おとまり!
はい。長い旅から戻ってまいりました、フィロットです。
今回は7700字とかいう馬鹿みたいに長い文となっております。
心して読んで下さい。
ここはウィルエス魔法学校の受付窓口。
エルフ耳とうさ耳の少女が二人、仲良く手をつないで入学手続きを目的に訪れていた。
「ほぉ!せれにゃーたちの故郷はそんなに遠いんじゃのぉ!わしも一度いってみたいじゃ!」
「うにゃ!いつか案内するにゃ!」
「ぐるぅ!」
今は書類の記入を終え、学生証の受け取り待ちの最中である。
「あぴちゃんはこの街出身だよね?いいなぁ・・・」
「むむぅ・・・ちがくないけど、ちがうかのぉ・・・」
「?」
アピは、鮮やかな水色のシルク生地にフリルを多くあしらったかなり短めのドレスを着ており、ドレスの裾と革の短パンの間から除く腰の双銃用ホルスターに入った武器には高級感漂う意匠が入っていた。
よほど良い環境で育ったのだろうと思っていたのだが、予想に反して曖昧な答えが返ってきた。
「あぴちゃん、それって・・・」
「待たせたわね。これが学生証よ。絶対に無くさないように!いいわね?」
返答の真意を確かめようとしたが、鋭い目つきをした受付の女性から話しかけられたため、話を中断して白金色の少しひんやりとする学生証を受け取った。
「うにゃ!これが・・・!!」
「ほぉ!これでわしらも魔法学校の仲間入りだのぉ!」
「入学式は明日の朝よ。その学生証を持った瞬間、あなた達は当魔法学校の生徒立場になるわ。節度を持った行動を心がけなさい。」
「あい!」
「うむ!」
学生証を手に取って気分が向上したセレンは学校から出ようとしたが、まだわからないこととするべきことが残っているのを思い出した。
「あっ、そうだ!二つほどお聞きしたいことがあるのですが!」
「なにか?」
「寮はどこにありますか?」
「門から入って右手の道を行くと女子寮があるわ。でも、寮を利用できるのは正式に学生登録された明日以降よ?」
「・・・えっ?」
「正式な学生登録を締め切ってから部屋が割り振られるのじゃけど・・・もしかしてせれにゃー・・・」
「うにゅぅ・・・」
セレンは、入学手続きを済ませた直後に学生寮に住み込めるとばかり思っていたのだ。
王都は人の出入りが多い為、宿は早めに取らなければほとんどが埋まってしまうとリリエルから聞いたことがあった。
これが本当であれば、日が沈む直前の今から探しても空き部屋は見つからないだろう。
セレンも年頃の少女であり、一人と一匹、見知らぬ土地で夜を外で過ごすというのは堪えがたいものがある。
いくら考えても良い考えが浮かばないセレンの目には、絶望の色が浮かび上がり始めていた。
「どうしよ・・・こうなったら野宿しか・・・」
「ぐるぅ・・・」
「じゃあ、せれにゃー!」
「うにゃぁ・・・?」
「わしの家に泊まるじゃ!」
「!!・・・良いのかにゃ!?」
「もちろん!寝るまで一緒におしゃべりするじゃ!」
「うにゃっ!ありがとにゃー!!ぎゅー!!」
一瞬野宿を覚悟していたが、アピが泊めてくれると言ってくれたことに心の底から感謝し、目尻に安堵の涙を溜めながら思いきり抱き着いて全身でお礼を伝えた。
「ほぉっ!くるしいのじゃー!おかえしじゃー!ぎゅー!!」
「うにゃー!」
「・・・いい」
「「?」」
「・・・ゴホンッ!解決したようでなによりだわ。それで、二つ目は何かしら?」
最中、なにか聞こえたと思ったが、きっと気のせいだろうと気を取り直して次の質問を投げかけた。
「校長先生はどちらにいらっしゃいますか?」
「校長は今忙しい身よ。今は会えないわ」
「うにゅ、そうですか・・・それなら、この手紙を校長先生に渡して貰っても良いですか?」
「いいえ、アピさんの実家に泊まるのならその必要は無いと思うわ」
「?」
「すぐにわかるじゃ!」
校長先生はアピの家に用事があるのかもしれない。
それならば、その時に村長の手紙を渡せば良いだろう。
「うにゅ!おねぇさんありがと!」
「ありがとのぉ!」
「またなにかあれば来るといいわ」
