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28 マップは覚えているけれどアイテムは分かりません。

前回までのあらすじ!

ドアも窓も鍵のかかった密室コンビニ店内で、何故か不審な物音がした!暗闇の中一人きりで寂しいJKぼっち店長が、謎の侵入者に今挑む!以上!!

え?異世界だデュッセニーだなんだの部分を大分端折ってるって?気にしちゃいけない。



ぺた…ぺた……ぺた…ぺた………

さっきの大きなガタガタ音の後も、継続的にぺたぺたという変な音がうっすら聞こえ続けている。これだけ色んな音がするんだから、何かが倒れただけでしたーとか、風の悪戯でしたーとかいうオチは無さそうだ。

うん、やっぱり何かが店内にいる。


「とりあえず、何か武器、武器……」

自分が身に付けている装備をがさごそまさぐり、あちこちのポケットに手を突っ込んだけど、あれ、おかしいな。

長老さんから貰った四〇元ポケッ〇以外に持っているのが、ボールペンと発注タブレットしかない件について。

あんなにあった商品達はどこに行ったんだ!カッターとかも入っていたのに!

はい、それらは全部一本のボールペンに化けました。分かってます。脳内で一人茶番をしている場合じゃないことも重々承知しています。


ポケットの中身はまだよく把握していないので、長老さんから貰った獣避けの魔術具クリンネッロだけを右手に、事務所内の掃除ロッカーにしまい込んでいた長箒を左手に抱えて、侵入者退治に向かうことにした。

あ、もしかしたら、殺虫剤やカッターがあればより戦力アップになるかもしれない。けれど全部レジの奥に眠っているんだよなぁ…取りに行けるかなぁ…?



念のためデスクのスタンドライトも消して、閉めていた事務所のドアをそーーっとスライドさせて、体を半分だけのそっと出すようにして真っ暗闇の売場を覗いてみる。

…何も見えない。そりゃそうだ。暗いからね。

唯一電源の生きている中食の棚やドリンクケース、冷凍のリーチインがほんのりと怪しげな明かりを発しているけれど、視界を確保するには余りにも頼りなさすぎた。まったく、役立たずだ。

それでも必死に目を凝らしてきょろきょろしてみる。


「とりあえずレジ内は何もいなさそうだね…」

事務所ドアのすぐ真ん前にあるおかげで、暗くてもレジ内の様子だけは何とか把握できた。何か物が落ちたり倒れたりしている様子もないし、誰かもしくは何かが居るような気配もない。


「殺虫剤、どこ置いてたっけ…二レジの下だったかな…あれ、この間使ったから水道台の下だっけ…?」

私は更なる強力な武器を求めて、腰を屈めながらレジ内を、私から見て左、店奥側へ突き進む。

RPGゲームの勇者になってホラーダンジョンの探索をしているかのような気分だ。



こんな事を考えているから実は余裕そうに見えるかもしれないけれど、そんなことは決してない。本当は怖くて怖くて仕方ない。何がいるかも分からないっていうのは、震えてしまうほどに怖い。

さっき帰ってきた時に、店外で味わった焦りや恐怖なんて比べ物にもならないくらいに怖いし、嫌な想像ばかりしてしまう。


大型の獣だったら一人で相手できる訳ないし、もし頼みの綱の《クリンネッロ》が使えなかったらもうお手上げだ。死んだフリでもするしかない。

もしくは異世界ならではの魔獣とか魔物とかだったらもう最悪だ。対処法すら分からない。デュッセニー界でも死んだフリって通用するの?


それに、コンビニ界の天敵、いわゆるGだったりネズミだったりしたらどうしよう。大量のそれらが商品棚や床を駆け回ったり、商品を齧ったりでもしたら…怖いし気持ち悪いし、最悪の場合営業停止になってしまう。

それらならもちろん対処法は分かるけど、怖い云々の前にとにかく嫌いなのだ。正直、相手にしたくない。

「店内や外でたまにGやヤモリが出た時も、全部龍二に任せっきりだったからなぁ…」

今改めて実感する、龍二の有り難さ。ああもう、なんで今この場にいないんだ!


