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第91話:運命の出会い

第九十一話

「あー、まさかこうなるなんてなぁー」

 部活の買い出しに出されるなんて想像もしなかったのだが、部長が『買ってきて』というのなら買わなくてはいけないだろう。

 きっかけは花月が見ていた動画のようで炭酸飲料のあれのなかにお菓子のあれを入れると液体が噴出すると言う子供がもろ手をあげてやりそうな内容のものであった。

「部費で買って来いって事ですか」

「そんなわけないでしょ。吉瀬君がだすのよ」

「えー」

「しょうがないわね。お礼として私のファーストキスをあげるわ」

「そんなもの要らないです」

 買い出しに出たのはよかったのだが、お菓子の方が売っていなかった。裏路地へと入って駄菓子屋のような場所によることにしたのだが……そこで変な老人に出会った、というよりも声をかけられた。

「おー、少年」

 最初は自分以外の誰かに声をかけているとばかりに思っていたので無視をしていたのだが、腕を掴まれた為に自分が呼ばれていたことを知ったのだ。

「これこれ、おぬしじゃよ」

「えーと…」

 辺りをもう一度だけきょろきょろと見渡し、自分を指差した。

「僕ですか」

「そうじゃ」

「何か用でしょうか」

「ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんじゃよ」

 何か重たいものでも持たされるんだろうかと思っていたが、手に握らされたものは一枚の写真だった。

「もしかしてお孫さんが迷子にでも…」

「違うぞ。それを見てほしいんじゃ」

 言われた通りに写真を見る。手のひらの上に乗りそうな四角い箱、そして箱の上に丸いスイッチが取り付けられていた。

「これ何ですか」

「紛失物じゃよ。世界を変えるすごいスイッチじゃ」

「世界を変える……スイッチですか」

 実に胡散臭い話であった。

「そうじゃ。一年ほど前に作って転がしておいたんじゃが整理しようとしたらなくなっておってのう」

「はぁ……そうですか」

 きっとこのおじいさんは頭をどこかにぶつけたんだろうなと有楽斎は考えた。世界を変えるスイッチなんてあるわけがない。

「わかりました。見つけてあなたに渡せばいいんですね」

「素直に言う事を聞いてくれるんじゃな」

「ええ」

「そうか、じゃあお前さんにこれをやろう」

 手渡されたのは数枚の写真であった。てっきり何かいいものが写っているものとばかり思っていたが現実は違うものだった。

「決定的瞬間じゃろ。人間の背中から六本の手が伸びて不良三人組を蹴散らしておるんじゃからのう。お前さんが言う事を聞いてくれなかったときは野々村さん家に持っていこうかと考えておったわ」

「あー、そうですか」

 頭を数回掻いてから有楽斎はため息をつく。

「その世界を変えるスイッチでしたっけ。心当たりはありますか」

「野々村のどこかじゃ」

「野々村って……」

「関連施設を連日襲っていた暴漢のおかげで探しに行けたがどこも外れじゃったからのう。わしが場所を探すから指示が出たら探してほしいんじゃ」

「わかりました」

 面倒なことになったと思いつつもため息一つしか出なかった。おもちゃ探しに手伝うぐらいならいいだろうし、そんなに悪そうな感じの人でもなかったからだ。

 連絡手段も伝えて有楽斎はその場を後にしようとする。

「これをやろう。お駄賃じゃ」

「ありがとうございます」

 渡されたものは探していたお菓子であった。

 その後、目的の品を手に入れた有楽斎は部室に戻って花月に渡した。嬉々として花月は部室内でその実験を行ったのだ。

 結果は言わずもがな。有楽斎が後片付けをする羽目になったのである。


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