そう言葉を交わした後、こちらに手を振りながら学校の出口を目指す二人を見えなくなるまで見送り、受付の女性が小さな声で一言つぶやく。
「・・・今日は筆が進みそうね」
セレンとアピが校門を出た時、空にはすでに濃紺の帳に覆われ、数多の星々で明るく飾り付けられていた。
大きな月の明かりのみを頼りに、足元に気を付けながら大通りを歩く。
「うにゃっ!?・・・?」
「どうしたじゃ?せれにゃー?」
「・・・ううん。ちょっと冷えてきたみたい」
「そうだのぉ!早く帰ってあったまるじゃ!」
「うにゃ!」
何か悪寒がしたと思ったが、周囲に怪しい気配もない為、気温が低くなったせいだろうと結論付けた。
しばらく大通りを歩いていると、一般住宅街から見知った顔が出てくるのが見えた。
「ほぉ!しゃけー!」
「シャケ!さっきぶり!」
「おー、アホ兎にド田舎幼女かー、じゃーなー」
「幼女じゃないにゃ!?」
「しゃけー!それはないじゃろしゃけー!」
確かに、セレンは14歳であるにも関わらず142cmという超小柄だが、長寿種のエルフなのだから人間よりも多少は小さいものなのだ・・・多分。
「シャケはどこに行ってたの?」
「答える義務はないだろ。お前には関係ない」
「孤児院じゃ!」
「おい」
「うにゃ・・・?こじいん?」
「・・・まぁいい、どうやらわかってないみたいだしな。さぞ、平和なところからやってきたんだろうさ」
「しゃけ!!」
「・・・っ!!・・・悪かったよ。おやすみだアホども」
そう言って高級住宅街へと消えていったシャケを見送りながら、セレンは混乱していた。
こじいん?平和?シャケが機嫌を悪くした理由がなんなのかイマイチはっきりしなかった。
「ごめんのぉ、せれにゃー。でも、悪いやつじゃないんじゃ・・・」
「うん、それはなんとなくわかってる。私こそごめんね?余計な事言っちゃったみたいで・・・」
「気にしなくても良いじゃ!それよりも早くうちに入るじゃ!」
「え?うちって・・・ここぉ!?」
アピが指さした先には、大通りに面した豪邸があった。
敷地は鉄柵に囲まれ、家は自分の実家よりも何倍も大きく、庭の中心に噴水があり、花壇が輪状に広がって色とりどりの花を咲かせていた。
アピに連れられて、シャケが消えていった高級住宅街の道を少し歩くと、城門とまではいかなくとも自分の4倍はあろうかという大きな鉄扉が待ち構えていた。
「・・・あぴちゃんお姫様?」
「せれにゃーはおもしろいことを言うのぉ!とりあえず入るじゃ!」
「オ、オジャマシマス!」
「ほぉ!かちかちだのぉ!」
セレンの様子を見て笑いながらアピが軽く鉄扉に右手を当てると、右手の平から、右肘、右肩、腰、右膝、右足の裏へと赤色のマナが巡っていくのが視えた。
一連の動作はモノの数舜で行われ、アピが扉を軽く押すとかなり重く見えた鉄扉が、重低音を響かせながらゆっくりと開き始めた。
「うにゃぁ・・・あぴちゃんすごい!!」
「ほぉ!?急になんじゃ!?ムムッ!!わしは別にムキムキではないじゃ!!」
「違うにゃ!?身体強化系の魔法すごく上手って!マナも無駄に使ってなかったし」
「ほぉ?・・・もしかしてせれにゃー、マナの動きが視えてるのかのぉ!?」
「?」
「ぐるぅ?」
セレンは、アピがなぜそこまで驚いているのかがわからなかった。
魔法は、自分の体内のマナを視ることができなければ、マナを自在に動かすことはほぼ不可能だ。
自分の体内のマナが視えるのだから、"大気中のマナ"や"他人のマナ"が視えるのは当然だろうとセレンは考えていた。
あらゆるもののマナは視えるものというのがセレンの中では常識だったのだ。
「え・・・えーと?」
「普通は、自分の体に馴染んだマナしか視認することはできないのじゃ!"他人のマナ"までも視える人なんて聞いたことが無いじゃ!」
「そ、そうなの?」
真実を知って一番驚いたのはセレンだろう。
誰でもできると思っていたことが、自分にしかできない常識から外れたものだと言われて動揺しないほうがおかしい。
「・・・とりあえず、お風呂に入って体を休めるじゃ。長旅で疲れたじゃろ?」
「うにゅ・・・すっごくつかれた~・・・でも、おふろって?」
「ほぉ!?」
