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第95話:新入部員

第九十五話

 中間テストも今日で終わり、有楽斎は新聞部でゆっくりしていた。

「御手洗先輩もまだ来てないしパソコンでもしていようかな」

 部費で購入したのか、それとも私物なのか知らないが最新型のノート型パソコンが設置されているのだ。デスクトップには部員の名前のファイルが作成されており、好きなように使っていいとのことである。

 もっとも、特にすることもないので検索エンジンのトップページで最新ニュースを見るぐらいしか使い道が無かったりする。

「……野々村グループ連日の施設襲撃についてコメント……か。他は……逆立ちをしながら歩くゴリラ……か」

 他に面白そうなニュースもない。有楽斎は立ち上げたばかりのパソコンをシャットダウンしたのだった。

「あら、珍しいのね」

「あ、こんにちは御手洗先輩」

「吉瀬君の方が早いなんて…どうしたの」

 別にどうしたわけでもないのだが、それほど驚いたことだったのだろう。

「いや、別に早く終わったから来ただけですよ」

「最初のころはやめたいって言っていたじゃない」

「まぁ、確かにそうですけどね」

 これといって部活動をしているわけではない為に青春を味わう事が出来ない。もちろん、部員募集中ですっと言ったプラカードを掲げてうろついたりすればもしかしたら部員が増えるかもしれないのだが活動内容が不明の為にそう言ったこともできない。

 一応、一学期中に『野々村施設襲撃についてのレポート』を要求しているのだから新聞部というよりも『レポート部』にすれば間違いではないだろう。

「御手洗先輩はこれ以上部員を増やすって事は考えてないんですか」

「別にどっちでもいいわ。吉瀬君が魅力的な部員を連れてきたいのならそうしていいわよ。でも、ここの部員になったのなら私の言う事は絶対に聞いてもらうからね」

 きっと入部させた相手は有楽斎の事を少なからず恨むだろう……花月にこき使われ、ある日……『月の出ていない日は気を付けることね』そう言って襲いかかるに違いない。

「ぞっとします」

「そう、じゃあ止めておいた方がいいわね」

「………そうですけど………」

「ま、特に何かをするわけでもないし暇人にとってはいいんじゃないのかしら」

「御手洗先輩は三年生ですよね」

「そうよ」

 高校三年生ならば何かしら進路の話があるはずだ。つまりは暇人ではないはずである。

「進路とかもう決まっているんですか」

「先生になるわ」

「あ、ああ……教師ですか」

「ええ、教師になったら落ちこぼれの学校に入ってそこを全国制覇できるような学校にするのが夢よ」

「…………」

 じゃあまずはこの弱小部をどうにかしてくださいよとは言えなかった。期待できないし、たとえ教師になったとしても下の者をこき使って全国制覇を成し遂げるのであろう。

 花月がパソコンを立ち上げようとしたところでノックが聞こえてくる。

「吉瀬君、開けてあげなさい」

「わかりました」

 有楽斎は扉をゆっくりと開ける。廊下に立っていたのは一人の少女だった。

「あの、この部活に入部したいんですけど」

「あら、吉瀬君が呼んだのかしら」

「え、いや……僕じゃないですけど……」

 みたことがあると思った相手は真帆子の友達である子子子子美奈代だった。

「まぁ、いいわ。ちょっと入部届けを探すから待ってね」

「はいっ」

「あのさ、もしかして学校新聞部と間違えたのかな」

 入部届けを探している(掃除用具を開けている)間に有楽斎は美奈代に話しかける。

「違います。新聞部に入ろうと思って来たんです」

「校内新聞なんて書いちゃいないよ」

「いいんです」

「この部活の部長は…」

 続きを言おうとしたところで花月がやってくる。

「はい、名前を書いて職員室の鬼塚先生のところに持って行ってね」

「わかりました」

 丸っこい文字で自分の名前を紙に記入する。やめさせたほうがいいんじゃないかと思ったのだが、自分とは違って入部したくてやってきたのなら放っておいた方がいいのかもしれない。

「じゃあ行ってきます」

「ええ。渡したら戻ってきてね」

「はいっ」

 美奈代を見送った有楽斎は花月の方を見る。

「本当に来ちゃいましたね」

「そうね。よかったじゃない、魅力的な女の子が一人増えて。早速部活が終わったら告白するのかしら」

「対象外ですよ。同級以上が守備範囲ですから」

 そう言うと驚いたような表情を見せられる。

「意外だわ…てっきり女の子なら誰でもいいかと思っていたのに」

「そんなわけないですよ」

 しかし…なんであの子はこんな部活を選んだんだろうかと有楽斎は首をかしげるのであった。


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