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うさぎとかめ

作者: 麗琶

ぼくは走った。精一杯。

早くも息が切れてきて、呼吸が苦しい。

運動は大の苦手だ。

うさぎは僕を置いてどんどん進む。

目の前の道はぼくには、とても広くて大きく感じられた。

うさぎにとってはどうだろうか。

うさぎはぼくより大きいから、もしかしたらこの道もそれほど大きく感じないのかもしれない。

体格からして釣り合っていないこの勝負。早々に投げ出したくなる。あからさまに勝ち目がなくても、それでもなぜか足を止めることができない。

スタートするときのぼくを嘲笑ううさぎの顔が脳裏に浮かぶと、ぼくは悔しくて堪らない気持ちになった。だからといって勝てないのは一目瞭然だから余計に悲しい。

そんなことを考えて走っていると、目の前に大きな木が倒れているのに気がついた。

ぼくは焦る。これじゃあ前に進めない。

道は一本しかなく、通れる道はここだけだ。ぼくは泣きたくなった。回り道もできないなんて。

なくなくぼくは木をよじ登り出した。思った以上に簡単なんてことはなく、足はつるつる滑って何度も木から落ちそうになる。

ぼくは何度も何度も逃げようと決心した。それでも登り続ける体。思いとは裏腹に動き続ける足。心の中は自由だと思った。

やっと登った頃にはへとへとで、全身が悲鳴をあげている。

運動は苦手なのに、なんでこんな勝ち目のない勝負をしているのだろう?馬鹿馬鹿しく思えてくると、目の前に気持ちの良さそうな川が見えてきた。

その川は随分と心地が良さそうで、もういっそ川に潜ってどこかに逃げてしまおうかと思ってしまう。しかしぼくの中の天使が「そんなことをしたらゴールで待つうさぎが心配してしまうよ」と訴える。あのうさぎがぼくを心配するものか。ぼくは本当は川に入ってしまいたかったのだけど、天使があまりにもうるさいため、また地上を這って歩いていくことにした。走る元気はさすがに無い。

うさぎはとっくにゴールに辿り着いているんだろうな。諦め混じりに歩き続ける。ぼくの体はとっくに限界を超えていたけど今更引き返せない。

気がつけば日が落ちて辺りは暗くなっている。ゴールまで辿り着けないのではないかという不安で心は挫けそうだ。

視界は暗く、周りの景色も見ずらい。だから余計に不安になる。

闇はどこまでも広がっていき、道を間違えていないか心配になるけど確認のしようもない。

ぼくは溜め息をついた。勝敗の分かりきったこの勝負。頑張る意味も意義も見つからない。何度目かの諦めを感じたが、それでも歩く。ここまできたら足を止めることの方が損な気がしてきたのだ。

そしていつの間にか暗い暗い夜は明けていき、朝日が登る頃。

へとへとに疲れきったぼくの視界にはゴールの旗が映った。あともう少しと自分を鼓舞し、歩く。歩く。

そうしてぼくはようやくゴール地点へ辿り着く。何とか辿り着いたという安心感の後に、よくここまで来れたなと達成感がやってくる。しかし疲れすぎて喜ぶ元気はなかった。旗にもたれかかって休んでいるとふとうさぎがいないことに気づく。

うさぎはもしかしたらぼくが遅すぎて待つのに飽きてしまったのかもしれないと自嘲気味に笑ったとき、ふとゴールの前に一つの影が見えた。

そこにいたのは紛れもない。うさぎだ。

ぼくは目を疑った。うさぎも目を疑った。

呆然と立ち尽くすうさぎは、一瞬誰かと思うほど着飾っている。

沢山の荷物を抱えている辺り、寄り道して遊んでいたのだろうか。ぼくにはその発想すらなかったけど。

ぼくはぼくよりも断然優秀で、こんな時にさえ余裕でいられるうさぎに尊敬の眼差しを向けて言った。


「ぼくの勝ち。」


うさぎはただただ、呆然と立ち尽くしていた。

どうも、麗琶です。

最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

これを読んでくださった方が少しでも勇気を貰えたら、そう思いながら書きました。

拙い話ですが、読んでくださり本当にありがとうございました!

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