表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

旅路!

どうも、こんにちは(`・ω・´)

旅から帰ってきたフィロットです_(:3 」∠)_

今回も長くなってしまいましたが、お付き合い頂けると嬉しいです(*´ω`*)

 旅立ちからしばらく、エルフの森が地平に隠れた頃、セレンはあまりにもあっけない森との別れに呆然としていた。

 フォレストホースがここまで速いとは知らなかったのだ。


「あう・・・ちゃんとお別れできなかった・・・」

「また帰ってくるんだろう?ならいいじゃねぇか!」

「むぅ~・・・ま、そうだね!わぁ~!見て見て!あの山てっぺんが真っ白だよ!」

「お、おう・・・切り替えはえーな嬢ちゃん・・・」


 多少の寂しさはあるが、憧れの外の世界に出られた興奮の方が大きく、何よりも目にするものどれもが新鮮で楽しさの方が勝っていた。

 山道や渓谷、ウィードガゼルが駆ける草原など、次々に変わっていく景色に目を奪われていると、背後からゴソゴソと音が鳴った。


「?・・・なんだろ?」


 ゴソゴソ


「・・・バッグの中?」


 振動の無い浮いた馬車の上でわずかに揺れ動くバッグ。

 セレンは自身の腰ほどある大きいバッグを覗き込み、底を確認しようと衣類を押しのけた。


「あれ?なんだろこれ・・・?クッション?」

「ぐぅー!」

「グーさん!?うわっぷ!!」


 衣類の下にグリフォンの子供のグーが紛れ込んでおり、セレンの声が聞こえた途端いきなり顔面に飛び込んできた。

 

「うーあんおういえおおい!?」

「ぐぅ?」

「おいおい、大丈夫か・・・?」


 顔に張り付いたグーのおなかのもふもふを堪能しながら疑問を投げかけるが、口が塞がれていたため意味を持った言葉とはならなかった。

 グーは子供と言っても、人の頭ほどの大きさで力もあるため、顔にしがみつかれ続けると息苦しいうえに首が疲れる。


「ぷあぁっ!!もうグーさん!いきなり飛び込んできちゃメッ!でしょ!」

「ぐるぅ・・・」

「今度からは私にひとこと断ってから!いいね!?」

「嬢ちゃんはいつからグリ坊の言葉がわかるようになったんだ・・・?」


 御者の何度目かもわからない呆れ声を聞き流し、グーさんの扱いを思案する。

 今から戻るには森は遠すぎるから引き返すことは出来ないし、グーさんはまだ遠くまで飛ぶには未成熟すぎる。


「王都に着いたらグーさんをリリねぇのところまで運んでくれる?」

「他の街にも用事があるんだ。わりぃが、グリ坊の面倒までは見きれねぇな」

「うにゅ~・・・」


 この馬車であればこそここまでを短時間でこれるが、普通の馬車だと何日かかるかわからない。

 王都にもこの手の馬車はあるらしいが、何倍ものお金を取られるうえにフォレストホースほどの足の速い馬はそうそう見つからない。


「私が面倒みるしかないのか・・・普段はリリねぇに任せてるからなぁ~・・・」

「ぐるぅっ!」

「も~・・・! ど! う! し! て! うれしそうなのぉ~~~~~!!?」

「ぐるるぅ~!?」


 人の苦悩も知らずに嬉しそうに羽をパタパタとさせるグーのもちもちの両頬を思いっきり引っ張るセレンの頭の中にはもう一つの不安があった。


「グーさんって寮に入れても大丈夫なのかな・・・?」

「使い魔的なのもあるんだから平気なんじゃないのか?」

「む~・・・そうかもだけど・・・」


 このマヌケそうな顔した饅頭が使い魔なんて格好がつかない。

 

「せめて、もう少しスリムであれば・・・」

「ぐるぅ?」

「悩んでるところすまんが、少し休憩するぞ」


 そう言いながら馬の速度を徐々に落としていく。


「馬さん疲れてるもんね!」

「俺への配慮が無いとは恐れ入った。ちょいと小用でお暇するぜ」

「・・・?いってらっしゃ~い」

 