エルフ族は、基本的に暖かい日中に湖で水浴びをして体を清める為、お風呂というものに馴染みがなく、セレンは今日中の水浴びを諦めていたほどだ。
アピはお風呂のことについて軽く説明した。
「ぐる!?」
「うにゃ・・・お湯の中に入るの・・・?茹ったりしない?」
「入り過ぎなければ問題ないのぉ!」
「うにゅ~・・・」
アピの雑な説明に、セレンは不安でいっぱいになりながら、アピに手を引っ張られて家の中に入っていくと、エプロンが付いた裾の長い紺色のドレスを着て、お団子に結った金髪の頭の上に白いフリフリのカチューシャを付けた、いかにもメイドと言うにふさわしい女性が姿勢よく佇んでいた。
アピの姿を確認すると、メイドは腰を折り曲げてお辞儀をして、物腰が柔らかそうな声色でアピを迎え入れた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいまじゃ、るぅさん!早速じゃけど、お風呂の準備をお願いするじゃ!」
「すでに湯沸かしとお召し物の準備は整っております」
「ありがとのぉ!」
「ふにゃぁあ~・・・」
アピはお姫様ではなく、お嬢様だったのだ。
絹糸のように真っ白な壁に見ただけで涼むような優しい色の観葉植物、天井に煌めくシャンデリアや色彩豊かな絵画など、高級感溢れる空間でやり取りをする二人を見て、セレンは絵本の中に迷い込んだような錯覚に襲われた。
しかし、アピの口調のおかげか、セレンの思考はかろうじて現実の世界に踏み留まっていた。
「・・・お嬢様、そちらのお方は?」
「うにゅっ!?あぅ・・・えと、せ、セレン・ロト・セフィラスでしゅ!・・・です///」
「ぐるっ!」
自己紹介は自分でしないと失礼だと思ったが、舌を噛んでしまい恥ずかしい思いをしてしまった。
失礼に当たったかと思い顔色をうかがうと、メイドは不機嫌になるどころか満面の笑顔で話し出した。
「あらあら・・・!!可愛らしいご友人でいらっしゃいますね?お嬢様」
「うむ!今日一日うちに泊めるが良いかの?」
「はい。セレン様のお食事とお部屋をご用意致します」
「わしの部屋で一緒に寝るから部屋は不要じゃ」
「かしこまりました」
「あのっ、ありがとうございます!突然お邪魔しちゃったのに・・・えーと、るぅ・・・さん?」
「申し遅れました。わたくしは、ルゥ・ルクライド・ランフェスと申します。お嬢様のご友人にもこの身を尽くすのはメイドとしての務めですので、どうかお気になさらず」
柔らかな笑顔でそう返して貰うと、不思議と体から緊張がほぐれていく。
ルゥの笑顔を見ているとホッとした気分になって、どこか懐かしい感覚になるのだ。
「・・・おかあさん?」
「まぁ・・・!!おかあさんでも構いませんよ!?なんでしたら、いまから養子縁組でも・・・!!」
「ぐるぅ!?」
「るぅさん落ち着くじゃ!?」
「にゅぅ・・・ごめんなさい。私、おねぇちゃんがいるから・・・」
「そういう問題なのかのぉ!?それよりもるぅさん!父と母は?」
「旦那様と奥様は、今日もお勤めが長引いて帰れないと速達が届いております」
「今日もかー・・・。るぅさん、せれにゃーの荷物をわしの部屋に置いといてもらえるかのぉ?」
「かしこまりました」
どうやら、今日はアピの両親には会えないらしい。
荷物の中から着替えだけを取り出し、ルゥに荷物を預けてアピと共にお風呂へ向かった。
更衣室でローブと肌着を脱いで髪留めを外すと、銀色の長い髪の毛がふわりと広がり、光が反射してキラキラと輝いた。
「ほぉ!!せれにゃーの髪綺麗だのぉ!」
「うにゃ、ありがと!うにゃあっ!?」
「ぐぅ~!」
「グーさん重いよ~!」
頭に乗ってきたグーを降ろし、また乗られないように胸に抱いてアピと共に浴場に入る。
一面が大理石でできた広い部屋の中心に、埋め込まれた丸く大きな浴槽があり、もくもくと湯気が立っていた。
「うにゃ~!ひろーい!」
「じゃろ~?うちの自慢じゃー!早速入るのじゃ!」
「うにゃ!?ま、まって!まだ心の準備がぁっ!?」
「ぐるぅ!?」
アピがセレンの手を取ると、思いっきり走り出し―
ザッパーン!!!
