぬはなんちゃら』ってやつだ。
分からない事はいくら考えたって分からないんだから、私も素直に質問しよう。
「リーリャさん、すみません。魔術具歴の短い私には、どれもこれも正しい効果が分かりません。お手数ですが、教えて頂けますか?」
ちゃんとイートインの椅子から立って、接客の基本『お辞儀』を交えながら率直に尋ねる。
「アリ様、そんなに畏まらないでください。勿論、私の用事は元よりその件だったので。」
「あれ、そうなんですか?わざわざ魔術具講義をしにここまで来てくれたんですか?」
なにそれ何処の長老さんですか?
「それもあります。アリ様、袋の中に紙が入っていませんか?」
「紙…紙…神……?ありましたっけ…??」
我ながら寒いギャグを呟きながら、袋の中をごそごそと探る。なんかずっと女神様だ何だと聞かされていたから、勝手に神に脳内変換されちゃったよ。
「あ、普通にありました。あれ、なんでさっき気が付かなかったんでしょう?」
ありきたりな茶色いA4サイズの紙が一枚ピラリと出てきた。インクで何か文字がびっしりと書かれているけれど、何が書いてあるのかさっぱり読めない。ナニコレ?
「それは魔術具達の説明書なのですが…そこに書いてある文字の意味は分かりますか?」
「いえ、さっぱり。なんかこれ、ヒンディー語とハングル語を混ぜたみたいですね。」
まぁそれっぽいというだけであって、どっちも全く解読できないんだけど。
「やはりそうでしたか…まったく、長老の言う事はどこまでも当たるんですね…」
リーリャさんが何か深刻そうに考え込んでいる。
「話せても文字は読めないってこと、長老さんは予言してたんですか?エスパーですか?」
「いえ、流石にそこまでは。あくまでも研究者の端くれとして、このような事態が起こりうると予想していただけのようです。」
「いや、それだけでも凄いですよ…」
やっぱりエスパーじゃないですか。長老さん、恐ろしや。
「話を戻しますが、もしもアリ様が説明書を読めなかった場合、代わりとして口頭で説明させて頂くのが本題です。」
「あ、はい、是非お願いします。」
魔術具講義、二日目。リーリャさんパートの開始である。
「ねーさま…さっさと帰るのですーー……」
もぞもぞ動くアンジェちゃんが、またもや寝言で催促してきた。手早く済ませて帰らせてあげなきゃね。
昨日(私にとっての)と同様に、ノートとペンをユニフォームのポケットから出して、講義を受ける準備は万全だ。
字を書くにはいささか暗すぎるけど、仕方ないね。
「ここまでが、この三つの効能になります。」
「なんか、大体予想通りで助かりました。案外、私の世界と変わらないものですね。」
とりあえず講義の半分が終了した様子なので、小休止も兼ねてリーリャさんにココアをもう一杯奢る。アンジェちゃんはまだ寝てるからいっか。
ここまでで教えて貰ったのは、黒いローブと万華鏡、そしてゴキ〇リホイ〇イの効果だった。
長老さんと違って、リーリャさんは早口でサクサクと授業を進めるものだから、メモを取ったノートの字もぐちゃぐちゃになってしまっている。
「えっと、ローブが里の伝統衣装で、今後里を訪ねる時に着る物。呪文を唱えれば汚れを防ぐ効果あり。」
メモを確認しながら、一つ一つ復唱する。ついでに字も綺麗に書き直しておこう
「万華鏡の中にはキャンドルが入っていて、ライトとして使えるんでしたよね。呪文だけで火も要らずに使える魔術具…ですね。」
手元の万華鏡をくるくる回してみる。中にキャンドルが入っているとは思えない程、軽くて細身の万華鏡だ。
夜空のような外側の装飾も綺麗で、飾るだけでも絵になるね。
「で、これが大事な、《インゼスプーティ》ですね。まさか虫じゃなくて獣避けとは思いませんでした。」
虫避けと思うのも仕方ないだろう。黒光りするゴキ〇リホイ〇イは、やたらと大きい点を除けば、当店にも並んでいる商品と大差がない見た目なのだから。G退治専用だと思ってました、はい。
「中に入っているのが蚊取り線香とは…つくづくツッコミ所満載な魔術具ですね。」
ハウスの形をした紙製のホイ〇イの中身は、なんと蚊取り線香らしい。覗き込んでもよく見えないけれど。
これも呪文で発動させて、店の入り口に置いておけば自然と獣が寄り付かなくなるんだと言う。
「とにかく、これでやっと店の明かりも点けられそうで、助かりました。」
これさえ置いておけば、店の明かりを全部点けても獣に襲われることはないだろう。ようやく真っ暗闇コンビニから解放されそうだ。
早速今からでも使おうかな?
「アリ様は覚えも早く…さすが女神様ですね。尊敬します。」
「あ、いえ…メモ在りきですから。」
自慢じゃないけれど、記憶力にはあまり自信がありません!実際、こうやって復習しないとすぐ忘れそうだしね。
「その前に、残り二つも説明してしまいますね。」
「あ、はい。お願いします。」
息つく暇も明かりを点けてくる暇もなかった。
淹れたものの未だ一口も飲まれていないココアの湯気だけが、二人の間を寂しく漂っていた。
前回から散々、福袋と繰り返していますが、残念なことに、作者には福袋を買った経験が全くございません。正月の混み合う中、買いに行く勇気が出ない小心者です。来年こそは買いに行きたいですね。