 『しょうよう』が何かわからなかったが、旅をするうえで何か必要なことがあるのだろう。

 見送って空を見上げると、お日様が天高く昇っていることに気づいた。


「もうお昼だ~。そういえば、朝はバタバタしててパンの味あんまりわからなかったな~・・・」


 ぐぅ~・・・。


「あっ・・・」

「ぐるぅ?」


 食への物足りなさを自覚した瞬間に、グーの鳴き声のような音がセレンのおなかから鳴り出した。


「お昼にしよっか」

「ぐるぅ!」


 バッグからリリエルの弁当箱を取り出し、馬車から降りて少し離れた見晴らしの良い丘の上に登ると、弁当箱のフタを開けて中身を確認する。


「うにゃ!?こ、これは!?」

「ぐるる!」


 木製の弁当は二重になっており、上段には卵焼きや野菜炒め、甘辛く味付けしたミートウォールナッツ等のおかずや、綺麗なピンク色の桃葡萄等の果物が入っていた。

 下段には、何種類かの穀物の粒を混ぜて炊いたものを敷き詰めてあるのだが、レッドホイールフィッシュというエルフの森の湖でしか獲れず、エルフの間でも滅多に見る事のできない魚の鮮やかな赤いフレークが乗っている。


「リリねぇ張り切り過ぎだよ・・・それに・・・///」

「ぐる?」


 セレンが顔を赤くして手に持っている木のスプーンを震えさせる理由はこのレッドホイールフィッシュ自体ではなく、その配置の仕方にあった。


「ハートマークって・・・!!さすがにこれは恥ずかしいよリリねぇ・・・!!」

「・・・ぐるぅ?」


 姉の愛情に悶えながらグーと分けて食べた弁当はなんとも不思議な味がしたという。


「さて、馬車にもど・・・何だろあれ?」


 馬車に戻ろうと腰を浮かせた時、視界の端にもうもうと砂埃が巻き上がっているのが見えた。


「こっちに向かってくる・・・?あれって・・・」

「嬢ちゃん逃げろ!あれはブラックボアーの群れだ!」


 言われて確認すると、猛スピードで近づいてくる砂埃の中に黒い毛並みのイノシシが群れを成しているのが見えた。

 慌てて進路上から逃げるが、足が竦んでしまってうまく走れず、足がもつれて盛大に転んでしまう。


「ふにゃぁ!!?」

「ぐる!?」

「嬢ちゃん!?くっ・・・!!」


 グーが必死にセレンを起こそうとするが、ブラックボアーはすぐそこまで迫ってきている。

 セレンは逃げ切ることを諦め、グーを抱きかかえて守るようにブラックボアーに背を向けた瞬間、鈍く大きな音が鳴り響いた。


「・・・っ!!・・・?」

「やれやれ、先が思いやられるな」

「御者さん!?」


 セレンとブラックボアーが接触する直前に御者が入り込み、間一髪で魔法障壁を展開したのだ。

 群れの行進は長く続き、障壁からはミシミシと嫌な音が聞こえていたが、ブラックボアーが通り過ぎるまでの間を無事に切り抜けることに成功し、御者はその場でふらふらと倒れ込んだ。