浴槽へと飛び込んだ。
「ぷはぁっ!!のぉ?きもちいいじゃろー!?」
「ぐるぅ~・・・」
「ぷにゃぁっ!!あつい!?あついあついあついー!?」
「ほぉ!?」
セレンは冷たい水浴びに慣れているせいか、湯の温度にびっくりしてパニックになってしまっていた。
慌てて浴槽からあがり、体を冷ます。
「ほぉ・・・すまんのぉ。テンションが上がってつい・・・ぐーさんは大丈夫なんだのぉ」
「うにゅぅ・・・」
「ぐるぅ?」
今度は少しずつ慣らすように、足のつま先から恐る恐る徐々に時間をかけて入浴する。
肩まで浸かるまでには、湯の温度に慣れてきていた。
「ふにゃぁ~・・・確かに疲れが取れるにゃぁ~」
「じゃろ~・・・?」
「ぐるるぅ~・・・」
「ところでせれにゃー?エルフってみんな金髪って聞いてたけど違うのかの~?」
「うにゃ!私とおねぇちゃんだけ銀髪なんだー!」
「ほぉ!特別なんだのぉ!・・・?」
「あぴちゃん?」
「っ!いあぁ、なんでもないのぉ!」
「?」
「ぐるぅ?」
(丈夫なしゃけも膝を擦り剝いてた・・・けど、せれにゃーはどこにも傷一つない・・・偶然かの?)
ゆっくりと芯まで温まったセレンとアピは脱衣所に戻り、ふかふかもこもこのタオルで体を拭く。
拭き終わったと思ったところで、セレンが魔法を行使した。
「ひっさつ!ドライブロアー!」
「なんじゃこれー!?あったかいのぉ!」
「炎と風のマナで温風を作ったの。あぴちゃんもやってあげるね!」
「せれにゃー複合魔法もつかあぶあ~!?ぎもぢいのぉ~・・・」
「でしょ~?あぴちゃんお耳もふもふ~!」
アピが何かを言いたげだったが、温風の気持ちよさに次第にどうでも良くなったようだ。
「せれにゃー寝間着かわいいのぉ!ねこさんの刺繍がいっぱいじゃ!」
「うにゃ!あぴちゃんのは・・・あぴちゃんのはちょっと大人っぽいね・・・」
「ほぉ、そうかのぉ?」
セレンの寝間着は、ピンク色の綿で柔らかく編まれたシャツとズボンに猫の刺繍がされていた。
一方、アピの寝間着は、裾が短く胸元にフリルがついた肩ひものワンピースの上に、中が透けて見える薄いドレスを着ており、全て水色のシルクで編まれている。
着替えが終わり、アピがグーを抱いてセレンをダイニングルームへと案内する。
「ほぉ~!ぐーさんはもちもちだのぉ~!」
「ぐぅ~!!」
「まくらにしたいのぉ~!」
「ぐぅ!?」
「にゃはは・・・わかるけどね~・・・その子、寝相悪いから気を付けた方がいいよ~」
「ほぉ!では、焼いて食べるかのぉ!」
「ぐるぅっ!?」
「それはだめぇ~!!?」
そんなやり取りをしながら歩いていると、すぐにダイニングルームに着く。
中に入ると、少し大きめのロングテーブルが置いてあり、シミが一つもない真っ白なテーブルクロスがかけられている。
壁には白のロングカーテンが半分まで閉じられた大きなガラス窓があり、そこから裏庭へ出ることもできるようだ。
「うにゃ!?あの長すぎるテーブルがにゃい!?絵本と違う!」
「せれにゃ~・・・あのテーブルは少人数の時は使わないじゃ!あるにはあるけどの!」
「あるのかにゃ!?・・・なんかいい匂いがしてきた?」
「ぐるるぅ~!」
「グーさん!よだれよだれ!」
「そろそろ夕飯だのぉ!席に座っとくじゃ!」
「うにゅ!」
言われて、グーの涎をハンカチで拭きながらアピの隣に座るセレンだが、こういった場所のテーブルマナーがよくわからないため、少し緊張していた。
ほどなくすると、奥の部屋から髭を蓄えた背の高い白髪のおじいさんが入ってきた。
「じぃじ!おかえりじゃ!」
「ほぉ、アピ。ただいま。おや、君は・・・」
どうやら、アピの祖父にあたる人らしい。
失礼のないようにしなければならないが、どう呼べば良いだろうとセレンは悩んだ。
おじいさん、おじいちゃん・・・おじい様が良いかもしれない。
考えを固めて席を立ち、緊張しながら挨拶をする。
「は、初めましてっ!私は」
「セレンちゃんじゃろう?」
「うにゃ!?」
「じぃじ知ってるじゃ?」
「ほっほっほっ!知っとるわい!リリエルの孫・・・違ったのぉ・・・妹さんだったか。・・・少し寒気がしたわい」
どうやら、姉のことまで知っているらしいが、どういう経緯で知り合ったのだろうか?
