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18 夢のデュッセニーた◯た。

ちょっとお久しぶりになりました。初めての20時投稿ですが、深い意味はありません。

前回までのあらすじ!

私、鈴浦亜里。しがない片田舎のコンビニ店長(仮)だったんだけど、ある日突然、エルフや魔法がいっぱいの異世界に来ちゃった!元の世界に帰る為には、お金を貯めて魔術具とやらをゲットするしかない!

そして前回、『どきどき!わくわく!魔術具デビュー!』で魔術具使うぞー!と思いきや、まさかの魔術具が使えない!?原因は私の魔力が低いせいみたいで…?

果たしてちゃんと魔術具を使いこなせるのか?そして無事に日本に帰ることが出来るのか!?

以上、昔懐かしアニメのオープニング風ナレーションでお送りしました。

まぁぶっちゃけ、ただの現実逃避だよね。




「赤ちゃん並の魔力しかないんですか…それなら仕方ない…ですよね。」

がっくりと肩が落ちてしまうのも仕方ないだろう。今まで散々魔術具の素晴らしさを語られ、色々な魔術具を実際に見て、期待値が上がりに上がった所で、この仕打ちである。絶望(二回目)だ。

何故こんなことに…神様、何か恨みでもあるのですか?

デュッセニーの神様ってアリス様だっけ。私と名前が似てるのがお気に召さなかったとかかな。流石に関係ないかな。


「いやはや、こんな事は滅多にないのですが…いやぁ…」

こちらも困り顔の長老さんの呟きがぐさっと胸に刺さる。これ以上傷を抉らんでください。

あ、ていうか。

「もしかして、魔力が足りないんじゃ、そもそも《オンファイラー》すら当てにならないんじゃないですか?」

私が帰る為に必要な、伝説の魔術具オンファイラー、これが使えないと帰るだなんだの話すら失くなってしまう。それは困る!


「ああ、そうでした。すみません、ちょっと待っていてくださいね。」

私の返事を待つこともなく、長老さんが三度退室していく。またですか。

なかなか本題に入れない。そろそろ残してきた店が心配だから、やること済ませて店に戻りたいのだけれど。



「いやはや、お待たせしました。アリ様、今回ご紹介致しますのは、こちらでございます!」

部屋を出て一分も経たずに戻ってきた長老さんが自信満々な顔でぐいっと突き出してきたのは、やたらと太く長い真っ黒なボールペンだった。またこの展開か。

「それで、これはどんな効能があるんですか?ていうかそもそも、私は魔術具使えないんですよね?それも意味ないんじゃないですか?」

いけない、言い方がきつくなっているかもしれない。

落ち着かなきゃ。接客業たる者、どんな時でも平常心でいなければ。


「ごめんなさい、言い過ぎ…」

「ご安心ください!こちらはですね、主の魔力を増量する事ができる、素晴らしい道具なのです!ああ勿論、魔力が低くても大丈夫!この魔術具は、魔力を一切必要としない、非常に珍しい代物なのです!なんと便利で画期的なことでしょうか!」

慌てて謝罪しようとしたら、なんか通販番組が始まったんだけど。


「『そんな素晴らしい物があるなんて!もっと早く教えてくれれば!』という顔をしてらっしゃいますね、アリ様」

「はぁ…」

いいえ、呆れと戸惑いの顔です。

先の魔術具講義の時から思っていたけど、長老さんって魔術具の話になると、テンション高くなるし話は止まらなくなるし、まるでオタクみたい。


「こちらは確かに便利な物ですが、その分お値段も張りましてね。なかなか一般には出回らないのですよ。この品は私が研究の一環で買い求めた物でしてね。本当は一家に一台置いても良い程お薦めの物なんですがねぇ…」

長老さん、実は日本の通販番組見てるでしょ?『一家に一台』なんてフレーズ、某ジャパなんとかさんの番組でしか使われないような言葉なんだけど。


「懐かしいですねぇ。これを買い求める為だけに、人間の王都まで旅した日が。当時はまだ人間との交流もあったからなんとか買えましたが、今ではもう手に入らないレア物ですよ、これは。気になるでしょう?」

通販番組を通り越して転売屋になってきてるよ。ていうか、それより。

「魔術具って、お金で買う物だったんですか?」

「はい?ああ、ええ、そうですよ。そう言いませんでしたか?」

話の腰を折られた長老さんがきょとんとしながら答えてくれたけど。そうか、魔術具って商品だったのか…

「魔術具って特別な物は、それなりに特別な方法で手に入れるのかと思ってました。具体的な方法は聞いてませんでしたし…」

「おや…それは失礼しました。それでですね、この魔術具、《エフール》と言うんですが、一回使えば効果は半永久的!」


再び長老さんは通販番組に戻っていたけれど、申し訳ないことに私の耳には届いていなかった。

さっきまでの絶望(二回目)に光が差したような気がして、とある考えを纏めるのに一杯一杯だった。私がこの世界でやろうとしていること、その第一歩となる希望だ。



「他にも色々とお薦めしたい点はありますが、何分高価な物になりますからね。お買い求めは、いずれアリ様の資金が貯まってからで結構でございますよ。ご検討ください。」

いつの間にか商品PRタイムは終わっていたようだけど、どこかの番組とは違って、今すぐ買うようにとはぐいぐい来ないね。ある意味優しいのかもしれないけれど、こちらとしてはそんな悠長な事は言ってられないのだ。

相変わらずの商人スマイルのまま《エフール》を片そうとする長老さんを制する。

「いえ、今すぐ下さい。お金の当てならありますから。」

「おや」

細い目を片方だけ器用に見開いて、にやりと笑う長老さん。さっきまでの商人スマイルよりも、大男さんにはそういうワルそうな顔の方が似合っているよ。


負けじと私も不敵な笑みを浮かべて、浮かべようとして中途半端な白目を見せてしまった気もするけど気にしないで、ずっと傍に置いていたリュックを机の上に置いた。

そしてリュックの中身を一つ一つ、仰々しく出して並べていく。ゆっくりと、丁寧に、見せつけるように。


「ほう…」

綺麗に並んだ文房具に日用品、軽食の数々を見た長老さんの反応を見て、私は今度こそ不敵な笑みを浮かべた。この反応なら、大丈夫そうだ。

「私の世界の道具です。長老さん、どうですか?これらの商品、買いませんか?お安くしますよ。」

今度はこっちがPRする番ですよ。


この話を書く為にあらゆる通販番組を観ていただけなのに、気がついたら家に蟹鍋セットがやって来ていました。美味しかったです。

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