「うにゃ!御者さんすごい!・・・大丈夫?」

「マナガ・・・キレタ・・・ウゴケナイ」

「うにゅ!ちょっと待ってて!」


 セレンは馬車に戻り、バッグの中からマナポーションを取り出して御者の元へと駆け寄ると、少しずつ飲ませた。


「ふぅ・・・助かった」

「助けてくれてありがと!マナ全快した?」

「いや、かろうじて体を動かせるようになっただけだ」

「そっか・・・ん?それって馬車は・・・」

「・・・動かせるわけが無いだろう」

「・・・っ!う・・・!うぅ・・・!!」

「ぐる?」

「うにゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


 ここまで順調に進んでいた旅路でまさかの足止めに叫ばずにはいられなかった。

 このままでは手続きに間に合うかどうか以前に王都に辿り着けない。


「ど、どどどどどどどどうすればばばばばばばば!?」

「ぐるっ!ぐるっ!」


 頭をフル回転させて王都に行く方法を考える。

 王都まではまだまだ遠く、荷物を持って走っても日が沈んでしまうし、馬に直接乗っていくにしても騎乗の経験が無い。

 車輪の無い浮遊台車の欠点は、操縦者のマナが切れると一切身動きが取れなくなるのだ。


「うぅ・・・あっ、そうだ!」

「まさか、俺に台車を持って走れなんて言わないよな?」

「言わないよ!?ねぇ、私が荷台を浮かせるのじゃだめかな?」

「嬢ちゃんが?・・・できるのか?物体に組み込んだ術式にマナを流し込むのはそれなりの技術が必要だぞ?」

「できる!・・・たぶん!」

「・・・そうか、なら頼む」


 早速台車に乗り込もうとするセレンだが、轍のわずかな段差に足を引っかけて転んでしまう。


「へぶぅっ!?」

「・・・本当に大丈夫か?」


 御者が心配して見守る中、セレンがマナを流し込むと同時に台車が宙に浮き始めた。

 杞憂であったことを確認した御者が台車の操縦部に座り、馬の手綱を手に取る。


「馬も疲れているから朝ほどの速度は出ないが、それでもそれなりの速さだ。しっかり制御してくれ」

「んい!」


 最初こそバランスが少し崩れたが徐々に安定し、しばらくすると景色を眺める余裕ができ始めてきた。


「呑み込みが早いな。やるじゃないか」

「ほんと!?えへへぇ~♪」

「ぐるっ!?ぐるるっ!!」

「気を緩めるな、少しぐらついてるぞ」

「おっと!」

「まったく・・・見ろ、あれが王都イルザルムだ」


 そう言って御者が顎で指す方向には、赤レンガを積み上げてできた縦に高く横に長い壁と、その奥から覗く城のものと思われるとんがり帽子をかぶったような巨大な建物が見えてきた。


「もう目と鼻の先だな」

「うわぁ・・・おっきい!絵本で読んだのといっしょだ!」

「そりゃあ、王都を題材にした物語は腐るほどあるからなぁ・・・。それに、いいところばかりじゃないぞ?あそこは」

「私はあの素敵な場所で暮らすのかぁ・・・わくわくしてきたにゃ!」

「無視か・・・まぁいい」


 御者の夢の無い言葉を聞き流し、セレンは期待と感動を胸の内で沸々と湧きあがらせるのであった。

 ほどなくして馬車は門の前に辿り着き、今は衛兵から荷物検査と出身地や名前の確認を行っているところだ。


「出身地はエルフの森にある村です!名前はセレン・ロト・セフィラスです!」

「元気いっぱいで良い子ですね。そちらの方も入られますか?」

「いや、俺はここでお別れだ」

「もう大丈夫なの?」

「ここから一番近い村までなら行ける程度には回復したからな」

「そっか、荷物運んでもらおうかと思ったのに」

「別料金で金貨一枚な」

「高いよ!?」

「ははっ!冗談だよ!じゃあな、嬢ちゃん、グリ坊」

「うん!またね!ここまで運んでくれてありがとね馬さん!」

「俺へは無しかい!?」

「えへへっ、冗談だよ!ありがとね!御者さん!」

「!・・・おう、またな」


 そう別れの挨拶を交わし、馬車が小さくなるまで手を振って見送ったセレンは最後にこうつぶやいた。


「・・・そういえば、お名前聞いてなかった」


 少女は魔法学校を目指し、名も知らぬ御者の旅路はまだまだ続く。

はい。おつかれさまでした。長かったでしょう?申し訳ない。ありがとうございます。

さて、今回皆さん疑問に思われている方がいらっしゃると思いますので補足します。

Q.御者さん何者!?

A.普通のエルフの御者さんです。

はい。普通の御者さんです。いいね?

セレンちゃんのことを所々知っているのは、村の中ではセレンちゃんが超有名人だからです。

500年ぶりに生命の樹から生まれたのだから、狭い村では当然そうなりますとも。ええ。

最後のセレンちゃんのつぶやきも、子供の頃にご近所さんはこっちを知ってるのにこっちはご近所さんのことを知らない時によくあるあの現象が発生したのです。あれ、すごく申し訳なくなるよね。


はい。書き終えたので、私はまた旅路に戻ります。探さないで下さい。

あでぃおすあみーご_(:3 」∠)_

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