「あの・・・」
「ああ、リリエルは儂の教え子だったんじゃ。まぁ、今思えばただの道楽だったんじゃろうがの」
「うにゃ!?リリね・・・姉がですか!?」
「ほっほっ!いつも通りの話し方で良い。ここはぷらいべえとな場所じゃからのぉ!」
「あぅ・・・はい!」
「うむ!今から14年前のことじゃ。久しぶりにリリエルから手紙が来たかと思えば、あの生命の樹から新しい命が生まれたと言う。何かあれば力になって欲しいと頼まれたのじゃ。まさか、儂の学校に入学するとは思わんかったがのぉ!」
「うにゃ・・・!?『儂の学校』って・・・」
「せれにゃー!じぃじが校長先生なんじゃよ!」
「この人が・・・!?そうだ、手紙!」
アピの祖父が校長先生とは思わなかったセレンは、心の準備も無い状態で突然目の前に現れた校長に慌てていた。
だからこそ、手元に手紙が無い事を忘れていたのだろう。
セレンは、校長に近づいて顔を見上げながら要件を伝えようとした。
「あのっ、おじぃ様!わた「ごふぅっ!?」おじぃ様!?」
「おじぃ・・・さまぁ!?・・・ガフッ」
「うにゃっ!?なに・・・?何がどうなってるの・・・!?私、どうすれば・・・!?」
「じぃじ・・・またかの?」
わけもわからず右往左往するセレンと、呆れた顔で祖父に声をかけるアピ。
料理を持ってきた給仕は現状を見ると、真顔で料理をテーブルに置き、校長を抱えて無言で去っていった。
何事も無かったかのように席に着いたアピは、呆然と立ち尽くすセレンに座るように呼び掛けた。
メニューはビーフシチューだったが、謎の展開に混乱していて匂いも味もわからなかった。
そんなセレンを横目で見ながらビーフシチューを啜っていたアピが呟く。
「無自覚・・・だのぉ・・・。それにしても、生命の樹・・・?何かありそうだの・・・」
ようやく落ち着いたセレンは、校長の身を案じて起こさないように、手紙をルゥに預けてアピと共にベッドに潜り込んだ。
アピの部屋は壁と床が淡いピンク色で、部屋を埋め尽くさんとする大量のぬいぐるみとピアノと勉強机が置いてあり、ベッドは小柄であれば五人は横になれる天蓋付きのベッドだった。
「・・・このベッドどうやって運び入れたんだろう?」
「ぐるぅ?」
「この部屋で組み立てたらしいじゃ!」
「にゃるほど!」
アピの口調は祖父のが移ったとか、ルゥさんは怒ると家の中で一番怖いとか、そんな他愛のない話をしていたら、アピから静かな寝息が聞こえてきた。
セレンは喉から出かけていた言葉を飲み込み、可愛らしいうさ耳少女の寝顔を見つめて微笑む。
「明日からもよろしくね、あぴちゃん。おやすみなさい」
王都に来て初めてできた友人との学校生活に期待を膨らませながら、少女は静かな夜に眠る。
いかがだったでしょうか?
ここまで読んでいただき、感謝に堪えません!
もう、読むのお疲れでしょうからここまでにしておきますね!(ニッコリ)
では、私はまた旅に出ます!アデュー!