理不尽な怒りを龍二にぶつけながら、ほとんどハイハイのような体制で二レジ前へと辿り着いた。このカウンター下、レジ袋の在庫の隣に殺虫剤が……ない。

ああもう、やっぱり水道台の方だった!始めからそうと分かっていれば真っすぐ水道側に行ったのに!水道台は入り口近くにあって、二レジから一番遠いんだよー!もう一回探索のし直しかぁ…


ぺた…ぺた……ぺた…ぺたん……

相変わらず謎のぺたぺた音は継続的に聞こえてくる。…なんとなくだけど、この音、レジから一番遠い、店内最奥のドリンクコーナーから聞こえてくる気がするなぁ…

少なくとも、二レジ目の前の中食コーナーや、お菓子売り場の方からじゃなさそうだ。


「レジ前じゃないのなら、ちょっとくらいなら覗いても大丈夫かな…?ドリンクコーナーなら、天井のミラーからも反射して見えるし…」

ぼそぼそと、声にも鳴らないほどの呟きを口の中だけで発し、意を決してハイハイ体制から上体を起こしてみた。

「…やっぱりよく見えないなぁ…」

売場のケースの明かりで何とか周囲を窺えるかと思ったのに、そう甘くはないようだ。商品棚が薄ぼんやりとしか見えないし、通路に何かが居たとしてもさっぱり分からない。

…ダメじゃん!


「……あ」

売場の探索は後回しにしてとにかく武器(さっちゅうざい)の回収に向かおうと振り返った時だった。すぐ後ろの壁に、とても頼りになる装備品が掛かっていたのだ。

「そういえば、防犯マニュアルに載ってたっけ…ここに懐中電灯あるんだった……」

亜里は懐中電灯を手に入れた!これで音の原因を確認できる。


「…っていうか…あれ?それなら始めから、スマホ持ってきてれば解決だったんじゃ…デスクに置きっぱなしにしてたよね……?」

今気づく、スマホの存在価値。普段仕事中にスマホなんて使わないから、売場にスマホを持ってくるという概念自体がそもそも無かったよ。


ぺた…ぺたぺた……………

「何やってんだ私…とにかく、後は殺虫剤さえ持ってくれば何とか対応できるかな…?」

自分の間抜け具合に脱力していて、周囲に警戒を払うのを忘れていた。

ダンジョン攻略のBGMかのようにずっと聞こえていたぺたぺた音が、いつの間にかすっかり止んでいた事に気づきもしていなかったのだ。


「みんなをたぶらかした、かたちですーー!!!」

「え!?」

ずっと静かだった店内に、急に誰かの声が響き渡った。びっくりして手に入れたばかりの懐中電灯をさっと付けて振り返った。

そこにあったのは、レジカウンターに乗った一本の弓矢。

「ええ?今の、矢が喋ったの!?」

異世界だから矢だって喋ってもおかしくないのかな…?あ、もしかしてこれも何かの魔術具かな?


「そんなおかしなことがある訳ないですー!あたし、ちゃんとここにいるですーー!!」

「ん?」

なんか下から声が聞こえる。カウンターに近寄って身を乗り出して、光を下に向けて見下ろしてみると、一人の小さな女の子がピシッと行儀よく立っていた。


魔女のローブみたいな、ふんわりした曲線の黒いワンピースに身を包み、フードをすっぽり被っている為顔はよく分からない。これ、あれだね。フードが大きすぎて顔が隠れちゃってるんだ。

手にはリーリャさんみたいに弓矢を持っているけれど、彼女が小さい割に弓が大きすぎてそのほとんどが接地している。

よく見ると足元は素足だ。もしかして、さっきまでのぺたぺた音は、この子の足音かな?


「え、可愛い…迷子かな?なんでこんな所まで来ちゃったの?」

警戒心があっさり解けて思わず笑顔になる。迷子なら保護者を探さなきゃだよね?

「迷子なんかじゃないですーーー!!!あたしは、エルフみんなのかたちうちに来たのです!!」

「かたち?」

え、何?この子?

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